第15話 山の男5

 チャーリーからもらったパンを食べ終えた俺は、初めて見る馬車からの風景を再度見つつ。ちょうど足元にあった藁のかけらを手に取り編んでいた。葉っぱで受け皿を作った時にも触れたが、俺は元からこういう作業が好きというのか。得意というのか。ちなみに孤児院の庭などに咲いていた花で王冠なども作れた。

 女の子からはすごいと言われたことも何度かあったが。男の子たちからは――微妙な評価だったかな?走り回ったりの方が楽しいとか言われたこともあったが。でも俺はこういうのが好きで、前からちょくちょく俺は1人で作っていた。

 藁を編みながら、そういえば――今孤児院を出たお姉さんやお兄さんはどうしているのだろうか。今の孤児院を知ったら――どうなんだろうか。などといろいろ思いながら。揺れる馬車の中だったが。暇つぶしに藁を編むのはちょうど良かった。藁はたくさん足元に落ちていたので、ずっと編むことが出来た。ただ編むだけでも楽しい。俺は勝手に足元の藁を使って……だったが。明らかに落ちていたので怒られないよね?と思いながら藁を編んでいると。俺の手元に気が付いたのかチャーリーが話しかけてきた。


「マナアキ。編み物が得意なのか」

「——え?」


 既に俺が編んで床に置いていた物をチャーリーは手に取る「ほう、すごいの。綺麗に編んどる」などとつぶやきながらチャーリーが俺の手元も見てきた。今の俺はただ落ちていた藁を編んでいるだけなのだが……なんでそんなに珍しいものを見たという感じなのだろうか?何か違うことを言っている?


「そういや、山でもマナアキは葉っぱで受け皿作っていたな」

「えっと――うん」

「うんうん。誰かに教えてもらったのか?」

「いや――自分で……まあよく暇なときにしてて……」

「ほう。そうかそうか。うんうん。やっぱわしの目は正しかったな。マナアキ。ちょっとそれ貸してみろ。ここをこうするとな。長く繋げることもできる。そうするとこういう小さいのでもな。いろいろ作れるんだぞ。さらに編んで行けば大きなものも作れる」


 するとチャーリーは手際よく俺が編んでいた短い藁をつなげていく。まるで魔法がかかったかのようにどんどん藁が繋がっていく。俺がその光景に驚いているうちに、チャーリーは小さな小物入れを編んで作って見せてきた。ホントあっという間の事だった。藁が紐。縄になった――と思ったら藁で作った小物入れが完成していた。


「おお……」


 ただただ俺は驚くだけだった。繋げるというのは知ってはいたが。こんなに綺麗に。それも早く繋げれるのは初めて見たのだった。ちなみにチャーリーは藁で作った小物入れは馬を操る若い男性にあげていた。馬を操る若い男性も驚きつつ感謝していた。

 

「マナアキ他にも得意なことはあるのかの?」


 馬を操る若い男性と少し話していたチャーリーがまた俺に話しかけてきた。


「えっと――他には――木を彫ったりは……したことあるかな?」


 孤児院での事を少し思い出しつつ俺が話すと。チャーリーの眼が輝いていた。


「ほうほう。どんなものを作ったんじゃ?」


 俺が話しだすとチャーリーはグイグイ聞いて来た。眼が合うと――本当にチャーリーの眼が輝いていた。ちょっと怖いというか――いや、怖いというか。何で?という感じで俺は少し引いていたが。でも自分の好きなことなので話は続けることが出来た。


「えっと――お皿とか。コップは作ったことある」

「ほう。マナアキは器用じゃの。そのうち見せてくれ」

「あ、うん――作ることがあれば……」

「あるある。たくさんあるぞ。そのうちわかるからな」

「——?」


 チャーリーの話を聞いていた俺は、そのうち何がわかるのだろうか?だったが。俺が聞く前に、何故かそれからの移動中はチャーリーが自分の事を話しだしたのだった。


 チャーリーはマウノッヤ。正確な場所はちょっとわからないが。多分ヨイキテンツチッカから2つ3つ山を越えたところにある小さなな山間部の町で、物作りをしているらしい。マウノッヤは材料となる木がたくさんあるとかで、いろいろな物が作れると。机とか椅子。大きいものでは家も作ったなどホントいろいろ作ってきたことを聞いた。あと、途中の山には自分で作った山小屋もあり。夏場とかになるとそこで作業をしていたこともあるとか。


 どうやら俺が知り合ったこのおじいさん。チャーリーはすごい人だった。俺は話を聞いている時。家を建てた――そこが衝撃過ぎてしばらく家の作り方をチャーリーに聞いたりしていたのだった。もちろん聞いたから俺も――とかではなく。単純に興味があったから聞いた俺だった。そこからの移動は話が盛り上がり時間があっという間だった。


 ★


 チャーリーといろいろと話をしていると俺達はこの国で一番大きな町テミスに到着した。

 ここはヨイキテンツチッカよりはるかに大きな町。大都市だ。常に豪華な馬車などが行き来しており。人も多く。店もたくさんあり賑わっていた。

 馬車から降りた俺はしばらくあたりをキョロキョロするしかなかった。目が回るというのか。とにかくはじめてきたテミスの町。何を見ても驚きしかなかった。高い建物がたくさんあった。今まで見たことあったのは教会が一番高かったが。そんなの大きいにはここでは入らなかった。

 またチャーリーに近くにあった建物は何なのか。というこをを聞いたら。まさかの普通に家だった。複数の家族が暮らしている建物と教えてくれたのだが――もう俺には意味が分からなかった。こんな大きな建物が――家?だった。

 テミスという町は知っていたが。こんなところとは。もう本当に驚きしかなかった。ここまで俺達を運んできた馬を操る若い男性の人も俺の感動にちょっとびっくりしている感じだったが俺は気が付かなかった。

 さらにチャーリー曰く。明日はここから蒸気機関車に乗るとか。その際に俺は、そういえば前に遠くから来たという人が。そんな名前の乗り物に付いて話してくれたことを思い出していた。あれは作り話かと思ったが。どうやら事実だったらしい。すぐにでも俺はこの眼で蒸気機関車とやらを確認したかったが――既に日暮れ。空は暗くなり出している。まあ町中はとっても明るいが――多分時間的には夜だった。


 馬車を降りた後チャーリーについていくと、近くの宿に到着した。ヨイキテンツチッカにも宿はあるが――それとは比べ物にならないくらい大きな宿だった。そして建物の中も、石とか木の板ではなく。毛布――違う。絨毯?なのか床一面がふわふわだったり。室内は明るく。とっても豪華だった。あと食べ物もなんかもう見たことないものばかり。わからないものばかりだったが――とにかく見た目

香りから美味しそうなのはすぐにわかった。もう見る物すべてが知らない事ばかり。俺はどこか違う世界に来たのだろうかなどと思いつつ。驚いている間にどんどんテミスでの時間が過ぎて行ったのだった。

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