神の寵愛を受ける巫女
アリアへの恋心を自覚してから、クソみたいな世界が途端に輝いて見えた。アリアの愛する花々すらも愛しく思えた。
しかし、やがて怖くなった。アリアもやがて、誰かと融合したり、分裂したりするのだろうか。そうしたら俺が愛するアリアがアリアでなくなってしまう。
「アリア、いなくならないで」
悪夢を見るたびアリアに縋った。
「我々スピザイアは肉体を捨て、死から解放されました。ですから、いなくなったりしません」
そんなことは知っている。でも、俺は今のアリアが好きだ。
「融合したり分裂したりしたら、アリアはアリアじゃなくなっちゃう」
「分かりました。神様の御心のもとに、アリアは分裂も融合も致しません」
神のために純潔を誓ったスピザイアを、群衆は巫女と呼んだ。
アリアはアリアで居続けてくれる。でも、融合や分裂はスピザイアの本能だ。スピザイアの生き方を奪った俺は神ではなく悪魔なのかもしれない。
後悔に苛まれても、「やっぱり自由にしていいよ」なんて口が裂けても言えない。アリアを失いたくない。
「なあ、アリアに肉体をあげられるっていったらアリアはどう思う?」
俺は全知全能。過去に大罪を犯したスピザイアの魂に神罰を与えたことがある。つまり、スピザイアの命に干渉できる。
「神様が望むのならば」
アリアは巫女として模範的な答えを返す。こんなものは同意ではない。でも、もしアリアにこの手で触れられるならばそれほど幸せなことはないだろう。
俺は倫理と欲望と執着の狭間で常に揺れていた。
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