第22話 体記憶薬を作る

『人間に戻る方法』の本を読みなおした。


でも、それよりも先にみんなに人間であることを話さないと……。

まずは、ビリーに話してみよう。



「ビリー、話したいことがあるんだけど……」

「なに? どうしたんだ?」

「わたし……人間なんです」

「わかってるよ」

「ええっ?」

「最初に来たときに言ってたじゃないか」

「まあ、でも信じてないようだったから」

「あの時は頭を打ったっていってたしな」

「たしかに」

「でも、人間界のことをよく知ってたし本当に人間かもって」

「そうか~」

「一生懸命に戻ろうと探ってたしな」

「うん」

「大丈夫、きっと戻れるよ」

「ありがとう、ビリー」

「ルークたちは気づいているかわからない」

「うん」

「早めに話をしてあげて。心の準備があるだろうから」

「わかりました」


わたしは今日、ルークたちに話をすることにした。


「ビリー、ちょっとルークたちに会ってきます」

「いっておいで」


わたしはルークの家に向かった。

するとちょうどレオンとステラもいた。


「みんな~」

「お~ルナ」

「よかった、みんなに会えて」

「なんだ?」

「みんなに話したいことがあって」

「じゃあ、せっかくだから湖にいかない?」

「そうしよう」


みんなと湖にいった。

木々の隙間から太陽の光がすり抜けて、湖はキラキラと輝いていた。


「みんな……わたし話さないといけないことがあって……」

「なに? どうしたの?」

「わたし……人間なの」

「ええっ? ……なんて」

「えっ?」


なんだこの反応。


「知ってるよ」

「えっ?」

「おれは最初に出会ったときに聞いてたし、家にもいったからな」

「そうだね」


ルークは人間界の家にも一緒にいってくれてたから、うすうすわかっていたようだ。


「ぼくは、図書館にいったときかな~」

「図書館?」

「あの時、ルナは人間界の言葉をよく知っていた」

「そうだったね」

「ぼくも本はよく見るから知っているけど、それ以上に知っていた」

「たしかに」


レオンは図書館くらいから気づいていたようだ。


「わたしは全然気づかなかったけど、この間の図書館で屋根裏いったときに本の題名が気になって帰りにルークとレオンに話をしたの」

「そうだったの」

「そして2人の話で、確実にルナは人間なんだとわかった」

「だまっていて、ごめんね」

「ううん……、話できないよね」

「みんなごめん」


わたしは3人に謝った。


「ルナ! ルナが人間だろうとおれらの仲間だ」

「ルーク!」

「そうだよ、ずっと仲間」

「レオン!」

「ルナがいなくなるのはさみしいけど、ずっと仲間だよ」

「ステラ!」


「「「ルナは探偵団の一員だ」」」


「みんな、ありがとう」

「おれらは無事にルナが、人間に戻れるように手伝うよ」


本当にいい仲間だ。

わたしだって本当はこのまま、こびとでもいいとも思う。

でも、わたしは本来人間だ。

人間界で生きていかなくてはならない。

ここで教えてもらったことを人間界でいかすんだ。


「よし、もどってビリーの手伝いをしよう」


「「「おっけい」」」


――――


ビリーは、薬の配合をしていた。


「ビリー、どんな感じ?」

「大丈夫だよ、順調だよ」

「よかった」


ビリーは本をめくりながら煮たり配合したり、冷やしたりと淡々とやっていた。


「みんなで蓮の実の皮をむいて中身をすりつぶしてくれないか?」

「わかった」


蓮の実はすりつぶし、桑の実やブルーベリーはミキサーのようなものでつぶすらしい。

それぞれ、別々の作業のようだ。

ブロッコリーと栗は煮るらしい。

煮た後は2日ほど冷蔵庫で冷やす。

結構時間がかかる工程である。


すずきは焼く。

身をほぐして小麦と混ぜる。

どんなものができるのだろうか?


結局はすべて混ぜて飲むらしいから、液体であることには違いない。

せめておいしくあってほしい。


「今日できるところは終わった」

「やったー」

「お礼にみんなに夕食をごちそうしよう」


「「「やったー」」」


わたしもお手伝いをした。

テーブルに並んだ料理はとても豪華だった。

すずきの魚も焼かれていた。

材料の残りだろう。

すずきのムニエルだ。


「「「「いただきます」」」」


んっご……ごく……ごくっ……


「おいしい」

「やっばい、うまい」

「ビリーの料理は最高だよ」


みんなすごくおいしそうに食べていた。

わたしも最高の料理に最高の仲間、本当に楽しい食卓になった。


全部食べ終え、みんなは帰っていった。


「「「また、あした」」」


わたしも片づけを終わらせて、ベッドに入った。

このベッドともあと少しでお別れか~

なんか、さみしくなってきた。

あと少し、この生活を精一杯楽しもう。


――――


チュンチュン


よ~し、朝だ。

今日もがんばるぞー


「ビリー、おはよう」

「おはよう、ルナ」

「今日は早いね」

「うん」

「朝食にしよう」

「うん」


わたしは、朝食を食卓に運んだ。

ん~いい香り。

ベーコンエッグにトマトサラダ、ヤサイスープにパン。


「いただきます」

「はい、召し上がれ」


食材にも感謝をして、生きていることにも感謝をしていただきます。


「ビリーの料理はほんとに美味しい」

「いつもそういってくれてうれしいよ」

「いや、ほんとに美味しいんだもん」

「そっか」


食べ終わり、片づけをした。


「ビリー、わたしポスト見てきます」

「ああ、お願い」


わたしは依頼ポストを見にいった。

今日は入っていなかった。


探偵団のお仕事はもうやらないで終わるのかな~


危ないこともあったけど、探偵団のお仕事ができなくなることに寂しさを感じていた。

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