環状線を巡る。
ヲトブソラ
環状線を巡る。
環状線を巡る。
二十二時四十六分の環状線で揺れる。車窓、街の煌びやかな灯りを、ぼんやりと眺めながら、今日も一日が終わっていくと思いを巡らせていた。停車駅、出ていく人と乗り込む人がいて、それが巡り合いのようだなあ、と、扉が閉まるまで眺める。駅に降りた人は去っていく人、乗り込んできた人は出会った人。次の駅に待つ人々は、これから起きる出会い別れ。そんな事を考えていると、再び流れ始める灯りの点々が走馬燈のようだとも思えてくる。
「思考がネガティブなのは自覚あるし……」
人生の最期の最後に見るという走馬燈は、こんな感じでよく見れやしないのだろう。人生を振り返るには想い出や出来事があり過ぎて、煌びやかな光の点々として過ぎていくに違いない。暗闇は人生にあったであろう出来事や選ばなかった方。那由多に広がっていた人生の出会わなかった何かだ。
『次に停車します駅は………』
次の駅で乗り換えて郊外に向かう。今度はぼくが“あなた”たちの去っていった人の番だ。
四六時中、こんな事を考えてしまうのだから、物書きという職業は白昼夢の達人だとも思う。実にしあわせ。
「今日は肉じゃがだって言っていたなあ」
郊外に向かう線路の先にあるのは、ぼくの人生の現在地。巡る人の出会い別れで巡ってきた、きみの待つ家。
おわり。
環状線を巡る。 ヲトブソラ @sola_wotv
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