第27話 さくさくとろとろアップルパイ!!!

「朱莉~、お部屋入るわよ? 朱莉~?」


「んっ、あっ、んんっ……ゆうや、ゆうやぁ……あむっ、んむっ……」


「……寝ながらオナニーしてるよ、この子。大事なところ丸出しで、優也君のTシャツの首元噛みながら、優也君の名前呼んで……どんだけえっちなんだい、私の娘は」


「あんっ、ゆうや、ゆうや……あむっ、んっ、ああっ、んんっ……んんや、んんやっ……あっ……」


「全く……寝るなら電気消して寝なさい。それにオナニーするならちゃんと部屋のカギ閉めて、起きてるときに……寝ながらなんかしたら風邪ひくわよ」


「んんっ、ん~っ……あっ、あっ……ゆうや、もっと、ゆうやぁ……好き、大好き……ゆうや、ゆうやぁ……ずっと、一緒……んっ、あっ……」


「……ホント優也君の事大好きね、朱莉は。取りあえずいい夢みなよ、朱莉」



 ☆


「それじゃありんご良い感じに切れたね……うふふっ、藤沢さんウサギりんご作ってるね、可愛い! まあ食べやすいようにぐしゃぐしゃにされる運命なんだけど!」

 猫の手とかセクハラ発言とか色々あったけど、でもいい感じにりんごがきれたところで、先生が人の心がないサイコパスみたいな発言。


「え……ウサギさん……せっかく作ったのにですか?」

 ほら、日和困ってますよ、キョトンと少し泣きそうな顔で可愛い声で鳴いてますよ……まあ、アップルパイにはうさぎさんりんごは流石に使えないとは思うけど。


「それが運命なの、悲しいかもだけど藤沢さん我慢してね……それじゃあ今度はこの耐熱皿に入れて、レンジで3分加熱します! とその前に砂糖、バター、レモン汁! この3種の神器をりんごにかけます」


「ううっ、うさぎさんサヨナラです……って砂糖かけるんですか? りんごだけでも十分に甘いように思いますが。このりんご食べた時蜜がとろとろたっぷりでほっぺが蕩けそうな甘さでしたよ?」


「ちっちっちっ、それでも甘さが足りないのだよ、アップル界隈でわね! だから砂糖を入れてもっとトロトロ甘くするの。あとレンジを使えばフライパンいらずで作れるからここもお得だね!」


「な、なるほど! 勉強になります、先生!」

 そう言って可愛いエプロンの胸ポケットからメモ帳を取り出し、俺の方をチラチラみながら何かをメモメモ。

 フライパン使わないで済むのは洗い物少なくなって嬉しいね、確かに。


「うんうん、それじゃありんごをレンジでチン!」


「はい、りんごさんにはこのまま温まってもらいましょう……先生、次は何をすればよいでしょうか?」


「このままレンジを待ってるのももったいないし、次はカスタード作りだよ!」

 相変わらず地獄の閻魔様みたいな物言いをする日和に、先生が取り出したのは卵と砂糖、後でっかいボウル。


「カストードと言えば大判焼きが好きですわ。優也様は大判焼きはあんこかカスタード、どちらがお好みですか?」


「うん、俺もカスタードが好きだけど……あれって今川焼きじゃない? 俺は昔から今川焼きって呼んでるんだけど?」


「優也様と好みが一緒なのは嬉しいですが、変なところで別れてしまいました。私は昔から大判焼き派ですわ、今川焼きはあまり聞きませんわ、ごめんなさい優也様」

 そう言ってぺこりと頭を下げる日和。

 いや、謝ることではないんだけど……って言うかあれって地域によって名前代わるんだっけ? 確かおじいちゃんは回転焼きって言ってたような気がする。


「先生の地域では太鼓饅頭って呼んでたんだけど、この話は長くなりそうだからここで終わり! 取りあえずそのあまあまカスタード! それを今からつくります!」


「なんか追い込みで突っ込んでくるダービー馬、って感じしますよね、カスタードって。全然甘くはないですけど」


「日和はうんたん楽器が思い浮かびますわ。あの楽器はあまあまです」


「それはカスケード、カスタネット……ってもう! 黛君も藤沢さんもふざけないで、早く作るよ!」


『はーい』

 少しぷりぷりした声でそう言われたのでふざけるのをやめてカスタードに集中。

 しかし先生ホント守備範囲広いな、カスケードもわかるのか。


「まずは卵黄をボウルに入れるんだけど……藤沢さんこれ出来る? 卵黄と卵白べっこに出来る?」


「任せてください、先生。そして見ててください、優也様……んしょ、よいしょ……よし、キレイに出来ました! 優也様、キレイに出来ましたわ!」


「おお、上手! ちゃんと別れてるね! 流石日和上手、上手!」

 左に卵黄、右に卵白入りの殻を持つ日和がむふふんと嬉しそうに、褒めてほしそうなキラキラおめめで俺の方を見てたのでパチパチちゃんと褒める。

 結構失敗するからね、これ。だから一発成功は本当にすごい!


「えへへ、ありがとうございます優也様……えへへ、優也様もっと褒めてくれてもいいんですよ? 優也様にならどれほど褒められても私は褒められ足りませんわ……その昨日の夜に耳元で日和だけに……」

 俺の言葉に顔をふにゃふにゃさせた日和がそう言って俺の方へゆるゆる熱っぽく歩いてきて……ってヤバイ、落ちちゃう落ちちゃう!


「本当にすごいよ、日和は! でも今はカスタードに集中だよ、せっかく分けたのにこぼしちゃっても大変だからね!」


「……やっぱり優也様はすこしいけずです、でも今回は正論ですわ……おいしょ。先生、この後はどうすればよろしいでしょうか? この後は何を?」


「ふふっ、仲良しでいいわね、二人とも! この後はここに砂糖をどばーっと入れて、この頭につけてらふにゃふにゃ力が抜けそうなやつでくるくる混ぜる! これで白っぽくなるまでくるくる混ぜるの!」


「な、なるほど。これが白っぽくなるまでは結構時間がかかりそうです。優也様、日和頑張りますね」


「俺がやろうか? 結構力仕事だと思うんだけど」


「いえ、大丈夫ですわ。私がこれくらいやります、今回は優也様に喜んでもらうための料理ですから……でも、その頑張れは欲しいです。優也様の頑張れ、日和に欲しいですわ」

 くるくるとボウルの中身を混ぜながら、少し俯き加減でいじらしくそう言う……もう、そんなのいくらでもあげるよ!


「現場れ日和! 頑張れ、頑張れ!」


「えへへ、優也様……その、耳元でも良いですか? 優也様の頑張れ、耳元で直接、熱く聴きたいのです……昨日の夜みたいに……ダメ、ですか?」


「ふふっ、ダメなわけなよ。それじゃあちょっと……頑張れ、日和」


「んん~っ! んっ、ひあっ、んんっ……ハァハァ、優也様……えへへ、ありがとうございます、優也様。これでまた一段と頑張れますわ……そいや、そいや」

 ふにゃふにゃ嬉しそうに身体をくねらせながら、とろとろな笑顔でくるくるとボウルの中身をそいやそいやと気合を込めて回す。

 そんな顔、料理中にしちゃダメ、なんて思っているとチン! と軽快な音が鳴る。


「あ、レンジなったね! それじゃあ先生と黛君で見てるから藤沢さんはそっちお願いね!」


「ひゃい、わかりました……そいや、そいや」

 そいやそいやと頑張る日和に背を向けて、俺たちはレンジの方へ。


「お~、うさぎさんはもう死んでるね!」


「先生、そう言う言い方やめてください」

 レンジをあけると、りんごと砂糖の焼けたいい匂いと崩れた少し崩れたうさぎさん。


「よし、藤沢さんが気づいてないうちにりんごを崩そう。食べやすい大きさに崩そう」


「……そうですね、今の内です。それそれ、それそれ」

 先生と一緒にぷつぷつとりんごを食べやすい大きさに潰す。

 柔らくなっていって、すごくつぶしやすくて……ごめん、うさぎさん。でもこれが食物連鎖!


「先生、白っぽくなりました。白濁くちゅくちゅしてきました」

 そんな作業をしていると、日和がなんだかえっちな言葉でこっちに合図を送ってくる。お口クチュクチュモンダミン。


「よし、次は小麦粉をぱっぱだね! 小麦粉入れて少し混ぜて、牛乳入れてまた混ぜる! そしてレンジでチンしてまた混ぜてレンジでチンしてまた混ぜて。そして最後にレンジでチンしてバターとバニラエッセンスを入れてまた混ぜる!」


「……なんだかややこしいように聞こえますが意外と単純ですわ。まぜまぜしてチンすればよろしいのですね?」


「うん、まあそう言う事! でも心配だから私が見とくね、時間とかも見なきゃだし……そのスキに黛君は一つのブラジャーに網目状に切り込み入れといて!」


「……下着って言わないで、って先生が言いましたよね? まあいいですけど、それじゃあやっときますね」

 先生に言われた通り冷蔵庫からブラジャーもといパイシートを取り出して、包丁でザクザク網目の模様を入れる。


 意外と作業が繊細、でも結構楽しい、なんだかお裁縫してる気分!

 猫の手なんてここでは気にしない、今はフリースタイルお料理だ!



「えへへ、優也様も頑張っておられますね。日和も負けてられませんわ」


「ふふっ、そうだね……と言っても、もうカスタード急冷したし、後はこのパイシートに塗りたくって、その上にこのりんごの亡骸をのせるだけだけどね?」


「……うさぎさんは死んでしまったのですね。合掌です……よく頑張りましたわ、うさぎさん」


「……大丈夫よ、藤沢さん。うさぎさんは月にいるから……お空を見上げればいつでも会える!」


「先生……!」

 ……そしてこの二人は何してるんだろう?

 一応4枚パイシートあったから2枚目にも切れ込み入れてたけどなんか寸劇始まってたような……まあ俺は俺の責務を全うするだけだ。



 ☆


 チーン

「お、この音は!」


「ようやくですわ。ようやくできましたわ!」


「だね! やっぱり過熱は時間かかるね……まあずっとトランプしてたけど」

 チーンとレンジよりは少し重々しいオーブンの音にブラックジャックをしていた手を止めて、オーブン手袋をして音のした方へ向かう。


「おー! おー!!! 先生、早く……」


「待って、これは熱いから先生がとる! よいしょ、よいしょ……そーれ!」


『おー!!!』

 オーブンをあけるとりんごとシナモンの甘い香りに連れられて、こんがりと美味しそうに焼けたアップルパイがお出迎え……大成功じゃん!!!


「す、すごいですわ……! なんだか神々しく見えますわ、優也様!」


「うん、色も相まってすごく美味しそう! こんがり綺麗に焼き目がついて形もきれいに……この前パンツの天ぷら作ったとは思えない出来だ!」


「もう、黛君パンツの話は禁止! でも今日は本当に上手くいった、先生史上でも別格の出来かも! それじゃあ早速食べるよ、アップルパイは熱いうちに食べるのが吉! それが一番美味しい!」


「そうですね! 早速食べましょう!」


「優也様、私が切り分けます。私が皆さんの分を切り分けます」

 俺の言葉にてくてくと危なっかしく包丁を持った日和がこっちにやってきて……ダメダメ、その持ち方ワンピースでしか見ないから! めっちゃ危ない奴だから!


「あ、すみません優也様つい……そ、それでは切らせていただきます……うわっ」


『おー……!』

 日和が包丁を入れると、ザクっという食欲を刺激する音ともにさらにりんごの香りが家庭科室の中にふわっと広がる。それに続いて甘くて幸せな香りに香ばしい香り……ああ、もう待ちきれない早く食べたい!!!


「先生、早く!」


「お皿もフォークも飲み物も全部用意してるよ! それじゃあみんな手を合わせて……」


『いただきまーす!!!』

 三人合わせた大きな声が、甘い幸せな香りで溢れる家庭科室に響く。

 さあ、今度こそ美味しい物食べるぞ!!!



 ☆


「ん~、美味しい! 最高傑作!」


「美味しいですわ! もうちょっと甘ったるいかと思いましたが、カスタードが甘さ控えめで、それでりんごの甘さを引き立てて、それに生地もサクサクで、出もふわふわ甘くて……最高ですわ! 美味しいですわ!」

 自画自賛した先生に続いて、アップルパイを頬張る日和が緩んだほっぺをペタッと抑えながら、幸せそうにとろとろ笑顔でそう言う……もう、日和。人に見せたくない顔してるよ、今!


「むー、そう言う優也様こそお顔とろとろですわ! 美味しそうに蕩けてますわ!」


「え~、本当? 確かに美味しいけどそんなにはなってないでしょ!」


「ほんとです、なってますわ……んっ」

 緩んだ顔でぴゅいっと手鏡を取り出して俺の方に向ける。

 そこに写っていたのは確かにほっぺの緩んだ俺の顔。


「あ、ホントだ。ゆるゆるだ」


「そうですわ、優也様もゆるゆる幸せそうですわ……もっと幸せになれる方法がありますけど、どうされますか?」


「ん? もっと?」


「はい、もっと、です、多分、ですけど……あーん」

 恥ずかしそうに顔を染めながら、ぽつぽつ言葉を並べた日和がぷすっと自分のフォークにパイを刺して、俺の方に向けてくる。


「日和?」


「あ、あーんですわ……これするともっと幸せって誰かが言ってましたわ……だからあーんですわ」


「……それじゃあお言葉に甘えて。いただきます、日和」


「はい、存分に味わってください……あーん……んっ」

 顔を少し逸らしながら、でも目だけは俺の方を見て口にアップルパイをパクっと入れてくる。


「ど、どうですか、優也様……お、美味しいですか?」

 なんだかさっきまでより甘く感じて、さくさくのパイもふわふわ柔らかく感じて……うん、すごく美味しい! 日和のアップルパイすごく美味しい!


「えへへ、優也様……えへへ」


「ふふっ、すごく美味しいよ……あ、そうだお返し! ほら日和、あーん」


「えへへ、優也様、嬉しいです……え、私ですか!? わ、私は良いですわ、優也様にそんなご迷惑を……」


「迷惑なんかじゃない、むしろしたいくらい! それにお礼だし……ほら、お口あーんして、日和」

 日和のお礼にと、俺もパイを刺して口の近くにもっていく。


「ゆ、優也様……ううっ、恥ずかしいですわ……は、早くお願いします」


「う~ん、どうしようかな?」


「ゆ、優也様、いじわるしないでください……は、早く日和に入れてください……お願いします、優也様」


「ふふっ、ごめん。ほら、あーん」


「……あーん……mgmg」

 そう言いながら羞恥に震えるように真っ赤で小さな歯並びのいい口を可愛く広げる日和にアップルパイを入れる。


「どうですか、お味は?」


「……味なんてわかんないですわ……でもいつもより幸せな味がしますわ。えへへ、幸せですわ、優也様」

 口をもごもごと動かしながら、緩んだ顔をさらに緩めた日和が、とろとろの声で幸せそうに笑った。



 ……俺だって今幸せだよ。だから日和、もしよければ今晩も……

「……ホント、仲いいよね二人とも。ちょっと先生妬いちゃうかも!」


『……あ、先生いたんですね!』


「いたんですよ、じゃないよ、ずっといた! まあでも仲良しなのは良いことだね……ずっとそのまま仲良くいてよ、二人とも」


「もちろんですわ……えへへ、優也様、その……今夜もよろしければ優也様と……」


「うん、もちろん! 俺は大歓迎だよ、日和!」


「……やっぱり大好きです……幸せですわ、優也様」



 ☆


「……あれ、電気ついてない。珍しいな、外出か? 寝る時も電気つけてるのに」

 アップルパイの残りの分配と片づけをして、日和と夜の約束をして帰り道。


 朱莉の家に久しぶりに寄ろうとしたら珍しく電気が消えていた……しかも車もないし、こりゃ外出かな、今日も行くのはやめておこう。


「おーい、お兄ちゃんが帰ったぞ~!」


「あ、お兄お帰り!!! ちょっと遅かった!!! 遅いぞお兄、寂しくするな!!!」


「あ、お兄さんお帰りなさい……わ、私も少し寂しかったです」

 そう言うわけで家に戻ると二人の妹(仮)、冬華と咲綾ちゃんが出迎えてくれる。

 遅くなったのは悪いけどでも今日はお土産があるから我慢しなされ!


「何々~、お土産って……っておー! これはアップルパイ、お兄が作ったの!?」


「美味しそうです!!!」

 俺のお土産を見た二人の顔がキラキラ輝く。

 まあ見た目もこだわってるからね、装飾担当俺だし!


「まあ、先生と友達とね。ほら、お皿とか準備するからお食べお食べ」


『うん、食べる!』

 元気の良い二人の顔に安心しながら、俺はジュースの準備をすることにした。

 咲綾ちゃんは牛乳で、冬華はコーラだな!



「どう、咲綾ちゃん美味しい?」


「はい、美味しいです……! お兄さんのアップルパイ、すごく美味しいです……!」


「むーまた咲綾! お兄、私も!」


「はいはい、わかってるって。冬華はどうだった?」


「もちろん美味しいに決まってる! だってお兄が作ったんだもん!」



 ★★★

 ワンピース読んでたら過去一話が長くなりました。

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