三章──俺のことが好きなの?──
ドキドキ 真正お嬢様部VSボランティア同好会
なんだかんだと言われても日は流れてゆき、あっという間に
「はい、今日はね
地域の町内会長さんらしい頭は完全に真っ白だが、雰囲気はすっごく元気ハツラツ若々しいジャージ姿のおじさんが前に出てガハハ笑いで面白いのか若者にはよくわからないジョークを混じえて挨拶をしている。しかし、ジョークは他の清掃ボランティアの皆さんもしこたま濃いブラックコーヒーを飲んだみたいな苦い笑いをしているので、これは町内会長さんだけが笑える面白ギャグだったに違いない。
「はいっ、それでは星陰高校さま側を代表して顧問の先生にも挨拶してもらいましょうか。そうしましょうッ」
「ふぁふ──ぅん……え?」
「さぁさぁさあ、先生どうぞどうぞ二宮金次郎つってな、あ、そりゃ銅像だ。ガハハハハッ、はい、冗談はさておいてどうどうぞ」
挨拶する予定は無かったのか、不意を疲れて口許を押さえ欠伸を噛み殺すのを隠し切れていなかった
「えーと、ご紹介いただきました星陰高校しんせい? お嬢様部顧問の
なんだか「
「モモちゃん先生は一年B組の担任さんですからねぇ、ろうえい先輩達二年生はあまりお見かけしないかも知れませんよ」
隣のスズネちゃんが耳打ちでコショコショとそっと教えてくれる。なるほど、お嬢様部の顧問は「
「そういや、うちにも一応顧問はいると聞いた記憶はあるんですけど、今日はいないんすか意流風先輩?」
「ハハ、うちは顧問も完全に幽霊なんだよね。とりあえずは顧問になってくれてはいるけど、運動部との掛け持ちだからねえ、今回はお嬢様部がメインの合同部活動という事になったので保坂モモ先生に引率は丸投げてくれちゃって。その場で見ていたけど丸投げの瞬間「はあ、そっすか」の一言と共に真顔で感情を瞬時に処理する人間の姿を見たのは始めてでちょっとガクブルだったよぅ。私もすぐ謝ったんだけどね「いや、メインはうちの部ですから君は気にせんでください。向こうの部活も大事だというなら仕方がない事でしょう。君たちの引率も先生が責任を持ちますから安心してください」なんて言ってくれてねぇ、仏はいるんだなあて感動しちゃったよう。でもあの一瞬ギラリとした眼力は怖かったよおぉ~ぅ」
おー、よしよし。ポンコツ晒さずによく頑張りました先輩。保坂先生には後でみんなでお礼を言いに行きましょう。しかし、うちの同好会は運動部は掛け持ち顧問だったのか。どの部活の先生だ?
「はいっ、それでは皆さん清掃活動よろしくお願いしますねっ」
などと顧問が誰かを絞り出そうとしていると町内会長さんの合図で清掃準備が始まった。しゃあない、いない顧問よりも目の前の清掃を頑張るとしよう。
*
「現れましたわね後安郎英先輩。今日はよろしくお願いいたしますわ」
美咲花とスズネちゃんと一緒に清掃ボランティアの皆さんが用意してくれた清掃道具を受け取っていると大和屋部長さんが俺たちの前に現れた。お嬢様部の部員らしき女子を左右に引き連れてのご登場だ。この子達が意流風先輩の言っていた従者だろうか。なんだかこっちを見る目が険しい。俺、なんか知らんまに失礼なことやっちゃったかな。あ、いやもしかしたらハーレムの噂を信じきっちゃって厳しめな目で見られちゃってんのかも。
「ああ、うん、まぁ今日はよろしくね」
「ふふっ、貴方の企むハーレムの野望も今日で潰える事になる事をお忘れなく。勝利は我らが手にっ、ですわ」
まだまだ誤解は解けそうにも無い大和屋部長さんの自信に満ちた煌めく瞳と主張の激しい縦ロールドリルヘアは今日も力強く目立っている。目立っているのだが、それよりも今日は際立って主張している部分があるのだが、指摘してもいいのだろうか。
「なんですの? 人をジロジロと見て。言いたいことがあるなら仰ってくださいな」
「あ、うん、じゃあお言葉に甘えまして。その、君たちもジャージなんだなって」
目の前の大和屋部長さん達は学校指定のジャージ姿だ。うちの学校は学年毎にタイの色とジャージの色を合わせているので、大きな白のラインが入った一年生の証たる濃緑色のジャージを着ている。
「何をあたりきしゃりきな、清掃活動時は動きやすいジャージと決まっていますわ」
「いや、お嬢様部だからもっとヒラヒラしたドレスみたいなユニフォームがあるのかと」
「美化清掃は自らを着飾り綺麗に魅せるものではございません。周りを綺麗な環境に整える事が主目的。美化清掃時の真正お嬢様部の活動においてはこのジャージこそが
胸を張ってビシリと発言する姿には堂々とした凛々しさがある。後ろのお二人も「その通りですわ」と続いて頷く。うーん、その主張、なんだか凄くカッコよさげだ。
「スズネ達も同じジャージですからねぇ。お揃っちてやつですよ~ぅ」
「ま、同じ清掃活動をするんだもの。ジャージに疑問を持つのも無粋じゃない?」
同じ一年生の濃緑色ジャージのほんわかニコニコなスズネちゃんと二年生の証たる俺と同じ
「そういえば、対決ってさ、何を持って対決とするの?」
俺が一番疑問に思ってた事を聞くと、大和屋部長さんは腰に両手を当てて、対決内容を発表。
「あー、君たち清掃作業をお手伝いする時間は限られてるんだからいつまでも立ち話はダメっすよ」
しようとしたら、横からひょっこりはんとお嬢様部顧問の保坂モモ先生が現れた。
「うん、君たちちょうど六人いるからそのまま班になってもらってあっち側、アーケード付近の清掃を任せてもいいっすかね?」
そんでもって俺たちをササッとひとつの班にまとめ上げようとする。
「え、班て、同じチームということですの。ちょっとお待ちになってマム、それではボランティア同好会の皆さまとの対決が」
「いや、本ご──あ、部活中は大和屋さんなんでしたね。これややこっしいっすねもう。んっ、とにかく大和屋部長。先生は君たちの
「そんな、マムじゃな──モモちゃ──
「うん、だったらみんなで一緒に仲良く美化清掃活動を真面目に頑張りましょう。わかりましたね?」
「ゥ……はい、ですわ」
ガックシと肩を落とす大和屋部長さんとお嬢様部の面々を見て、顧問の保坂モモ先生にめちゃくちゃ頭があがらないのがよくわかった。
「ボランティア同好会の皆さんも頑張ってください。今日は改めてよろしくお願いします」
「は、はいっ」
なんだか俺たちの方も保坂先生に緊張しつつ、同じ班となってしまった大和屋部長さんと共に美化清掃活動を始める事となった。
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