疑惑! ボランティア同好会
「うわあぁッ、怖かったあぁっ」
大和屋部長が退出してしばらくすると、装いなクール仮面をポーンと脱ぎ捨てて意流風先輩はフニャアとポンコツな泣きべそ顔に戻った。もう、大和屋部長さんの前以外ではポンコツを隠す気は無いらしい。
「いや、でも最初こそはちょっとビビりましたけど、後半はなかなかに愉快な子だなって思いましたよ?」
「君はまだ本当は怖い大和屋撫子くんを知らないんだっ、あの煌めく瞳の奥に潜む獣の恐怖がわからないからそんなこと言えるんだいッ!」
そんな
「ていうか、怖いなら素直に言ったらいいんじゃないですか。何を急にクール仮面を装着して強がっちゃったんですか。たぶんいつもの弱きな先輩を晒しても受け入れてくれますよきっと」
「素直に言ったりしたら傷つけるかも知れないじゃないかっ。それに私は強がりたくて強がってるわけじゃないってぇ、何故だか強気な子の前に出るとカッコつけたい自分がでちゃうだけなんだぁ、よくわからないけど、ああゆう子には弱きを見せたくはないんだよ私は」
やれやれ、根というか仲良くなったら見たまんまにものすごく優しいからなぁこのお人は。頑張ってクールを装いたい感じもなんだか憎めない魅力のひとつでもありますなぁ。
「あの、ボランティア同好会二人で盛り上がるのはいいんですけど。第四土曜日の美化清掃対決はどうするんですか? 郎英のウワサの件もありますけど、ボランティア同好会が何人いるかは知りませんが、参加人数はたりてるんですか?」
ボランティア同好会だけで話が進んでるのを美咲花が挙手をして遠慮がちに疑問点を聞いてきた。
「あぁっそうだったあァっ、不純な理由で活動してるなんて思われてるままだあっ、この対決が終わったら廃部に持ち込まれるかも知れないようッ」
意流風先輩がまた頭を抱えて沈んで突っ伏すが、ウワサの中心である俺も
「意流風先輩、美化清掃がどんな対決になるかわかりませんけど、とにかく一緒に頑張りましょう。対決に勝って誤解が解ければ廃部なんて事にはなりませんよきっと!」
誤解ではあるが俺のせいである事は間違いないと、両手を取って沈んでる意流風先輩を励ました。なんか「ほへえっ」とでも言いそうな愉快な顔で俺の顔と手を交互に見ているが、やがってキリッとした装いクール顔で立ち上がる。
「そうだね、お嬢様部との美化清掃対決を必ず勝とうじゃないか。なに、今のボランティア同好会には君以外にも心強い仲間がいるからね」
フッ、とした流し目で先輩は残りの三人を見つめる。
「はい、もちろんスズネは参加しますよぅ。一緒にヤマヤちゃんのおじょうさま部を倒しちゃいましょうかぁ。他人行儀なヤマヤちゃんの事は今は知りません」
「はあ、どんなお仲間がいるのかは知りませんけど、陰ながら応援はしてますから頑張ってください」
「おう、いいとこ見せとけよゴアちゃん。ボウシさんは土曜日はお布団の中で応援してっからさッ」
うん、スズネちゃんは参加してくれるそうですよ。良かったすねせんぱ──
「んなぁにを言ってるんだろうねえぃ、ミサカくんとボウシくんは、君たちはたった今から私の認めたボランティア同好会の名誉会員になったんだよん。ここは一緒に頑張ろうじゃないか。土曜日は俺とおまえら、五人で仮面ライダーだからなっ。どっちかというとスーパー戦隊かも知んないけどね?」
──うわぁ、この先輩巻き込むつもりだよう。勝手にボランティア同好会の名誉会員にされているお二人はさすがに冗談ではないと反論だ。
「どういうことですかっ。ボランティア同好会にわたし達を勝手に入れないでください」
「そうだそうだ、名誉会員とか面白そうな称号はアリっちゃアリだけど、基本アタシらには関係ねえ事じゃんかよっ」
「ウフフのふッ、果たして関係ないと言えるのかなあ? 大和屋撫子くんはすでに君たちの事をボランティア同好会と認識していたんだよう。思い出してみたまえぇ、後安くんの放課後ハーレム部の一員だと思われているんだ、この、年上クールビューティな私と、一緒にねえっ。それにぃっ、一応、そんな差は無いと思うんだけどっ、この私よりも付き合いの長い君たちが後安くんの事をホントの本当に、見捨てられるのかぁい?」
「「ぐうぅッッ」」
ボランティア同好会の危機なせいかもうどうにでもなれといった感じなヤケクソッぷりで意地でも二人を巻き込もうとする意流風先輩。二人もなんかダメージを負ったようなグヌヌ顔になっておる。まぁ、急に友達だと思ってるやつのハーレムだなんて言われたら本人としては嫌だよなぁ。俺も春行のハーレムだなんて誤解されたら……いや、単純に想像してもナシよりの無しだな。じゃぁバイビーコミュニケーションて
「それよか、他のボランティアの部員はどうなってんだよ。ゴアちゃんみたいな幽霊部員がまだ何人かいるんだろおマッチせんぱいよう」
「後安くんみたいに律儀に顔出してくれる幽霊部員が存在するわけないだろっ。そもそも幽霊部員てものは名義貸しで他に部活掛け持ちしてたりするもんなんだっ。ほぼほぼ他人事なうちのピンチに駆けつけるものかッ、不規則でも顔を出してくれていた後安くんが特殊すぎるくらいにお人好しなだけなんだよねっ!」
「うあっ、確かに幽霊部員てそうゆうもんだって話聞くわ、ゴアちゃんが特殊すぎるお人好してのも解釈が一致すぎる……がはっ」
下城がストレートパンチで噛みついたが、意流風先輩のド正論カウンタークロスをぶち込まれて、下城はガックシと崩れ落ちた。
うーん、てか特殊すぎるお人好して俺、褒められてんのかしら貶されてるのかしら?
「はあぁ~っ、わかりました。わたしは参加してもいいです」
「「「え?」」」
急に美化清掃対決参加に名乗りをあげたこの甲高い声は美咲花だ。
「い、いいのかい?」
「このままじゃ、話平行線でいつ帰れるかわからないですからね。勝手にカノジョにされちゃってんのも癪ですし。ただし、ボランティア同好会に協力するのは今回だけですからね。絶対に今回だけ、いいですね」
「おいおい、その流れだとアタシも参加せざるを得ないじゃんかよう」
「じゃあ、しろぼうは無理しなくてもいいけど?」
「や、そう言われちゃうとね、なんかひとりだけ仲間外れみたいなんやだからアタシもやるやる。しかしよう、なんで急にやる気出したん?」
「それは、いま言ったでしょ、勝手に郎英のカノジョにされちゃってんの癪だって、それに……」
「んぅ、スズネの顔になにかついてますかぁ?」
「ん、なんでもない。なんか、スズネちゃんにあてられてるのかもねわたし」
「ん~、スズネは宝くじなんて買ってはいませんよぅ。せいぜいブラックモンブランの当たり棒くらいですねぇ」
「いや、そういう当てたじゃないから──て、当たり棒てすごいじゃない。わたし棒アイス系で当たったこと一度も無いわよッッ」
こうして、妙にブラックモンブランの当たり棒にはしゃぐ美咲花を含めたこの場にいる全員がボランティア同好会と真正お嬢様部の地域美化清掃対決に参加することになったのだった。
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