第21話 材料探しー烏骨鶏の卵②

わたしは真剣に茶色の卵を探して、小さめの卵を選んでいた。

隣をみると、小さくて丸い卵をしていた。

ほかのより丸い感じがしたので、この卵に決めてリュックに入れた。


すると、急に人間の会話が聞こえた。


えっ!

やばいっ!

みんなはどこ?!


わたしは卵に隠れた。

隙間から人間がみえた。

人間の足元のにわとりのえさ箱の影に、ステラが震えて隠れているのが見えた。


ステラ!

どうしよう!

見つかっちゃう!


人間がえさ箱をとろうとした。

えさ箱をとったらステラは丸見えだ。

わたしはとっさに、近くの卵を下に落とした。


ピチャ!


「ん? なんだ?」


人間は落ちた卵の近くに歩いてきた。

わたしは他の卵の後ろに隠れた。


「なんで急に卵が落ちたんだ?」


人間は近くの卵を確認するかのように触りだした。


やばいっ!

わたし見つかる!


わたしは、すこしづつ横に移動しながら静かに逃げている。

卵の隙間から、逃げたステラの姿を確認した。

よかったー

ステラ逃げきれたんだー

安心したのもつかのま、隠れる卵がなくなってしまった。


すると、柱に草のつるが引っかかっていた。

しかも下までいけるようになっていた。

わたしはそのつるにつかまり、するするっと下におりた。

そして、隅をはしりながら出口にむかった。


人間に見つかることなく外にでることができた。

が……、そとにはにわとりが待っていた。

ちょうどえさをやる時間だったようで小屋の前で、にわとりたちがまっていた。

これは……やばい!

わたしがえさになっちゃうよ~

思いっきり走って逃げた。

やはりにわとりたちは追いかけてきた。


やー

こないでー


すると、急ににわとりたちが止まって地面をつつきだした。


そのすきにわたしは、草にかくれることができた。

草の影から様子をみてみると、えさを食べているようだ。


「ルナ! 大丈夫か?」

「ルーク!」

「怖かったよー」

「ステラを助けてくれてありがとう」

「えっ? なんで知ってるの?」

「おれもステラが危ないって気づいたんだ。でも遅くて人間がえさ箱を持とうとしていた時だった」

「ああ、あのとき」

「そしたら、ルナが卵を落として人間の気をひいてくれたから急いでステラを連れて隠れた」

「よかったよ」

「でも、そのせいでルナが危険な状態になってしまった」

「ううん……、いいのなんとか逃げれたし」

「レオンとステラがえさをまいたんだ」

「そっか、それでにわとりが追いかけてこなくなったんだね」

「そう。それでルナを迎えにきたんだ」

「ありがとう」

「みんなのところに行こう」

「うん」


わたしはルークとみんなのところに戻った。


「ルナ!」


ステラが泣きながら抱きついてきた。


「わーステラ!」

「ルナ、ありっ……がと」

「よかった無事で」


レオンからもお礼をいわれた。


「ルナ、ありがとな。ぼくも気づくのが遅かった」

「みんな、無事でよかった。えさをまいてくれてありがと」


「そういえば、柱につるがあったからおりてこれたんだけどあれって……」

「たぶんそれは、ぼくとステラが使ったつるだね」

「やっぱり」

「さっき取ってきたつるを使ったんだよ」

「そっか、何本かとってたもんね」

「役にたってよかった」

「うん、ほんとに助かった」



「そういえば、卵はもってこれたか?」


「「「うん」」」


「はははっ、みんなちゃっかりしてるな」


「「「だね」」」


この中に1つでも、烏骨鶏の卵があることを祈って帰ることにした。

レオンの呼んだつばめに乗り、ローデン村に帰ってきた。


「ビリー、ただいま」

「おかえり、みんな無事か?」

「うん、なんとかね」


「にわとりの卵の色が茶色になっていた」

「えっ? それは本当か?」

「うん、だから少し小さめの茶色をもって帰ってきたんだけど……」

「じゃあ、この中に烏骨鶏の卵があるか調べてみよう」


ビリーは、地下室にもっていき卵に小さな穴をあけていた。

そして、注射器のような針をさして中の液体を取り出し顕微鏡で確認していた。

顕微鏡のほかにも、リトマス紙のような紙に液を落として色の変化を確認していた。

わたしたちは静かにみていた。


「みんな! すべて確認がおわったよ」


ビリーの顔が駄目だった感をだしていた。


「どうだった?」

「烏骨鶏の卵はありま……したっ」


「「「「えっ?」」」」


聞き間違い?


「1つだけ烏骨鶏の卵だったんだ」


「「「「ほんと?」」」」

「「「「やったー」」」」


みんなで喜んだ。


「だれがもって帰ってきたやつなんだ?」

「これだよ」


あっ!

わたしだ!


「「「ルナだ!」」」


「小さくて丸かったからこれにした」

「すごいよ、ルナ」


「これで、材料はすべてそろったな」


「「「「うん」」」」


やったー。

これで材料がすべてそろったんだ。


「ここからは、わたしが本を見ながら配合していく」

「ビリー、わたしも手伝う」

「うん、頼むよ」

「ルナ、頑張れよ」

「うん」


みんなが応援をしてくれている。

大変な思いをしてみんなが集めてくれた材料だから、絶対に成功させたい。

いや、成功させなくてはならない。

そのためには、もう一度本を読み直そう。


本には材料集めの他にも、配合の順番、時間が大事だと書いてあった。

最後のページにはこれを飲む日と時間まで、正確に記されていた。

ビリーが言うには、この薬を飲む日は【満月の日】だそうだ。

一番明るい日。

そしてこの日は毎年ローデン村では、お祭りが開催されることになっている。


その日まで、あと7日と迫っていた。

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