第10話 山の男
今は森の中を俺は進み仲間。孤児院の家族たちを探し、急な道なき道を俺は進んでいたのだが――。
「……はぁ……はぁ……」
さすがに子供の足で長時間の山登りはキツイ。しばらくは頑張って登ってきたが、その後すぐに俺はたまたまあった大きな岩陰にもたれ。その場に座り込んだ。
今の俺は食べ物も飲み物もない状態なので無理もない。喉が乾いても水がない。食べ物は……先ほどから小さな実のなっている木があったが。今の俺には食べれるものなのかがわからず手を付けていなかった。本当は食べてみたらいいのだが、前に孤児院に居た時に、お兄さんだった人が道中にあったキノコ?を食べ大騒動になったことがあり。それ以来俺はわからないものは手を付けないようにしていた。まあちょっとした恐怖心というか。トラウマ的な事があったのだ。
ポツポツ。
すると頭に何かがあたりだした。ふと俺が空を見上げると、木々の間から黒い雲が見えた。
「——雨?」
ぼーっと歩いていたから俺は空が暗くなっていることに気が付いていなかった。雨と気が付いた後すぐにザーっと雨が降り出した。普通ならなんでこんな時に……というのかもしれないが。この時の俺に恵みの雨だった。地面はぬかるむが。水が空から降ってくる。
俺はすぐに近くにあった細長い大きな葉っぱを何枚か手に取った。昔から俺は細かい作業が得意で、この時も葉っぱがあればその葉っぱから受け皿を作ることが出来た。受け皿というか。まあ船。ボート?みたいな形なのだが。まあでも今は受け皿だ。
ちなみにこれは誰かに教わったとかではなく。ほんとなんとなくこうやって葉っぱを折ったりすれば――というのが頭の中でイメージ出来ていたからである。そして受け皿を作ると俺は雨の下に葉っぱを置いて少し水がたまるとそれを飲んだ。少しずつだが水は飲めた。喉の渇きが少しずつとれる。また普段なら濡れるのが嫌だったが、この時の雨は浴びれば気持ちよかった。ちなみにはじめ雨に当たった際。驚くほど自分の身体が汚かった。全く気が付かなかったが。どうやら身体にはかなり汚れなどが付いていたらしく。雨粒が肌に当たると真っ暗な水になり――流れていった。まあしばらく雨に当たっていると汚れはなくなったのだが。
急な雨により少しさっぱりした俺はそれから雨の中歩いた。岩陰のところでとどまっていても雨をしのぐことが出来なかったからだ。そもそも地面もぬかるんできていたので、とどまるより俺は歩くことにしていた。
今は5月。少し雨は冷たいが。でも動いていれば雨はちょうどいいくらいだった。そして運がいいのか。少し山を登っていると雨は止んだ。通り雨がざっと降っただけだったらしい。着ていた服は濡れて重くなったが。俺はそんなことは気にせずそのまま歩きは森の中を進んだ。雨により水分も取れて、さらに身体が少しさっぱりした俺はさらに山を登っていたのだが――。
少しして、そういえばなぜ山を登ってるのだろうか。そんなことを考え――近くの石に座ったのだった。
「……町に戻った方がいいかもしれない」
先ほどの雨で頭がすっきりしたのかはわからないが。冷静に物事を考えれるようになっていたらしい。今まで俺はみんなを探していた。でも――俺はちゃんとは確認していないが。みんなをあの場で見ている。何があったのか見た光景と記憶から、何となくわかっている。そのことを座りつつ頭の中で整理した俺。いろいろ考えた俺はそんなことを呟きながら少し休憩のち立ち上がる。
「戻ろう」
やっとそんなことを思えるようになったのだが――ふと周りを再度見ると木々に囲まれた場所に居た。
困ったことになった。太陽の光は俺に届いてるが――見渡す限りそこそこ高さのある木だった。
「……ここどこだ?」
気が付くと俺は全く見覚えのないところに立っていた。少し前までいろいろ考えながら歩いたからか。どの方向から来たのかもわからなくなっていた「確か下から上がってきた……」などと思い辺りをみるが。今自分が居る場所は少し平坦になっている場所で、休憩している間にどの方向から来たかわからなくなっていた。左右どちらを見ても似たような光景。どっちが下?麓?というのが今いる場所ではわからなかった。歩いて来た目印となるものを全く見つけれない俺だった。
「……」
さて、俺はどうするか。ここで誰かが来るのを待つ。という方法もあったが……場所が場所だ。山の方はほとんど人が居ないと、前に大人の人から聞いたことを思い出した俺は歩き出した。
ここに居ても人が来る可能性は低い。ならとりあえず山を降りれば町に戻るだろうと思いあたりを見て下り坂になっている方に歩き出した。
だが所詮子供の考え。山は広くそう簡単ではなかった。
それから歩いても歩いても俺は町にはたどり着かず。見覚えのある光景すら見つけられなかった。俺は完全に山の中を彷徨っていた。これはやばいと、さすがに俺もわかっていたが。誰にも会わないため。とにかく歩き続けていた。
すると、歩いていたからたどり着いたと言えるだろう。俺は森を抜け小さな川に出たのだった。
俺は川に近寄りまずは水分補給をした。少し前に雨のおかげで少しは水が飲めたが。歩き回ったのでまた喉が変わっていたため。雨とは違い川の冷たい水はとっても美味しかった。
「――はぁ――美味しい」
その後、俺は足元などがいつのまにか泥まみれになっていたので、どうせ近くに誰かいる雰囲気もなかったので、休憩しようということで、服を脱ぎ。川で汚れたところを洗い。そしてもともと濡れていた上着も石の上に広げた。これは確か孤児院で水浴びをした時にお兄さんか誰かがしていたことだ「濡れてもこうやってほっとけば乾く」と言っていた気がする。石の上で服をかわかしている間に俺は再度足や腕も洗うことができた。水は冷たかったが。綺麗になるのは気持ちよかった。
体を洗った後の俺はしばらく川近くの石の上に座っていた。何をしているかというと、休憩中である。あと森を抜けたので少しは周りの事が石の上なら見えるかと思ったが――川の周りの木々が高すぎた。全く何も見えない。見えているのは同じような光景。俺は町を見つけることは出来なかった。でも頭の中では、この川を下ればどこかに行けるのではないかという希望も芽生えていた。ヨイキテンツチッカの町には川が流れている。その川は確か山から流れていると聞いたことがあったからだ。なので俺は少し安心していた。それもあってか。石の上に座ったら身体が全く動かなかった。足が根を張ったかのように固まっている。もう動きたくない。歩き疲れた。と足。身体が言っていた。
それからのことを言うと俺はその場で一夜を明かした。
何故そんなことになったかというと。石の上で寝っ転がっていたら、眠くなり。次に目を覚ました時はあたりが薄暗くなっていたからだ。さすがに起きた時は慌てたが――暗い中歩くのはさらに危険ということはわかっていたので、その場に留まることにした。ちなみに俺が寝ている間に石に上にほってあった服は乾いていた。服を着た後の俺はあたりを見た。川があるので水はある。そして――近くの木には歩いている途中に何度か見ていたのと同じような木の実があるのが見えていた。
グー……。
木の実を見ると盛大にお腹がなった。孤児院なら誰かが笑っていたかもしれないが。今は誰もいないので笑われることはない。そもそも今日はほとんど何も食べてなかった俺。水を飲んだだけなので腹ペコで、空腹を認知するとどんどんと空腹感が襲ってきたのだった。
そして日中も思ったことだが。知らないものは食べないという考えがあった俺だったが。空腹には勝てなかった。もしかしたら食べたら俺は死ぬのかもしれない。でもまあ――それはそれで……と思いつつ。木のみがある方に歩き出し。届く範囲の物を摘み。綺麗な赤い木の実を恐る恐る一口食べてみた。すると一粒食べた瞬間だった。
「甘っ!」
驚くほど甘かった。たった一粒小さな実を食べただけだったが。噛んだ瞬間口の中が一気に甘さであふれた。とっても甘くておいしかった。孤児院ではもちろん毎日ではないが。たまにフルーツが出ることもあったが。それに負けないくらいこの小さな実は甘かった。何で俺はこんな美味いものを見ているだけだったんだ。もっと早く食べればよかった。そんなことを思いつつ。俺1人でパクパクと木の実を食べ続けた。
ホントこの時の俺は運がよかった。居た場所の近くはかなりの数の木の実があったたからだ。さすがに木の実だけでは満腹にはならなかったが、それでもそこそこ満足できる量を食べることが出来た。
それからの俺は暗い中少し歩き。偶然見つけた平たい石の上に寝転んだ。空には満点の星。そしてとっても静かだった。昨日の夜みたいに静かな夜だった。そして再度俺はゆっくり眼を閉じたのだった。
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