第8話 あの日俺の眼に映った色は……2
俺はあの幸せだった孤児院からは旅立っていない。急に掘り出されただけだ。それも1人だけ。1人だけ……あの出来事の時に生き残ってしまったのだった。
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あれは俺が10歳くらいのことだ。くらいというのは俺自身が正確な自分の年齢を知らないからである。誕生日も分からず。孤児院の人も俺に関しては、孤児院に来た時に俺が言ったという『マナアキ』という自分の名前以外ほとんど何もわからないと言っていた。確か――偶然小さな俺がヨイキテンツチッカの町の外れをうろうろしていたのを町の人が見つけて、孤児院に連れて来てくれたとか。まあ俺自身はは孤児院に来た時の記憶は全くない。何もわからない。下手したら怪しい人物に見られそうな俺だったが。でもそんなことは孤児院では関係なかった。俺はちゃんと孤児院で仲間に囲まれていた。そりゃいきなり馴染むのは無理だったが。仲間外れにされるようなことはなかった。そして気が付いたらちゃんと1年に1回。俺は孤児院で誕生日を祝ってもらっていた。確か――俺が孤児院に来た日が誕生日になっていたな。まあ俺にとってはそれで十分だった。十分幸せな時間。場所だった。
話を戻すが。俺が覚えているのは、多分10歳くらいの出来事だ。
ある夜のこと。突然俺たちの家は爆発音とともに燃え。崩れ落ち。跡形もなくなり――仲間……家族を失った。以上だ。
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あの夜の事は忘れない。真っ黒になった……あの場所を。忘れることはできない。多分今は――何もない普通の丘に戻っているだろう。もしかしたら新しい人や、今の子供たちはもう知らないだろう。あそこでないがあったかを――ちなみに俺はあれ以来あの場所には行っていない。大人になった今でも行ったことはない。
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ある夜の事だった。いつも通りの時間に就寝していた俺達。少し寝る前にお兄さんお姉さんが騒いでいて大人たちに怒られる。ということがいつものようにあったが。その時間は既にみんなが静かに大広間で横になっていた。俺ももちろん寝ていた。大広間の床で寝ていたので寝心地は――だったが。でも外で寝るよりはるかに寝やすい。雨風もしのげるし。それに毛布などはあったので寝るには問題なしだった。すると俺の耳に物音が聞こえてきた。
――ゴトッ。ガサッ。ガサガサ。
「……うん?」
俺は物音で目を覚めた。音は玄関の方からな気がした。俺はそんなことを思いながらゆっくりと起き上がり周りを見たが周りは静かだった。大広間内は誰かのいびきが聞こえているだけ。でも何かを感じた。聞いた俺はそっと薄暗い大広間を出て音がした方。多分玄関の方と思い。暗い廊下を1人歩いた。
もともと俺は暗いところが苦手ではなく。むしろ好きなくらいだったので、ここに来てすぐの頃はよくこうして夜中に何か気になることがあると出歩いていたらしい。らしいというのは来たばかりの事はほぼ覚えてないからだ。最近になって笑い話で大人たちに聞かせてもらい知っているだけである。まあちなみにその頃の夜中に出歩いていた俺のお決まりは、大人に見つかり怒られたらしいがな。そうそうその時なんで俺が出歩いたか。理由は孤児院内に居た大人たちの物音。大人の時間というやつに気が付いて――だったらしい。まあ最近は孤児院に来てしばらく経ったし。夜はちゃんと大人しくしていたが。今日は久しぶりに夜中孤児院内をウロウロとしていた。もしかしたら大人に見つかるかもだったが。今日は違った。俺が上手に静かに歩いてきたのか。大広間から玄関までの間。誰にも見つからなかった。ちょっと静か過ぎる気もしたが。あと何かいつもはない臭いもあった気がしたが。俺はまあ時間が時間で、大人たちももう寝ていたのだろう。少し早い時間だと、普段子供は立ち入り禁止の部屋。入り口近くにある大人たちが使っている部屋から話し声などが聞こえてくるが。今日はそこも静かだった。
そんな静かな中。俺は1人で玄関近くまで来た時だった。あと少しで玄関のドアというところで。
ドン!バチバチバチ―—ボボボボボォ――。
「——ふぁ!?」
急に周りで大きな音がし。すぐ建物が揺れ出した。何かが爆破?と俺が感じたのと同時だった。
——パリン!
近くの窓ガラスが全て吹き飛んだ。俺はその衝撃で床に転がる「何が起こった?」と思った時には、急に自分の周りが明るくなり。俺は手で顔。目を覆っていた。眩しすぎる。そんなことを思った時には自分が居る周りが熱くなったのだった。熱せられた鍋の中に居るかのような状態になった。
吹き飛ばされたことと。多分飛んできたガラスなどの破片が当たったのだろう。少し身体が痛かったが。床に転がっていた俺はゆっくりと顔から手をどけると……俺の周りは火の海になったのだった。
「ゲホッゲホッ……」
少し身体を起こし息を吸ったらむせ返った。何が起こったかわからない俺は、助けを呼ぶとかそんなことを考えることも出来ず。その場で小さくなり。むせ返っていた。その間にもどんどん周りは熱くなる。逃げないといけないと身体は言っている気がしたが。既にその時俺の意識が薄れていたため身体が動かなかった。ゆっくりと俺は再度床に崩れ落ちていった。
――ドン――ドン! バコン!
薄れゆく意識の中。耳には近くで何か大きな音がした。そして空気が動いた気がした。
「ぬわっ。なんだこれ」
「火事だ火事。みんな呼んでこい」
「は、はい!」
「おい。そこ見ろ。子供が倒れてるぞ」
声が聞こえる――。
「まずそこの子供を助けるんだ。急げ。崩れるかもしれないぞ」
「俺が行く」
「俺も行くぞ」
「水だ水。あと他の出入り口も確認しろ。まだ火が回ってないかもしれない」
でも俺は動くことが出来なかった――。
「裏は火の勢いが強すぎる。なんだこれ何か爆発したのか?」
「この子どうするよ」
「安全なところに運べ」
「他の大人や子供はどこにいるんだ?」
「知るかよ。わかるかよこの状況で、とにかく火を消せ」
「わーってるよ。みんな煙に気を付けろ。吸うなよ」
俺の記憶にうっすらある最期の記憶は、誰かに抱えられた――という事だった。そこで俺の意識は完全に途絶えた。
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