始めよう 地域美化清掃
というわけで、当初のボランティア同好会VS真正お嬢様部の地域美化清掃対決は有耶無耶となりまして、保坂モモ先生によって即席で組まれた
「あ、ろうえい先輩。道路脇に空き缶が置いてありますよぅ」
「了解、車が来たら危ないからここは俺が取りに行くよ」
「うわ、タバコの吸い殻また見つけたわよ。ここ禁煙区域指定なのにウソでしょ。マナー守らない人ってこんなにいるの。ちゃんと標示マークもポスターも貼ってあるのに」
俺たちが行っているのは道に落ちている空き缶やゴミなどを見つけては地道に拾ってそれぞれ別々のゴミ袋に仕分けながら進んで行く清掃作業だ。もっとなにか大掛かりな清掃活動をするものかと思っていたが、やり方を教えて貰ったら案外誰にでもできる作業なんだなと安易に考えていた。
可燃ゴミ、ペットボトル、缶・ビン等、ゴミ袋別で仕分けながらの作業はなかなかに骨が折れて地味に大変なのだと思い知った。
普段は気にも止めない街に転がるゴミは目を凝らせばいたるところに見えてくる。マナーを守れていない人達がたくさんいるという現実。目立つ所に放置されているゴミは見つけやすいが、隙間にねじ込まれている隠されたゴミも地味に多く細かく見つけていくとなかなか前へと進めない。美咲花が先程から減滅しているタバコの吸い殻ゴミの多さも無視ができるもんじゃない。いま俺が拾った缶の中にもジャボジャボと半分以上の飲み残しのコーヒーが入っていて、スズネちゃんが広げてくれた可燃ゴミ用の二重にしたビニールゴミ袋へとひっくり返してみると、この中からも吸い殻が何本も出てきた。降ってもまだ中に残っている音がする。狭い飲み口から無責任に放り込まれた吸い殻を完全に除去しようと躍起になっていると、通りがかった清掃ボランティアの方が後で何とかするからそのまま纏めて入れちゃっていいよとい言ってくれた。後の再度の仕分け確認をさせてしまうのは心苦しいが、お言葉に甘えて缶・ビン用に広げたゴミ袋へと放り込む。まだまだこれから重くなりそうな予感がする缶・ビン用ゴミ袋はこのまま俺が担当することにした。
「お姉さま、自販機の裏に」
「ええ、よくってよ。一番長い火バサミをこちらに」
「はいっ、どうぞっ」
「はいっ、そこっ、よし、取れましたわねっ」
対向車線側に別れた大和屋部長さんとお嬢様部の二人も少し騒がしくはあるが慣れた様子でテキパキと隠されたゴミを引っ張り出し、仕分けながら前へと進んでゆく、完璧なチームワークで俺たちの先を進む様子を見ていると清掃作業に俺達より慣れているのがよく分かる。お嬢様部は地道な努力で清掃活動をずっと行っているのだと思うと頭の下がるおもいだ。
「よし、俺たちも負けずに軍手を引き締めて頑張るかっ」
「はいっ、スズネもまだまだ元気に街をキレイにしちゃいますよぅ」
「張り切るのはいいけど見落としをしないようにしないとね。みんなでカバーして視野を広く持ちましょう」
俺たちもあの頑張る姿に負けてられないと頷き、気合いを入れてゴミ拾いを再開した。
*
しばらくとゴミ拾いを続けていきボランティア清掃の方が「ここまでで大丈夫ですよ」と言ってくれたスクランブル交差点あたりまでのゴミを拾い集めることができた。俺の待つ缶・ビンのゴミ袋は半分くらいは溜まっただろうか。スズネちゃんと美咲花の持つ可燃ゴミとペットボトルのゴミ袋も同じくらいには溜まっていそうだ。途中から不燃ゴミ用のビニール袋も広げて対応したが、自分達がいま清掃した真っ直ぐ一本道な道路沿いのアーケード商店街を通っただけで、これだけのゴミが集まるとは正直思ってなかった。いつもは気にも止めてはいなかったが各地域のゴミのポイ捨て事情は自分が考えるよりも深刻なのかもしれない。同時に、この清掃活動に部活の一環として頻繁に参加しているというお嬢様部を素直に尊敬する。意流風先輩もボランティア同好会としてひとりでできる範囲でのボランティア活動を行ってきていたのかもしれない。俺も、これからは幽霊部員ではなく、お嬢様部に負けずにしっかりとボランティア同好会としての活動を行って行くべきではないかと考え始めていた。後で、意流風先輩にも相談してみよう。
「よし、そんじゃ大和屋部長さんらも道路沿いアーケードはひと足早く終わってるだろうし、向こう側に合流してみようか?」
そう言うと美咲花とスズネちゃんも頷ずく。ちょうど信号が青になるのを見計らってスクランブル交差点を通って反対側へと向かうと。
「──ですからっ」
何やら、お嬢様部の三人が誰かと揉めているようだった。
(いったい、どうしたんだ?)
大和屋部長さんの語気は強く批難しているように響いてくる。知り合って日はまだ浅いが、こんなに絞り出すような怒りを表す子では無いはずだ。それは、スズネちゃんと美咲花も同じだったようで、俺たちはほぼ同時に彼女の元へと駆け出していた。特にスズネちゃんは俺たちよりも更に速く地面を蹴り上げるように走り出していた。
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