おまけ+かばんのぱんつ

《少しだけ前の話+冬華視点》


「あのね、豊君! あのね、私ね、今日学校で、それでねその後お兄と一緒にカラオケして、それでそれで……」


「ふふっ、そっかそっか。冬華が楽しそうで良かった。お兄さん……優也君とずっとデートしたい、また仲良くしたい、って言ってたもんね、冬華は。良かったね、冬華」

 夜、約束通り豊君と電話して、いつも通り私がマシンガンで話して豊君がそれを聞いてくれて、ニコニコ楽しそうに返事してくれて。


「うん、本当に良かった……でも豊君がデートしてくれたらもっと良かったんだけど。豊君があんなこと言わないでいつも通り私とデートしてくれたらよかったんだけど!」


「あはは、それは……ごめん」

 そう少し責めたように言うと返ってくるのはすごくしょんぼりした小さな声。

 そんなに怒ってないし、むしろからかったつもりなのに……お兄よりちょっと気が弱いよね、豊君は。でもそういう所も好き。


「大丈夫だよ、もう怒ってない! 豊君が本当に私の事好き、ってわかったからね……ところで豊君! 豊君の話も聞かせてよ、いつも私ばっかり話して申し訳ないし、それに豊君が普段どんな学校生活とかしてるかとか気になるし!」


「ふふっ、僕は良いよ。楽しそうな冬華の話聞くのが好きだからさ。だからもっと冬華の話聞かせてよ。もっともっと冬華の楽しい話聞かせてほしい」


「そう言ってくれるのは嬉しいけど、でも豊君の話も聞きたい! 私ももっと豊君の事知りたいもん!!!」


「……そこまで言うなら話してあげるよ、冬華。それじゃあね、僕はね、今日ね……」


「うん! うんうん!」

 しょうがないな、という風に少し照れくさそうに笑いながら、でもどこか嬉しそうに自分の話をしてくれる豊君の話を噛みしめるようにうんうん聞く。

 普段は全然話してくれないからやっぱりなんか嬉しい!


「……それでね、冬華、それで……」


「うん、うん!!!」

 今日も楽しい夜になりそうだ……やっぱり豊君の事、お兄と同じくらい大好き。



「……冬華? 大丈夫、冬華?」


「……大丈夫だよ、豊君……やっぱり私豊君の事大好きだって」


「それは優也君とどっちが上?」


「……ナイショ」



 ☆


《視点戻る+少し前の話》


「ふふふっ、優也様。日和は今幸せです……優也様に包まれて」

 ふんわり透き通るような、でも耳をもちもち刺激するような声がふわっと頭の中を駆け巡る。聞いていると力が抜けるような、もにゅもにゅするようなそんな声。


「……日和変な言い方しないでよ。電話中でしょ、今、なんかその言い方だと……その、ねえ」

 ……いや、確かにその感覚わかるけど!

 日和の声も電話越しに聞くともっとふわふわするというか、天然ASMRというか、もちもちで耳を全体的に刺激するというか、すごく心地いいというか……わかるけどその言い方すごいえっち!


「でも優也様の声をお電話で聞きますと、その……普段より密着感があると言いますか、普段より近くで声を感じると言いますか……だから、優也様に包まれてるみたいで幸せなんです。優也様が私の事ぎゅーってして、耳元でふわふわと熱く囁いてくれて、そのまま二人でとろとろに……そのように感じるんです。だから今、すごく幸せですわ」


「……言いたいことは分かるけど……そんな直接言われるとやっぱり……」

 やっぱり日和にそう言う事は言われ慣れているとは言え、なんだか顔が見えないと逆に緊張してしまう。


 ここ最近―というか月曜日のパンツの天ぷらの事件の日から色々あって毎日夜に日和と電話している。

 最初は「謝罪がしたい」という事で数分で終わる予定だったけど、でも楽しくなって心地よく気持ちよくなって、気づいたら数時間ぶっ通しで電話を続けていて、その次の日もずっと電話をして、今日も電話して。


 癖になったようにここ3日間一日4時間以上電話を続けていて……だって、日和の声さっきも言ったけどとろんと可愛い天然ASMRで、直接聞くより電話で少し遠い方が魅力的というか、なんかすごいというか……正直に言うとメロっちゃいました! 

 日和の声というか魅力というか……そう言うのにやられて、すごく甘やかして、でもからかって、ふわふわして……そう言う事すごくしたくなりました! 多分行動にも結構出てたと思う! なんかすごく日和と甘くラブラブしてた気がする!


 ……その、もともと日和の事はちょっと怖いだけで嫌いじゃないし、むしろ色々良くしてくれるしかなり好きだったけど、この電話でさらに好きになったというか、ちゃんと堕ちちゃったと言うか、やっぱり日和は可愛いし、俺の事ずっと好きって言ってくれるし優しいし、話してて楽しいし趣味も会うし、少しえっちだけどそこも可愛いし、それにそれに……なんか今そんな感じ! 正直好きです、日和の事やっぱり大好きです!


 でも日和の正体がわかるまでは、良くしてくれる理由はわかるまでは、って決めた……でも、今ちゃんと告白した方が……ああ、どうしよう! ホントどうするのが正解なんだろう!?


「えへへ、何度でも言いますわ……優也様とのお電話すごく好きです。優也様の事も、好きですが……優也様とのお電話も好きですわ。優也様といつでも一緒にいるみたいで優也様が日和の事ぎゅーって愛してくれてるみたいで、いつもより距離が近い気がして……好きですわ、優也様とのお電話」

 その俺の気持ちを知ってか知らずか、日和はいつものように電話越しでもわかるような熱くて甘い声で耳元で囁くようにそう言ってくる。

 なんかもう……どうしようホント! も、もうその……!


「……そう言う事あんまり言わないでよ。その声で言われるとやっぱり……あと電話じゃなくても、いつでも日和と一緒に居るだろ、俺は!」


「……ん? 優也様?」


「その、電話じゃなくてもいつも日和と一緒に居るというか、その別に電話しなくても日和の事、その……ああ、やっぱなし! やっぱりなし! もう遅いから電話切るね、日和も早く寝なよ! さっきくしゃみもしてたし、風邪ひいちゃダメだよ!」


「え、その、優也様? えっと、そのさっきのお話は……日和は優也様が……」

 何か言いかけていた日和だったけど、恥ずかしさとかそう言うのがすごく勝ってしまったので強引に少しだけ心配しながら電話を切る。


 日和相手だと直接顔見て話したり、そう言う事言うのは何とかできるかもだけど、でも電話だと慣れたないからかすごく緊張して、その……やっぱり無理だ、今言うのはすごく恥ずかしいし、しんどい!!!


 やっぱり告白とか、好きな気持ちは直接伝えないと、いやでも日和には謎が……で、でも昔みたいに後悔はしたくない! うだうだして、それで好きな人が他の人に……その時みたいな後悔はしたくないから! 伝えられるときに伝えないとダメだから! 


 だからその、やっぱりちゃんと告白しないと……でも明日とかはまだ早いかな? う、うんまだ早いよね……だから切り替え、切り替え! 明日も普通に日和と接して、というか対面だと日和とは普通に接せれるからいつものように……取りあえず、頑張ります!



「……優也様、私はいつでも待ってますよ」


「優也様は私の運命の人ですから……ずっと前から大好きで、いつもあなたの事を想ってましたから、ずっと好きでしたから……だから優也様も私の事、好きになってくださったならすごく嬉しいです」


「だからずっと待ってますわ優也様……まゆゆ様、と呼んだほうがよろしいですか?」



 ☆


 次の日。

 冬華は「今日は豊君と登校! 二人で朝から登校デート!」と言って朝早くに飛び出して、日和は「優也様ダメですわ……」ととろとろしんどそうな耳への破壊力が凄い声で言ってきたため、俺は一人で教室へ。


「お~、優ちゃん、今日は一人かい? ひよりんは休みだもんね~、寂しいの~優ちゃん!」

 少し寂しい思いをしながらとことこ歩いていると、聞きなじみのある声とともにほっぺをぐんとされる。


「……なんだよ、長岡紬。別に寂しいとか思ってないし」


「そうだよね、私もいるもんね~! それじゃあ今日は一緒に教室に行きましょ~、腐れ縁のお情け、という奴ですな~!」

 そう言った長岡紬はギュッと俺に腕を絡めようと近づいてきて……おいおい!


「やめろ、長岡紬! お前の彼氏に怒られる!」


「えへへ~、この学校にはいないよ~? だから良いじゃん!」


「良くない、それに他にも……」


「お、優也なんだ朝から浮気か? 長岡さんに乗り換えたのか?」


「……こう言う事言われるし!」

 通りすがりの友達からそう言われたのでキッと長岡紬を睨む。

 だから嫌なんだよ、その……特に長岡紬とはそう言うの嫌だから!


「も~、しょうがないな~! でも教室までは一緒に行ってくれるよね~?」


「まあそれくらいなら……変なことすんなよ?」


「しない、しない……私は常に優ちゃんの応援してるんだよ? 優ちゃんの事ずっと応援してたんだよ?」


「……なんだよ、それ?」

 少し寂しそうに口を鳴らしながら、そう言う長岡紬に警戒をしながらも、でも子田わる理由もないので一緒に教室に向かう。


「おーい、今日は長岡さんかとっかえひっかえか?」

 教室に着くと色々な友達にそんなことを言われて……長岡紬はそんなんじゃないです! 今は絶対違います!


「まあまあ、そんな事言わずに……ところで昨日言ってたあの本、持ってきてくれた?」


「まあまあじゃなくて……あ、持ってきたぞ。ちょっと待ってろ」

 和大にそう言われたのでカバンの中を漁るけど、うまく取れないし、ものが多くて……ああ、もうめんどくさい、ひっくり返そう!


「そーれ……!?」

 そう思ってカバンを自分の机の上にひっくり返す。

 ボーンと強い衝撃とともに出てくるお目当ての本、そして「朱莉」と名前が書いてある純白のパンツ……あ、え……あ!? ど、どう言う事……どう言う事!?


「おいおい、ずいぶん荒っぽい……パンツ!? 何してんだお前!?」


「え、パンツ……黛君ってそう言う……」


「え、あ、ちょ……誤解だ! 誤解だ!」





「……優也が悪いんだから……優也が全部悪いんだから」


「……えへへ、優也の匂い……ううん、ダメ。今は怒ってるんだ、優也に怒ってるもん……ごめんなさい、怒ってないですだから嫌いにならないで優也……で、でも優也には会いたいし、私に会いに来てくれないの嫌だから……」


「……こうすれば絶対に会いに来てくれるよね? 私の事本当に嫌いじゃなければ会いに来てくれるよね……優也にちゃんと会えるよね?」


「……それに優也はこういう女の子の方が好きって言ってたし、昔みたいな私は嫌いって言ってたし……だから優也は絶対に会いに来てくれる。こうすれば優也は私に会いに来てくれる……優也に会える!!!」



 ★★★

 あと5話で一旦完結する予定です。

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