『瓶詰地獄』を数年ぶりに読み返して
肉味噌
読書感想文
『瓶詰地獄』という作品がある。
無人島に漂着した兄妹が、二人きりの島で育つ間に自らの慕情と欲望に苦悩する。その生き様と末路が3枚の手紙で表されている怪作だ。
作者は怪奇作品の大家、夢野久作。『ドグラ・マグラ』の作者と言えば知っている人も多いだろう。そしてドグラ・マグラと同様に、この瓶詰地獄も読者ごとに様々な解釈がある作品だ。少し調べれば様々な考察を見ることが出来る。
そのため、ここからは筆者の推測も混じるが。作中描写を見る限りこの兄妹が苦悩したことは『自らの兄/妹に性的な欲望を抱くこと』。聖書を持ち歩くほど信心深い二人にとって、教義としてタブーである行為に繋がるこの欲望は禁忌だ。
禁忌を禁忌だと知りつつ、それを抑えることが出来ない。この兄妹が一線を超えたかはここでは明言しないが、この作品の言う『地獄』とはそういうものだ。
私がこの作品を読んだのは高校の授業中だった。当時使っていた電子辞書には童話を初め様々な物語が収録されており、不真面目な学生だった私は授業を聞き流し読んでいた。その一つがこの作品だが、私はこれを読んで奇妙な連帯感を覚えた。
学生の身であった私の本分は学業だ。支払い能力も無く、授業料も丸々両親に払って貰っている身分である。そのため、本分を無視し親の金を捨てるような行為は、禁忌であると言える。それでも私は授業を聞き流して電子辞書で物語を読むことを止められなかった。
禁忌と知っていても抗うことは出来ない。その感覚で私と兄妹はリンクしてた。だが、それを地獄と評した兄妹と異なり、私は苦悩こそ少ししても、後悔をした覚えはない。
結論として、己を苦しめる地獄とは個々人によって違うのだ。そうした価値観の違いを、この物語は私たちに教えてくれる。
一人っ子の私に妹はいないが、もし妹がめちゃめちゃ美人だったら一線を超えるかもしれないし、それを地獄と私は評しないだろう。要はそういうことなのだ。
『瓶詰地獄』を数年ぶりに読み返して 肉味噌 @Agorannku
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