第6話 国王の日常
テミス。そこはこの国で一番大きな町だ。常に多くの人が行き来している場所で、ありとあらゆる物が集まってくる場所だ。
その町の中には一際大きな屋敷がある。他の建物の数倍はあろう建物が広大な敷地の中に建っている。そこはこの国の国王が代々住んでいる屋敷である。現在は異様なほど派手な建物となっている。屋敷の至る所に金銀が使われており。遠く離れた所からでも屋敷を確認できるとか。ちなみに昔からこのように派手な屋敷ではなかった。派手になったの今の国王になってからだ。
それまでは普通の大きな屋敷。町の人もなかなか見ることのない規模の屋敷で、国王の屋敷の近くはちょっとした観光名所みたいになっていた。でも今では町の人が近寄りがたい雰囲気になっている場所だった。
◆
「俺は金銀しか必要ない。金はあるんだ。国中から金銀を集めてこの屋敷を金銀にしろ。今すぐにだ!」
屋敷が変わったのはそんな若き国王の命令が始まりだったとか。本来なら助言する者も国王の周りには居たのだが、時を同じくして屋敷に仕えるものが総変わりしていたため誰も国王の命令に異論を唱える者はいなかった。何故総変わりしていたか。それ国王が変わったからという理由もあったが……。
「お前邪魔」
「用無しはいらないから出ていけ」
「なんかムカつくから出ていけ」
「古臭い考えは邪魔なだけだ」
「なんだ使えない奴だな。何で金銀を集められないんだ。別の奴を雇え」
「俺の命令に従えない奴は全員出ていけ!」
現国王ミカエレ。前国王の急死により。若くして国のトップになった者。そして、超超超超……問題児である。
ミカエレは生まれた時から他人とは違う生活をしていた。とても裕福な暮らしをしており。欲しいものは何でも手に入る生活をしていた。何不自由ない生活を幼少期から送っていた。また、前国王。ミカエレの父に当たる人が、大変ミカエレに甘かった。ミカエレの事になると全てを注ぐ人物だった。欲しがるものは全て与える。ミカエレが何か問題を起こせば、ミカエレが悪くても相手を即消す。そもそもそんな事はなかったことにしていた。普通にそんなことをしていたのだった。
その結果。自分が何か言えばすぐに国が動くなどと。幼少期から大きな勘違いをした超超超超……問題児が出来てしまった。とにかく何個超を付ければいいのかわからないような問題児が居た。問題児は問題児。そう問題児だ。
その後成長したミカエレは、前国王が健在の時でも次第に自分で命令を出すようになった。そして自分の意に反するものは全て消していった。ちょっとした気に入らないことでも邪魔と思えば全て消していた。また自分が持っていない物を持っている人が町に居れば奪いに行かせ。自分の物にしていた。さらにミカエレが町に出れば、自分が気に入っている場所にはどんどんお金を渡し。逆に気に入らないところは、当たり前のようにすべてを壊した。それは物でも……人でもだった。
ミカエレのこのような行動はもちろん町の人も眼にしていた。なのでテミスを離れた者は――多くなかった。多くなかったのだ。何故かというと、ミカエレの行動により生じた問題に関しては、前国王が裏で後処理をしていたからだ。だからこの時のミカエレの暴走を知っているのは、現場で見た者だけだったのだが。そもそも前国王。ミカエレのためなら何でもする。目撃者を消せばミカエレの問題は広がらない。などと考えていた。だから町の人は知らなかった。それもあってかミカエレはどんどんわがままに自分の思うがまま国王になる前から動いていた。さらに後処理に関して前国王は全くミカエレには伝えていなかった。つまりミカエレは自分がすることに対して何も不満が出ていないと思っていたのだった。
その結果。自分が行う事は全て正しい。国王。父も何も言ってこない。いつも自分を褒めてくれる。周りも誰1人として自分に何も言ってこない。つまり自分の考えには間違いがないという事。自分は天命により行動している。つまり自分が神だ。そんな考えをミカエレは持つようになってしまっていた。
◆
月日は流れて――『もっと自由に、自分の思うような自分中心の国を作りたい』ミカエレは20代前半にそんなことを思い。自分の考えに間違いはない。だから父親もわかってくれる。賛成してくれる。そんなことを思い――前国王。自身の父親を手にかけたのだった。
これはマナアキが6歳くらいと思われる時の話である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます