第11話 日和ちゃんはめろめろしたい

「ふ、藤沢さん?」


「うふふっ、優也様、待ちきれなくていっちゃいました……昨日はお楽しみでしたか、優也様? 今日は私とお楽しみ、しましょうね?」

 背中にボスっと柔らかい衝撃を受けて振り向くと、笑顔の藤沢さんが俺の腰にギュッと抱き着いていて。


 何やら不穏なことを口走りながら、絡めるように俺の腰に身体を押し当てて……ちょ、藤沢さんここ廊下、みんな見てるよ注目浴びてるよ!?


「そんなの関係ありませんわ、私と優也様の運命の前ではそんな事障害になりません。優也様、私昨日からずっとお待ちしてました……優也様の事を考えるととろとろ蕩けそうで、ケーキみたいにふわふわ甘くなって、切なくて……優也様の姿を一目見て、優也様に触れられて私はもう、もう……優也様、私と一緒に……」


「ちょ、藤沢さん落ち着いて! まだ朝だし、人もいっぱいいるし! それに俺まだ何が何だか呑み込めてないし、その藤沢さん、もうちょっと落ち着いた気持ちで、場所でしっかり話して欲しいな!」


「……つーん」

 くるっと回転したお腹に再び身体を絡めながら、一人興奮した様に顔を上気させて俺の方を見つめていた藤沢さんが、なぜか俺の言葉を聞いてつーん、とそっぽを向く。

 ……なんかわかんないけど、それなら俺の腰から離れてくれたら嬉しいんだけど。


「離れませんわ、日和は優也様と一緒になりますから……そうではありません、なぜ日和と呼んでくれないのですか……優也様は昨日私で楽しんでいただけたんですよね? 私の事を考えて、私でとろとろめろめろで空っぽになるまで……優也様はいけずですわ、酷いですわ優也様……今も少し固くなっておられますのに」


「……な、何の話?」


「とぼけないでください、やですわ優也様。昨日私が差し上げたではないですか……私は身も心も優也様に捧げるつもりで差し上げましたわ。優也様にめろめろになっていただき、日和を美味しくいただいてもらうために……それを知らんぷりするなんて優也様、それはいけませんわ。流石の日和もぷんぷんです」

 ぷんすかほっぺをぷくーと膨らませて、顔を戻して俺の方を可愛く睨んでそう言う藤沢さん。


「……えっと、その……」


「……こう言うのは女の子に言わしちゃダメですわ優也様。昨日差し上げましたわ、優也様に……私のパンツ。脱ぎたてほやほやでほかほかで色んなものを吸い込んだ、日和の熱々なパンツを優也様に差し上げましたわ……楽しんで、とろとろめろめろでいっぱいされましたでしょ、優也様?」

 ……やっぱり今カバンに入ってるパンツは藤沢さんのだったのか!


 藤沢さん普段あんな派手な……じゃなくてじゃなくて!

 楽しんでいっぱいしたのは俺じゃなくて幼馴染の……でもなくて!


「私は優也様を想うだけでめろめろになって、とろとろになってそのままいっぱいしましたわ……優也様は日和の熱々パンツがいたんですもの。優也様も日和の事を想ってたくさん、していただけましたよね」

 お腹に熱い息を吐きながら、俺の身体をギュッと抱きしめた藤沢さんは顔を埋めるようにそう言って。

 通りゆく生徒が振り向くくらいに通る声でそう言って。


「ふ、藤沢さん、そのことなんだけど……」


「……まだ呼んでくださらないですか、優也様は……パンツでは満足されなかったんですか? 日和のパンツでは満足できませんでしたか?」


「いや、そうじゃなくて……」


「大丈夫です、優也様……私はもともとそのつもりですから。今日は優也様と一緒に、二人で一緒に……日和と優也様の二人で一緒に楽しく、気持ちよくなる日ですから……だから安心してください、優也様、日和が優也様に満足していただけるように頑張りますから……だから優也様、日和の事美味しく召し上がって……」


「ちょ、藤沢さんストップ! ストップ藤沢さん……んもう! したくなかったけど!」

 少しトリップしたようなどこか虚ろで、でも嬉しそうな瞳で朝っぱらから堂々と大変な事を言いながらブレザーの下のシャツのボタンに手をかけ始めた藤沢さんを身体からポーンと強引に離して、そのまま熱い手を取ってある場所へ向かう。


 ここでは他の生徒の目線がやばいし、それに先生も来るし!

 こんな廊下で話し合いなんて出来ないよ!


「ゆ、優也様、どどどどうされましたか!? そ、そのいきなり手を握られるのは、その……は、恥ずか、しいです……ゆ、優也様嬉しいですが、急には日和も……」


「……少しだけ我慢して!」

 相変わらず羞恥のポイントがずれまくっている恥ずかしそうな藤沢さんの声を一蹴して、周囲の奇異の視線もかいくぐりながらさっきまでいた家庭科室の前へ。


「あら~、どうしたの黛君に藤沢さん? 手つないじゃって相変わらず仲いいね~、先生ちょっと嫉妬しちゃうかも!」

 ナイスなタイミングで家庭科室から出てきた先生は呑気な楽しそうな声で俺たちを出迎えてくれる。

 タイミングはバッチリですけど、それ今じゃないです、先生もなんだかずれてます!


「あ、あのゆづ……今村先生! 家庭科室、もう使いませんか、もう閉めますか?」


「ふふっ、どうしたのそんなに焦って。家庭科室はもう使わないよ、職員会議もあるから一回閉めようと思ってる! 黛君と藤沢さんも、仲いいのは良いけど早く教室行くんだ……ぐべべっ!?」

 相変わらずのんびりした声でそう言って、家庭科室のカギをくるくる回す。

 そのカギはうまく回りきらずにふわっと跳ねて先生の顔に直撃して……ドジですね、先生は!


「先生、大丈夫ですか!? あと、家庭科室使わないなら少し借りますね!」


「うん、先生は大丈夫だよ、こんなのではへこたれない大人だから……って家庭科室? 何に使うの?」


「えっと、その……大事な話しますから」


「……え?」


「あの、ふじさ「ゆ、優也様と大事な話と大事なことをするんです、わ、私たちの将来に関わる大事な……か、家庭科室が初めてでも悪くないですわ」

 先生を説得しようとしていると、隣でぽかぽか恥ずかし熱くなっていた藤沢さんが、小さな声で援護射撃(?)の言葉を放つ。


 その言葉に先生の頭に浮かぶは大量の困惑の?マーク。

「えええ? え? だだだ大事な話? 大事な事?」


「……はい、大事な話なんです。だから先生、カギ貸してくれませんか?」


「あ、うん、わかった……あ、その……ちゃんとするのよ」

 そうよくわかんないことを言って、俺たちにカギを手渡した先生は職員室の方に戻っていく……なんかごめんなさい、先生。


「……ゆ、優也様、そろそろ手を……」

 心の中で先生に謝っていると隣からまたまた蚊の鳴くような声。

 俺の手をふんわり握った藤沢さんが恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながらそう言っていて……ホント羞恥の基準がわからん。


「あ、ごめん。離すよ。それじゃあ中、入るよ」


「は、はい、お願いします……えへへ、優也様、やっと二人きりになれましたね!」

 手を離して中に入った瞬間、藤沢さんが俺にギュッと抱き着くように飛んできて。


「ちょ、や!?」


「嬉しいですわ、優也様……こんな積極的に、二人きりになれる場所まで……感激です、優也様。私は覚悟も準備も出来ております……改めて、日和の事を美味しく召し上がってください、優也様」

 身体に絡みついた藤沢さんが、熱い息で、甘い声で耳元で囁いた。



 ★★★

 今日は2話投稿する予定です。

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