一章最終話 当たり前の日常+あとがき
「優也好き、大好き……ずっと一緒に居てね、ずっとずっと一緒だから……大好きだよ、優也……もう絶対に離さない」
「……朱莉」
☆
「よー、パンツマン! 今日も元気そうだな、パンツマン!」
「パンツマンおはよう! 昨日の阪神戦見たか?」
「だから俺の事パンツマンって呼ぶのやめろ! 色々誤解されるだろ、勘違いされるだろ!」
朝のざわざわした教室に、ひときわ大きな俺の声が響く。
朱莉のパンツ事件及び朱莉と仲直りした日から数日が経った。
あの日から俺の周りに別段大きな変化もなく……あると言えば俺の呼び方が不名誉なものに変わったのと朱莉との関係が変わったくらい。
そんな簡単に日常ってのは変わりはしない。
「あ、ゆう……パンツマン様、おはようございます。今日もいい天気、ですね」
「日和まで……パンツマンって呼ぶのやめてよ、もう。誤解されちゃうじゃん」
……まあ日和までパンツマン、って呼んでくるのは嫌だけど……って言うか女の子にパンツマン、って呼ばれるのが嫌だわ、何だこの不名誉すぎるあだ名!
「えへへ、ごめんなさい優也様……でも、なんだか響きが面白くて、可愛いですすから。ところで優也様、何故パンツマンと呼ばれてらっしゃるのですか? 優也様はパンツはお好きではなかったですよね?」
「べ、別にそう言うわけで和ないんですけど……いや、それはその……えっとですね……」
「お、藤沢さん、俺が教えてあげようか? えっとな、この前優也が……」
「教えんでいい! こんな純粋な瞳した日和に変な事吹き込むな、変な事言うな! また変なことになるから、おかしなことになるから! だからダメだ、変な事吹き込むな!」
日和はこんなに純粋でキレイな碧い目をしてるけど!
でもその目と同じくらいにえっちな色のパンツを俺に渡してきた前科があるから!
だからそう言うのはダメ、えっちなのはいけないと思います!
「むー、教えてくれませんか……でもいいですわ。隠し事も乙女の作法だと教わりましたから……優也様も一流の乙女に近づいてますわ」
「俺男なんだけど……でもそれ以上の追及がないのは助かります」
「当然ですわ。優也様の嫌がることは私は致しませんから」
「ふふっ、ありがと日和。それじゃあ俺はちょっとトイレ」
ふわふわとした表情でやんわりと、それでも強い意志で受け流してくれる日和に感謝して、いったんトイレに向かう。
「や~や~、優ちゃん! 今日もご機嫌な足取りだね~、なんかいいことあった~?」
「……なんだよ、長岡紬? 背中やめろ」
トイレに向かう道中でつんつん背中を触られたので振り返ると、ニコニコ笑顔の長岡紬が俺の方を向いて手を振っていて。なんですか、何か用ですか?
「べつに~? なんか優ちゃん楽しそうだな~、って思っただけ~! あ、そうだ~、あのパンツ事件の犯人見つかった~? 結局冬華ちゃんだったの~、犯人?」
「……関係ないだろ、長岡紬には。まあでも、そんな感じだよ……そんな感じ」
あの事件の犯人が朱莉だ、ってことは誰にも言ってないし、それに言う必要もない。
あの事件は誰も悪くないし、ほとんど何も起きなかったんだから……強いて言うなら俺がいじられるのと、俺がずっと朱莉に気づいてあげられなかったことが原因だし。
だからアレの真相は誰にも言わないでいいんだ……俺が全部悪い、それでいいんだ。
「ふ~ん、なんか煮え切らないね~、まあいいけど! それじゃあ、優ちゃんトイレだよね? ほれほれいっトイレ~!」
「……はーい」
そう寒いギャグを言った長岡紬に苦笑いしながら俺は今度こそトイレに向かった。
☆
「それじゃあみんなばいばーい! 気をつけて帰るんだよ~!」
そうふるふると嬉しそうに手を振る先生の声とともに放課後の時間がやってくる。
最近は先生が忙しいらしくてお菓子は貰えてないけど、でも今日も朱莉の家によって、それで……
「つんつん、つんつん……優也様?」
「ん? どうしたの日和?」
この後の予定を考えていると、わき腹をつんつん日和にいじらしく、控えめにつつかれる。
「いえ、その……この後お暇ですか、優也様? その、今日、えっと……また、先生とお菓子、作りたいです。優也様と三人で……その、連絡遅れてすみません。でも、えっと、私は優也様と……」
すこし申し訳なさそうに、赤く染まったほっぺを隠そうとせずにもじもじとそう言って。
……お誘いは受けたいけど、でも……ごめんね。
「……ごめんね、日和。俺先約あるから。だから、ごめん、日和」
「……そう、ですか。すみません、こちらこそ急にお誘いなんかしちゃって、優也様の事考えずに……」
「ううん、大丈夫。誘ってくれてありがと、日和……だから、その……ちょっと待ってね。日和……もうちょっとだけ、待ってて欲しい。もう、少しだけ」
「……?」
「……ごめん、変な事言った。ごめんね、気にしないで! それじゃあ、バイバイ、日和!」
「……待ってください、優也様! その……待ってください!」
自分でも言った意味がよくわからない言葉に?マークを浮かべていた日和をよそに帰ろうとすると、少し焦ったように日和が俺の腕をぎゅっとつかむ。
「あの、その、優也様の言ってること、あんまりわかりませんでしたが……でも、その……私は優也様の事、ずっと待ってますわ。優也様は日和の運命の人ですから……だからずっと、優也様の事、待ってますわ」
そしてそのまま、俺の方をぎゅっと見つめて。
強い意志のこもったそんな目で俺の事を見つめて。
「……ありがと、日和。ごめんね、待ってて……明日しよ、お料理。明日なら大丈夫だから!」
「……はい、優也様! しましょう、明日、絶対! そ、それでは、その……行ってらっしゃいませ、優也様!」
「うん、行ってきます!」
嬉しそうにパッと顔をあげて、甲斐甲斐しく頭を下げる日和に手を振って、俺は教室を飛び出した。
「……えへへ、優也様……日和は何があっても優也様の事、待ってますわ」
☆
「……あれ?」
教室を出て靴を履き替えて校門の前に出ると見知った顔を見つける。
そしてその顔を俺に気づいたようにパッと目を輝かせる。
「おーい、お兄! お兄! 冬華来たよ、大好きな妹が来てあげたよー!」
「ふ、冬華ちゃん! そんな事言ったら迷惑かかるよ!」
「……なんでいるの、二人とも?」
まごう事なき、冬華と咲綾ちゃん……なんで俺の高校まで来てるの?
「それはお兄と帰りたかったから! ね、咲綾ちゃん?」
「え、あ……はい、私もお兄さんと一緒が、良いです」
「ほーら、咲綾もそう言ってるし! という事で決定、お兄一緒に帰るよ……あ、お兄の隣は私ね! 咲綾に変な事しないよう、妹の私がお兄の隣で歩くから! お兄の大好きな妹の私が隣歩くから!」
勝手に盛り上がって勝手にそう言って、俺の隣ぴょんと飛んでグッと腕を組んできて……もう、本当に勝手だな、冬華は。
「いいでしょ、私はお兄の妹なんだから! ほら、早く帰ろ、咲綾も一緒に!」
「はい、ご一緒します……!」
「はいはい、わかりましたよ。一緒に帰りましょ、一緒に」
もうこの二人に逆らっても無駄だし、妹だしもういいや。
ご一緒しますよ、兄として。
「さっすがお兄! ほら、一緒に帰るよ、早く帰るよ、お兄!」
「……そう言うならせめて、手離してよ。歩きにくい、冬華」
「良いでしょ、兄妹なんだから! だから行くよ、これで行くの!」
「……最近わがまま加速してないかい、冬華さん? なんだか距離感バグってるよ?」
「昔から変わんないよ! だってお兄は私のお兄なんだから!」
「……へーい、わかりました」
「……」
☆
「それじゃあ、冬華と咲綾ちゃんは先帰ってて。俺は朱莉の家に行くから……だからそろそろ離せ、冬華!」
しばらく歩いて俺の家の隣、朱莉の家の前。
ここに寄りたいから冬華を離したいんだけど……全然離れない、どうした冬華、今日はやけに強情!
「お兄、毎日行かなくて良いじゃん、今日せっかく私デートないんだよ! 一緒に遊ぼ、ふゆと一緒に遊ぼうよ!」
「帰ったらいっぱい遊んでやるから! ごめん、咲綾ちゃんこいつの事頼んでいい?」
「あ、はい……ほら、冬華ちゃん離れ……!?」
「むー、お兄……んっ!!!」
俺の腕に抱き着いたまま、ぷくーとほっぺを膨らませていた冬華は一旦腕を離したかと思えば、すぐに急転換して俺にギュッと抱き着いてきて……何、急に?
「だって、お兄が……だからお兄をチャージします。ふゆが寂しくないように、お兄の事チャージします」
「チャージって……咲綾ちゃん見てるよ、咲綾ちゃんいるよ、寂しくないでしょ?」
「でも、でも……今日はお兄と一緒だと思ったもん。だからこうやって、チャージ」
そう言った冬華は俺の身体をしっかりとホールドして……全く、つんつんしてた分の反動が来たのかな、急に?
もう、咲綾ちゃんもいるのに……昔から甘えん坊だな、冬華は。
「……ごめんね、咲綾ちゃん。ちょっとだけ、待ってて」
「え、あ、はい……ま、待ってます」
「お兄、集中! 私がお兄の妹、お兄だけの妹! だからしっかり私に集中して!」
「……わかったよ、誤解されるようなこと言わないで冬華」
困惑する咲綾ちゃんをよそに、取りあえず冬華の背中を撫で続ける。
ホントもう……甘えん坊なんだから、冬華も。
「……すごいな、ホント……」
☆
「お邪魔します、おばさん」
「あら、優也君! 今日も来てくれたのね!」
「はい、それじゃあ朱莉のところ行ってきますね」
ようやくたどり着いた朱莉の家でおばさんに挨拶して朱莉の部屋へ向かう。
「朱莉、入るよ。開けていい?」
「うん、良いよ……開けて、優也」
コンコンとドアをノックすると中からのんびりふんわりとした朱莉の声が聞こえる……この調子じゃ、お昼寝してたかな?
「それじゃあ、開けるよ、朱莉」
「うん……お帰り、優也」
「ただいま、朱莉」
部屋の中で俺のTシャツを着た朱莉がとろんとした目つきで言ったお帰りに、俺もちゃんとただいまを返す。
その俺の声を聞いた朱莉は満足そうに腕をうーん、と広げて。
「ねえ、優也……今日も良い?」
「うん、いいよ。おいで、朱莉」
「……ぎゅー」
俺も同じように手を広げると、テトテトと可愛らしく朱莉が俺にぎゅーっと抱き着いてくるので、俺も朱莉をぎゅっと受け止める。
数日前には考えられなかったような甘くてゆらゆらする香りが身体中にふんわりと広がって、それを楽しむように朱莉も俺の胸に顔をすりすりこすり合わせて。
「……えへへ、優也の匂いだ。安心してほわっとして、私の大好きな優也の匂いだ……今日もお疲れ優也」
「ありがと、朱莉。朱莉は何してたの、今日?」
「今日はマンガ読んで、ゲームして……あとは優也の事、考えてた。優也何してるかな、ってずっと考えてた」
「……そっか、ありがと。なんか嬉しい」
「うん、私も……ん? 優也、なんか匂いする、私じゃない女の子の……優也、誰かとぎゅー、ってした? 私以外の誰かとぎゅーってした?」
すんと顔をあげた朱莉が少し怒ったような目で俺の方を見上げる。
その手は強く、俺の服を掴んでいて……大丈夫だよ、朱莉。
「さっき冬華がちょっとね。冬華が俺に抱き着いてきた……冬華も仲悪い時期が長かったからな」
「……本当に冬華ちゃん?」
「うん、本当に冬華」
「そっか……それなら許す」
そう言ってもう一度俺に顔を埋めて、もっともっと強く俺の事を抱きしめて。
「ねえ優也、もっと強く抱きしめて……身体の隙間が無くなるくらいにもっともっと強く……私と一つになるまでもっともっと強く、ぎゅーってして」
「……うん、わかった。朱莉が望むままに」
「優也……えへへ、優也と今一つになってる、すごく幸せ……ねえ優也、大好きだよ。ずっと一緒に居ようね、ずーっと、ずーっと……ずっと優也と一緒だよ……大好きな優也と私で、ずっと一緒に居ようね」
「……朱莉」
幸せそうに顔を蕩けさせる朱莉の身体をさらにぎゅっと強く抱きしめる。
強く、強く……身体の隙間が無くなって、一つになって……朱莉が満足できるように。
「優也好き、好き……大好き……本当に大好きだよ、優也……絶対に離れないでね、絶対に離さいよ……大好きだから、本当に……優也の事、大好き」
「……朱莉」
……こんな風な日常が毎日続くと思っていた。
少し歪かもしれないけど、でも色々が解決して楽しい日常が毎日続くと……そう、思っていた。
「ちょわ!? ちょ、あ、あんた何してるんすか!?」
「何って……パンツ脱いだだけだが?」
「はぁ!? ここ、学校だぞ!?」
「パンツマン君、私は露出狂だ。私は脱いで幸せ、君は貰えて幸せ……winnwinnの関係だと思わないかい?」
……でも新たな変態の出現によって、俺のその楽しい日常は徐々に崩壊していくことになる。
to be continued……?
★★★
という事で一章終了です!
たくさんの応援のコメントや♡やブクマに☆などいただけてものすごく嬉しかったです!!!
明日にしれっとキャラ紹介とか短編とかそう言うのが上がるかもしれませんが、一旦ここでこの作品は完結とさせていただきます!
いつになるかわかりませんが、多分そう遠くない未来に2部が開幕しますのでそちらもお楽しみにしていただけたら嬉しいです!
2部は変態とシリアスとラブコメちゃんとやる予定です……メインヒロインはあの3人です!
それではいつも通り……感想や☆やフォローなどしていただけると嬉しいです!!!
ここからちょっと裏話
裏話① この作品はリコリコのパンツ(さかなー)の回を見て思いつきで書きはじめました。そこまでは全く原案とかそう言うのもなかったです。リコリコの話がたまに出てくるのはそのためです、最新話最高でした。
裏話② ①あって初期設定とキャラが違う子がたくさんいます。
一応軽く全員分のせます
朱莉ちゃん……現在 暗い過去がある、優也君大好き
初期 別に暗い過去ない、優也好きじゃない、ただの変態
日和ちゃん……現 優也君大好き幼馴染? 常識ないのかあるのかわかんないお嬢様
初 変態 お嬢様じゃない ただの変態
冬華……現 ブラコン妹 お兄ちゃん大好き
初 お兄ちゃんと仲悪い 普通の思春期妹 べたべたしない
咲綾ちゃん……変わってないけど、初期ではメインヒロインだった……というか他が変態すぎてメイン張らざるを得なかった。ラブコメのラブを一身に担うつもりだった。
紬……現 優也の昔好きだった人、両片想い ヒロインズの友達
初 モブA
先生…現 顔小春of the六花 胸ささらちゃん
初 顔ささらちゃん 胸小春of the六花
とまあこんな感じでした。詳しくはいずれ話せたらいいな……なんて思ってます!
以上、裏話でした!
⋯⋯初期設定変態しかいませんね。
【一章完結】 エロゲ大好き変態引きこもり幼馴染と毎日放課後に会っていたら、なぜか美少女たちのパンツが集まってくるようになった~俺は変態じゃないんだ! 見せるな脱ぐな、俺のを履くな!!!~ 爛々 @akibasuzune624
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