第8話 引きこもり幼馴染は俺のパンツを履いている

「ゆ、優也優しく……その、私優也が初めてなら嬉し……」


「俺のじゃねえか、俺のパンツじゃねえか!!! なんでお前が俺のパンツ履いてんだよ!?」

 もじもじしながら何かを話していた朱莉に向かって俺は全力で叫ぶ。

 なんで朱莉が俺のパンツ履いてんだよ、Tシャツはまだ良いけどパンツはまずいだろ、おばさんに絶対誤解されるし、ていうかなんで俺のパンツ持ってんだよ!?


「……え、パンツ?」


「そうだよ、それ以外にあるかよ! なんで俺のパンツ履いてんだよ、お前は!」

 キョトンと蕩けたような声を出す朱莉に俺はまたまた全力ツッコミ。

 それ以外に何があるんだよ、まだオナニーで呆けてんのか?


「……確認って、パンツのこと? そ、その……臨戦態勢とかじゃなくて私が優也のパンツ履いてることを知りたかったのか?」


「ああ、そうだよ。お前絶対隠すと思ったから直接確認したんだ……まあ変なとこ触ったのは悪かったけど、今回はお前の方が悪い! なんで俺のパンツ履いてるの、おかしいでしょ、まずいでしょそれは!」

 パンツはやばいよ、それは本当にそう言う事した後みたいになっちゃうから!

 おばさんに履いてるの見つかったら絶対に色々言われるよ、逃げならなくなっちゃうからまずいんだよ、マジで!


「……何だ、そんな事知りたかったのか。私のパンツ事情に興味があっただけか」


「そんな事とは何だ、大事なことだ! こっちの将来に関わるかもしれないんだぞ、大事なことだよ!」


「……私的にはもっと大事な……ばーか、ばーか! 優也のバカ!!!」


「急になんだよ、俺はバカじゃねえ!」


「うるさいうるさい、優也のバカ!!! バカバカバカバカ優也のバカ!!! ホントバカ、優也はバカだ! バカバカバカバーカ!!!」


「……何だよ、急に。今回はお前が悪いんだぞ? お前が俺のTシャツとパンツを盗むからであって……」


「うるさい、私は悪くない優也が悪い! バカバカバーカ優也のバカ!!!」

 怒ったような声で俺に向かってそう罵倒してきて。

 子供みたいにバカバカ連呼して、真っ赤な顔でそう叫んで……何だよ、急にどうしたんだよ?


「わかったよ、もう俺がバカでいいよ。なんで俺のパンツ履いてるか、どうやって手に入れたかだけでも教えてくれ」


「バカバカバカ優也、私の……優也以外のトランクスなんか履けない、お父さんの履くのだって気持ち悪いし。たきなちゃんと千束ちゃんの言う事が本当知りたかったから優也の履いた。副産物だけど……ばーか」


「俺の履くのも気持ち悪いだろ、普通。ていうか副産物? なんじゃそりゃ?」


「この前Tシャツを貰ったときに偶然パンツもついてきた……それに優也の履くのは平気だ、気持ち悪くない。別に優也のなら平気だ、全然大丈夫だ。だって優也のだもん」


「なんで俺のは平気なんだよ、そこは嫌悪感持ってくれ、女の子だろお前も。それにこれも盗ったって、マジで俺のところからどんだけ盗ってんだよ」

 確かに最近パンツも減ってるな、ってちょっと思ってたけど!

 母さんが緩くなったの捨てたのかと思ってたけど朱莉が盗ってなのかよ、何してんだよ!


「良いだろ、別に。私と優也は幼馴染だ、特別な関係なんだ。ちょっとくらい借りたって良いじゃないか、バカ優也。バカバカバカバカバカ優也」


「良くねえよ、普通に盗みだよ。それに男物のパンツは色々誤解されるし……取りあえず返せ。俺のパンツもその緑色のパンツも両方返せ」


「誤解されても……ううん、嫌だ、片方しか返さない。優也はバカだから片方しか返さない、どっちか選べ。どっちが欲しいか選べ」


「何言ってんだよ、両方返せ。俺のカバンに入ってたし、両方俺のみたいなもんだろ? だからわがまま言わずに両方返せ」


「ダメだ、私が両方使ったんだから両方とも私のものだ。私のものだから優也には片方しか返さない、これはもう決定事項だ!」

 少しすねたようにぷいっとそっぽを向いて、そう言う朱莉。

 何たるわがまま、お前のものなわけがないだろ……でもこうなった朱莉は絶対に引かないかな。こういう時の朱莉は意地でも最後まで通すからな、例え理不尽でも。


「わかったよ、それじゃあそっちの緑のパンツだけでいい。俺のパンツはもういいよ、朱莉にやるよ。お前が履いたパンツなんてもう履けないからな」


「……それでいいのか? 本当に私が履いた優也のパンツじゃなくてそっちの美少女パンツの方でいいのか? 私の優也パンツじゃなくていいのか?」


「当たり前だろ、持ち主に返さないといけないんだし。ていうか自分で所有物っていってるじゃん、お前にあげるって俺のパンツは」


「……そうか。それじゃあこっちは返す、こっちのエチエチ美少女パンツは返す。悔しいけど、こっちのパンツは返す」


「ここはありがとうって言っとく。それじゃあ返してください、朱莉さん」


「……んっ!」

 ようやく納得してくれた朱莉から緑色藤沢さんパンツを回収するために、下手に出ながら手を伸ばすと、やっぱり不機嫌そうに唇を尖らせて、ぷいっとパンツをそっぽにやって……おいおい、今度は何だよ!


「やっぱりヤダ、優也に返さない。もう一つ条件飲んでもらわないとこっちの美少女パンツは返さない……その、私の優也パンツならすぐ返すけど。今すぐここで脱いで返すけど」


「そんなにそっちが惜しいかよ、そんなにそれでオナニーしたいのかよ……俺のパンツはもうどうでもいい、何度も言うけど朱莉が履いたならもう履けないし。だから返してよ、そっちのパンツ!」

 性欲に忠実すぎだろ、お前は!

 もっと女の子らしくなってくれよ、そんな男子中学生じゃダメだってよ、俺はまた一緒に学校行きたいのに!


「むー……コラボカフェだ!」


「……コラボカフェ? 急にどうしたよ?」

 俺の苦難を知ってか知らずか、相変わらず拗ねたように口をむぎゅむぎゅさせていた朱莉が強い口調で俺に向かってそう言う。

 コラボカフェ? 何の?


「私の好きなアニメのコラボカフェがこの辺でやってるんだ! それに行ってこい、行ってくると約束してくれたらパンツを返す」


「……自分で行って来いよ、お前の方が時間あるだろ? それに俺がそんな罰ゲーム受ける道理はない」


「私には無理だから言ってるんだ、そんな人の多いところ耐えられないし……そ、それに優也には……彼女がいるんだろ? その子と一緒にで行ってきてくれ!」


「だから彼女じゃないって。それに何のコラボカフェか知らないけど、普通に一人で行けばいいじゃん、カフェくらい。考えてやるから早く返せ」


「そう言うわけには行かないんだ……これを見てくれ」

 そう言ってスッとスマホの画面を見せてくる。

 そこには俺の知らないアニメのコレボの情報と貰えるグッズの条件に「男女ペア」と書いてあって。


「……地獄じゃん、グッズ貰えない人いっぱい出るだろ、これ」


「そうだ、地獄だ……だから優也にお願いしたんだ。優也なら他の女の子誘っていけるだろ? グッズだけ私に渡せばいいから、このパンツの女の子とデートがてら行ってくれば良いじゃないか! このパンツの子とデートがてら行ってこい!」

 徐々に声のボルテージを上げながら、怒ったようにそう言う。

 何度言ったらわかるんだ、こいつは! まだ藤沢さんは彼女じゃない、得体が知れなくて今はちょっと怖い人なんだ! 


「だから彼女じゃないって……だったら朱莉、俺と一緒に来いよ! 朱莉と俺が一緒に行けば解決じゃねえか! 俺とお前でデートすれば完璧だろ!」


「……え?」

 キョトンとした声で朱莉がそう呟く……いや、これはわかるだろ!



 ★★★

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