第3話 C-3堤防へ

すぐに前の2人も手続きを終え、土嚢を運んで行った。エリックの番が回ってきた。


「あなたの名前は?」


「エリックです。」


「エリックさんですか。ちょっと待ってくださいね。」


そういって係員は、分厚い辞書のようなものをめくりだした。隣ではナイクも同じように受付をしている。ページをめくるのが終わり、係員が丁寧に言った。


「エリックさんはC-3堤防ですね。一番遠いですけど、学生さんなら大丈夫ですね。頑張ってください。」


「はあ、がんがります…」


いったい学生だったら何が大丈夫なのか分からないが、とりあえず気のない返事を返し、エリックは土嚢を受け取った。


土嚢を盛ったナイクが近寄ってきた。彼は土嚢を軽々と持ち軽快な足取りだ。エリックは羨望のまなざしを向けた。


「エリックはどこの堤防になった?」


「C-3だ。遠いらしい。最悪だ。」


「僕はC-5ってとこみたいだ。まあ遠い方らしいけど。大統領令なんだ、お互い頑張ろうぜ。」


「そうだよな、やるしかないもんなあ。」


エリックは深呼吸をして答えた。


「おう、30回、ちゃっちゃと終わらせてしまおうぜ!」


ナイクは軽快な足取りのままC-5堤防の方に消えていった。いったい彼はどこから力を出しているのだろうか。エリックは知りたかった。


「この土嚢、めちゃくちゃ重い。どうしてそんなに前向きなんだ。信じられないぜ。」


土嚢はだいたい20kgくらいで、ずっしりとしていた。これを30個も運ばなければならないのだから、途轍もないことである。暴動でも起きそうなものだが、市民たちはどうやら協力するつもりのようだ。エリックは土嚢を積むことが根本的な解決にならないことは当然知っていたし、ナイクやほかの市民たちがどうして前向きに協力しているのか全く理解できなかった。


「こんなの詐欺だぜ。いったい何回の地震をしのげるっていうんだ。」


エリックは理屈をこねながらも、犯罪者にはなりたくない一心で、重い気持ちと土嚢を引きずりながらC-3堤防に向かった。



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