優也の過去 後編 変わってしまった関係
「ぴやっ!?」
「おーおー、悪い悪い! そんな女の子みたいな声出すとは……ところで最近なんかあった? 元気ないよな、最近?」
夏休みの炎天下の部活の休憩中、ほっぺに触れた冷たいものに顔を振り向かせると、同じ部活の友達がニヤッとしながらキンキンのお茶をほっぺに当てていた。
それは冷たいよ、変な声も出ますよ……あと、元気ないのも事実です、良く気づきましたね。
「まあ、伊達にお前の友人歴長くないし! ところで何があったの? ほらほら、親友の陽ちゃんに話してみんしゃい!」
「いくら陽ちゃんでもダメ、話せない。俺の問題だもん」
「ん~、冷たい! それじゃあ勝手に予想しようかね……例えば長岡ちゃんにフラれたとか?」
「……そ、そんなことは無いよ。ふ、フラれては無いよ、うん!」
……確かに紬とは最近連絡とっても返信遅かったり冷たかったりすることが多いけど! 近くのデパートで同年代くらいの男の人と二人で歩いてるところも見たけど! でもでもまだフラれては無いから、図星じゃないから!
「お、図星か? 図星なのか、フラれたのか?」
「だから違う! フラれてない!」
「そんなに怒らんでも……ふふっ、それならあれか? 朱莉ちゃんとなんかあったとか? 最近朱莉ちゃんの姿全然見ないし、優也も話しないし……あれか、朱莉ちゃんとケンカしたか? 朱莉ちゃんとケンカしてそれで気まずいみたいな!」
「……概ね正解、やっぱり凄いや陽ちゃんは」
ビシッと俺の方を指さしながらそう言う陽ちゃんに感嘆交じりの息を吐きながらパチパチ手を叩く。
ケンカではないけど……まあ朱莉が俺の事誤解して、少し怖がってる感じだけど。
「さっきも言ったろ、優也の友人歴は朱莉ちゃんの次に長いんだから! て言う事はあれか、朱莉ちゃんと全然会えてなくてそれで寂しいわけか! いつも朱莉ちゃんお前にべったりだったもんな、そりゃ寂しいか! 理由はあんまり聞かないけどそう言うわけですか、優也君?」
「べったりかどうかはさておき、まあそんな感じ……もう4日になるのかな、朱莉に避けられるようになって。こんなに朱莉と話さないのは初めてだから、やっぱり寂しいって感じ」
小学校の時に隣の家に引っ越してきて、そこからずっと朱莉とは一緒で。
旅行行く時も大体2つの家族で一緒だし、学校もずっと一緒だったし風邪ひいてもお見舞いに行ったし、ケンカもほとんどなかったし、ケンカしてもすぐ仲直りして、その日はお泊りしてずっと一緒で……だから4日も朱莉と話さないなんて未知の領域、経験したことないことで。
そのせいで今凄く寂しくて、不安で。
こんなにもいつも一緒だったから少し合わないだけで本当に心配になるんだ……しかも引きこもって、朱莉とは本当に何も出来ていないし。今の状況が何もわからないし……俺がエロゲなんてほったらかしにするのが悪いんだけど。
「そっかそっか、そりゃ大変だな。でもあれだろ、お前達の事だからすぐに仲直りするんだろ? すぐに仲のいい二人に戻るんだろ?」
「……そうだといいけどね」
「優也がそんなに弱気でどうするんだよ! 大丈夫だって、だって優也と朱莉ちゃんの仲だろ? またすぐに仲良くなれるって、すぐに仲は回復するって!!!」
「……そうだね、そうだよね。ありがと、陽ちゃん、ちょっと勇気出た」
「おうよ、感謝は結構でい、この後あずきバー奢ってや!」
「ホント抜け目ないな、陽ちゃんは。りょーかいだよ、ありがとね」
「おうよ! ほら、練習行くぞ!」
ニカっと笑いながらそう言った陽ちゃんに感謝を伝えて、俺は練習に戻る。
そうだよね、俺と朱莉だもん、ずっと仲良しだったもん……またすぐ、仲良くなれるよね。
「あ、朱莉! 今日俺な部活で結構アピールできてな……!」
「それで今度の試合出れそうなんだけど……見に来ないか、朱莉?」
「……」
「……また明日も来るよ、朱莉」
でもその気持ちは淡く消えて、朱莉と俺の溝はさらに深まった気がした。
「……怖い、怖いよ……優也、どっち……?」
☆
「……はぁぁぁぁぁ……」
「お兄ちゃん、元気ないね最近? 朱莉姉にまだ会えてないの?」
また数日朱莉と会えない日が続いて今日も会えず、少し限界が近づいてきたころ、そう冬華に心配そうに声をかけられる。
冬華に勘繰られるとは兄失格だな……失格だ、兄としても幼馴染としても。
「やっぱりそうだ! お兄ちゃん、私に隠し事はダメだよ! 私はお兄ちゃんの妹12年やってるんだからね、全部話してくれないとダメなんだよ! お兄ちゃんはふゆのお兄ちゃんなんだからね!」
「あはは、ごめんね冬華。でも朱莉の事を冬華に相談するのはちょっと……」
「ダメダメダメ! 朱莉姉は私とも仲いいし、それにお兄ちゃんが元気ないと心配だし! だからダメなの、話さないとダメなの!」
ぷんぷんと怒ったように俺の隣に座って、ぺちぺちと胸のあたりを叩いてくる。
全く冬華は……まあでも、朱莉は冬華のお姉ちゃんみたいなもんだし心配ではあるか、そりゃ。
「うんうん、心配! それに朱莉姉も心配だけどやっぱりお兄ちゃんが心配! お兄ちゃんはいつも元気で優しかったから、そんな風になると心配になるんだ……あ、そうだ! お兄ちゃん今日は私が励ましてあげる!」
俺の胸を叩いた冬華は今度はドドーンと薄い胸を大きく張って……ありがと、冬華。そんなに俺の事考えてくれて。
「ふふっ、ありがと冬華。それじゃあ何したい、何して遊ぶ?」
「むー、いつまでもちっちゃな妹扱いしない! 遊んでもらうんじゃなくてお兄ちゃんと遊ぶの、私はもうレディーだから! えっとね、今日はこれからお兄ちゃんとキャッチボールして、人生ゲームして、一緒にご飯食べてお風呂入って、そのまま一緒のお布団で二人で寝て……それでそれでお兄ちゃんに元気になってもらって、それでそれで……!」
「待って待って、冬華いっぱい言いすぎ……それにお風呂はダメだよ、この前お母さんにもうダメ、って言われたでしょ?」
早口でまくし立てる妹を抑えながら、ちゃんと突っ込むべきところにはしっかりツッコミ。
この前「そろそろ冬華も中学生だから一緒にお風呂入るのやめなさい!」って怒られたでしょ?
「むー、そうだけど……でも今日くらいは良くない? いつも一緒はダメだけど、たまにだったら良いでしょ? 咲綾もいないし、私寂しいし……ダメ、お兄ちゃん? こっそり一緒に入ろうよ、お兄ちゃん?」
「だーめ、俺怒られたくないもん」
ていうかそもそも一緒にお風呂入るのも寝るのも色々まずいでしょ、もうこの年齢なら。
普通の家なら絶対に入ってないし、冬華もそろそろそう言うの気にする頃だと思うし、やっぱり一緒にお風呂はダメです!
「むー、お兄ちゃんのケチ! たまにくらい良いじゃん、可愛い妹の頼みなのに……あ、でも一緒に寝るのは良いよね? それなら何も言われてないからいいよね?」
「……それもダメだよ、言われてないだけで暗黙の了解というか……」
「言われてないから良いでしょ! 可愛い妹の頼みだよ? 一人じゃやっぱり寂しいし、お兄ちゃんの温もり恋しいし⋯⋯それに裸じゃないからちゃん服着て寝るから! だからお願い、お兄ちゃん?」
「⋯⋯そう言う問題じゃ⋯⋯」
「あ、お母さん帰ってきた! お母さん、今日お兄ちゃんと一緒に寝ていい? お兄ちゃんと一緒のベッドで寝ていい?」
一緒のお風呂は諦めたけど、一緒に寝ることは諦められない冬華が帰ってきたばかりのお母さんの下へダッシュし楽しそうに、でも平静を装ってそう聞く。
少し面食らっていたけど、チラチラと俺と冬華を見たお母さんは当たり前のように小さく声を出す。
「ん、優也と……まあいいんじゃない、一緒に寝るくらいなら。ちゃんと服着るののよ、二人とも……優也、冬華に変な事しちゃダメだかんね!」
「変なことなんてするか! ていうかまずいでしょ、もう小6と中2だよ?」
「何がまずいの、お兄ちゃん? 冬華はお兄ちゃんと一緒にねむねむしたいだけなんだけど? お兄ちゃんの匂い安心するし寂しいから、それでねむねむしたいだけなんだけど……あ、お母さん一緒にお風呂も入っていい?」
「ん~、お風呂は流石にダメだけど一緒に寝るのは全然まずくない! たまには可愛い冬華の言う事も聞いてあげなさい! お母さん命令!」
「いつも聞いてあげてるつもりだけど……」
「ダメ、ふゆの言う事お兄ちゃんあんまり聞いてくれない! だから今日は一緒に寝る! わかった、お兄ちゃん!」
「そうよ、一緒に寝てあげなさい! お兄ちゃんでしょ、優也は!」
「……わかったよ、わかりました。一緒に寝るよ、冬華ちゃんと服着なよ」
……反論して避けようと思ったけど、お母さんを味方につけた冬華の力は強く、結局押し切られてしまった。
全く、中2になって小6の妹と一緒に寝るとは……
「よっしゃ! 今日はお兄ちゃんと一緒だ……えへへ、いっぱい甘えてなでなでしてもらお……えへへ」
……まあ、可愛い冬華に免じて今回は許してあげようか。
☆
「お兄ちゃん、狭い、熱い。もっとつめて、冬華の方もっと来てぎゅーってさしてぎゅーってして?」
「……それは俺はどうすればいいんだい?」
冬華と一緒に遊んで、夜ご飯を食べて、名残惜しそうな冬華を見送って各自でお風呂に入って、その後また遊んで……そんなことをしていたらもう寝るには良い時間になった。
「ぎゅーってすればいいの! 今日はお兄ちゃんが抱き枕、私も抱き枕! 一緒に寝るんだからお兄ちゃん成分いっぱい吸収するの!」
そう言うわけで、今日はちゃんと服を着た冬華が俺の隣で寝ようとベッドに入ってぐいぐいしてるわけだけど、二人とも大きくなったから狭い狭い。
昔とは違うんだぞ、俺たちもう中学生だぞ、冬華!
「ふゆはまだ小学生だもん、お兄ちゃんにまだ甘えたい年頃だもん……という事でぎゅー、ってするね……えへへ、お兄ちゃんの匂い、やっぱり安心する。好き」
「ったく、もう……今日だけだぞ、一緒に寝るのは」
「むー、ケチだなお兄ちゃんは……それなら今日全力でお兄ちゃんに甘える! お兄ちゃんもぎゅー、ってしなさい、ふゆの事!」
「はいはい、わかったよ……ぎゅー」
「……えへへ、好き好き大好き……大好きお兄ちゃん、私だけのお兄ちゃん……えへへ、幸せ、好き……」
……なんかちょっと心配になるな、こんなにべったりだと。
もちもちまだ子供で、抱き心地も凄く良いし、冬華も喜んでるから別に嫌ってわけじゃないけど、でも冬華も小6なわけで、その妹とこんな距離感なのちょっとまずいとは思うし……冬華は可愛いから彼氏とかちゃんと作ってほしいけど。
「えへへ、お兄ちゃんの背中大きい、抱き心地最高……ん? むー、なんか失礼なこと考えてない?」
「考えてないよ、冬華は可愛いな、って思ってた。やっぱり可愛いな、って」
「ホント!? えへへ、当然だよお兄ちゃん! ふゆはお兄ちゃんの妹で、世界一可愛いんだから……ねえ、お兄ちゃん。お兄ちゃんはその……朱莉姉の事大好きでしょ?」
「……急にどうした?」
話の流れ変わりすぎじゃない?
声も急にシリアスな感じになるしどうしたの、冬華?
「うんん、何でも。答えてよ、大好きでしょ、朱莉姉の事?」
「……大好き、って程ではないけど、でも、その……まあ、幼馴染としてなら。幼馴染としてなら好き、かな?」
俺が好きなのはあくまで紬だし。だから、朱莉は……幼馴染だ、大切な。
「……強がらないで、絶対大好きだもん。ふゆの事より絶対、朱莉姉の事好きだもん、じゃあ大好きだもん……だからね、朱莉姉にその気持ち、伝えたらいいんじゃないかな? お兄ちゃんが朱莉姉に大好き、って言ったら出てきてくれるよ、きっと。ふゆよりお兄ちゃんは朱莉姉の事、ずっとずっと好きだもん」
「……冬華?」
「だって、朱莉姉もきっと……ううん、何でもない。とにかく、お兄ちゃんは朱莉姉にちゃんと自分の気持ち伝えたらいいと思う……大好きなその気持ち。私がお兄ちゃんの事大好きって言うみたいに、お兄ちゃんも朱莉姉の事大好きな気持ち伝えたら……きっとまた、仲良くなれると思うよ。私がお兄ちゃんと……こんなに仲いいように、こんな大好きなように……前に進むにはそれしかないよ……私とは違うから」
ギュッと俺の背中を掴んで、脚を絡ませながら。
少し上気した悲しそうな赤い声は、震えるように抱き着いた俺の胸の中に吸い込まれて行って。
……そっか、冬華も考えてくれてたんだな、色々。
ホント妹に……いや、これは妹のおかげだね。なんだか大人の妹の。
「……ありがと、冬華。色々考えてくれて……ホント、ありがと」
「……うん……ふふ~ん、そうでしょそうでしょ! ちゃんと励まそうとしてたんだよ! だからお礼は良いよ、おやすみのちゅーだけで勘弁してあげる!」
「ちゃっかり要求してんじゃん。それにちゅーはダメだよ」
「えー、昔はしてくれたじゃん、寝る時にちゅー、って! ゆっくり安心して眠れるから……だから、ん~!」
そう言って俺の方に目を瞑った赤い顔をキューっと向けてきて……前言撤回、やっぱりただの子供だ、ちゅーなんてしません、これは大好きな人のための唇!
「ダメだよ、冬華! ちゅーはダメ、抱き着いても良いけどちゅーはダメ! ほら、さっさと寝るよ!」
「……もう、やっぱりお兄ちゃんはケチ! でもおやすみ……えへへ、お兄ちゃんの匂い、やっぱり……すーすー」
少し怒ったようにそう言った冬華は俺にもう一度強く抱き着くと、そのまま小さく可愛い寝息をすーすと上げ始める。
相変わらず寝つきが良いこと……さてと俺も寝ますか……明日朱莉とまたあうために。
「おやすみ、冬華……俺も冬華の事、大好きだよ。ずっとずっと、妹として大好き……だから冬華も幸せになってね」
そう言って、俺も冬華をぎゅっと抱きしめる。
温かい感触とともに、俺の意識もすぐに沈んでいった。
「……お兄ちゃんのケチ……でも……チュッ」
「……えへへ、眠ってるお兄ちゃんも好き……ふゆも大好きだよ、お兄ちゃん。お兄ちゃんとしても、それ以上でも⋯⋯お兄ちゃんといる時が、私の一番の幸せだよ」
☆
次の日、すでに起きていた冬華にほっぺをつんつんされながら起きて、朝ごはんを食べて部活に行って、野球を頑張って……そんなこんなでいつものフリーな時間、今日も朱莉の部屋の前。
「なあ、朱莉! 俺今日もいっぱい打ってさ、朱莉にも見てほしかったぜ!」
「この前新しいマンガ買ってな! めっちゃ面白くて朱莉と読みたいんだよ! 一緒に読まないか?」
いつものように朱莉にずっと話しかけるけど、でも反応はやっぱりなくて。
……冬華に言われた通りなのかな?
やっぱり俺の気持ちを朱莉にしっかり……うん、そうだ! それしかない!
「ごめん、強がってた……朱莉、俺もう限界だよ。そろそろ朱莉に会いたいよ、顔が見たいよ恋しいよ……朱莉はどう思ってるかわかんないけど、俺はもう朱莉がいないと……朱莉がいないと……」
「よ、よう優也久しぶりだな!」
「……!? あ、朱莉……朱莉?」
しっかり朱莉に自分の気持ちを伝えようと、意を決して本音を話していると聞きなれた大好きな声が聞こえる。
顔をあげると、そこにいたのは朱莉で……でもそのTシャツ一枚の姿はいつもの朱莉とは違う風に見えて。
「ごめん、エロゲハマって! その……濃厚で、お、おおおなにーが捗った!」
「おな……あ、朱莉!? なんてこと言うんだ!?」
俺の知ってる朱莉はそんな事言わなかったよ!?
おな……なんてそんな事……あ、朱莉? どうしちゃったの、何々?
「ずっとこんなんだよ、私は……そ、そーい!」
「ちょわっ!? ぱ、ぱ……何してるの朱莉!? 早く隠してズボンは!?」
なんでパンツだけなんだよ、なんでズボン履いてないんだよ、なんで俺に……ま、まさか、俺のせいで、俺の……!
「履いてない、オナニーに邪魔だから! それに私がパンツ履いてなくても何も思わないだろ?」
「思うよ、早く隠して! そんなの俺以外にしちゃダメだよ!」
「……取りあえず、部屋入れよ優也! 今日はあの子を攻略するぞ~! エロゲするから優也はマンガ読んどいて! アハハハハハ!!! 今日もお、おなにーがはかどる!」
「……あ、朱莉? 本当にどうしたの?」
「優也、部屋入んなよ! 早く入って勝手にマンガ読んでなよ!!!」
「……あ、朱莉? 朱莉? 朱莉……朱莉……ごめん、俺のせいで……俺のせいで……!」
……しばらくぶりに会った幼馴染の姿は昔とは違って、俺の思い出の中の朱莉とは全然違って。
凄く下品で、エロゲをずっとしてて、俺の前でも関係なくし始めて、パンツ見せてきて……絶対に俺のせいだ。
俺がエロゲなんて隠してたから、俺がエロゲなんて持ってたから……そのせいで朱莉はこんな風に、俺のせいで、俺のせいで……!!!
性知識なんて全然ないし、そう言う事もしてこなかったし……だからこういう刺激的なものが自然で、楽しくて……俺のせいで朱莉がこういう世界に呑み込まれて、変わっちゃった。
俺のせいで、俺のせいで朱莉はこんな風に……やっぱり俺の責任だから。俺が朱莉を何とかしないと……また一緒に学校に行くために。
☆
それからしばらくたって、俺を取り巻く環境もいろいろ変わって。
「ごめん、優ちゃん……これからは距離置こ? 私、その……彼氏、いるし。優ちゃんと勘違いされるのとか、本当に嫌だし……だからごめん! ばいばい、優ちゃん……ごめん、ばいばい」
「お兄、私彼氏できたから。だから、その……あまり近づかないで、べたべたしないで、よね……もちろん、咲綾とも」
仲の良かった友人や妹は俺から離れてしまって、あまり関わりもなくなって。
「朱莉! 今日も昼からエロゲか! またオナニー三昧で……ちゃんとしろよ、何考えてんだよ朱莉!!!」
「……だってぇ、優也こういう女の子好きでしょ? ほら、パンツあげる。脱ぎたてほやほや、美少女オナニーパンツ」
「こんなもんいるか! 朱莉、お前はもっと常識をだな!!! ホントお前みたいなやつは……もう!!!」
……いつの間にか大切で、守ってあげたいなんて思ってた幼馴染も嫌悪の対象というか会いたくない存在というか……まだ大切とか守ってあげたいとか一緒に学校に行きたいとか言う感情も残ってるけど、でも朱莉の事を嫌いになりかけていて。
ほとんど義務感で、俺のせいと言う義務感で朱莉の部屋に毎日向かう日々だった。
色々気持ちはあったけど、でも……朱莉より紬より……もっと大切な女の子も出来かけていた。
朱莉は大切な幼馴染だけど、その存在は少し薄れかけていた。
「ヤダ、優也嫌いになっちゃヤダ、あの時みたいに……私の事、捨てないで。私の事嫌いとか邪魔とか……あの時みたいに嫌いになっちゃヤダ、私から離れちゃヤダ……ヤダよ優也……私の事、いらないって言わないで。嫌いって言わないで……ヤダよ、優也……ヤダ……」
「……朱莉?」
……でも胸の中でなく幼馴染は。
俺の胸で泣きじゃくる幼馴染はあの時みたいで、あの日の朱莉のようで……もう一度俺は記憶のカギを探し始める。
★★★
過去編終わり、長い!
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