第18話 材料探しー桑の実

集めるのに大変だといっていた、すずきはゲットした。

もうひとつ大変といっていたのは……、烏骨鶏の卵だ。


「次は、烏骨鶏の卵だな」

「これは海より、もう少し遠くまでいかなくてはならない」

「そうなの?」

「しかも、烏骨鶏は卵をあまり産まない」

「えっ?」

「運がよければ数日で手に入るけどな」

「そうか~」


とても貴重な卵なんだな。

たしかに、わたしも人間のときに食べたことがない。

食べる機会がなかったな。


「明日から行きたいところだが、つばめを休ませたい」

「明後日からにしよう」

「明日は他の材料をとりに行こう」


「「「おっけい」」」


「おれたちも、今日は疲れただろうから体を休めよう」

「そうだな」

「そうね」


たしかに今日はさすがに疲れた。

人間がいるっていうだけで、気が休まらないからだろう。


「ルナは初めての遠出でかなり疲れただろう」


ビリーが優しく話してきた。


「まあ……」

「ゆっくり休むといいよ」

「はい」


わたしは部屋に戻りベッドに横になると、爆睡してしまった。



――――


チュンチュン


鳥の声で目が覚めた。

窓をあけ、外の香りを感じていた。

この草の青臭い香りにも慣れた。

鳥に起こされる感じにもなれた。


「ルナ、起きたかい」


このビリーさんが1階から呼ぶ声にも慣れ安心感を覚えていた。


「は~い、いまいきます」


人間の時は、あまり充実感を感じることはなかった。

ただただ学校に行き、家でだらだら過ごしていたように思う。

もっと、ちゃんと必死に生きればよかった。

もし、必死に生きていたら何か変わっていただろうか。

そんなことを最近思ってしまう。


「おはよう、ビリー」

「おはよう、ルナ」

「朝食ができているよ」

「はい、運びます」


今日の朝食はパンにコーンスープ、ベーコンに目玉焼き、ほうれん草のおひたしといったところでしょうか。

それをとても綺麗に盛り付けられている。


「「いただきます」」


毎日、いろんな生き物に感謝をして食事をしています。

わたしがこんな風に思えるようになったのも、ビリーのおかげ。


「ビリー、毎日おいしい料理を作ってくれてありがとう」

「どうした、ルナ」

「ううん、お礼がいいたかっただけ」

「そう、こちらこそおいしそうに食べてくれてありがとう」


「そろそろ、ルークがくるよ」

「いっけない、早く支度しなくっちゃ」

「片づけはやっておくから、ルナは支度をしなさい」

「はい、じゃあビリーよろしく」


わたしは急いでしたくをした。


「おはよう」

「おはよう、ルーク」

「ルナは?」

「今支度しているから待ってあげて」

「わかった」


「ルーク、ごめん待たせちゃって」

「うん、いいよ。まだステラとレオンはきてないから大丈夫だよ」

「「おはよう」」


ちょうど、ふたりもきた。


「じゃあ、今日は桑の実をとりに行こう」

「蓮の実はまだ早いかもしれないけど一応確認だけしてこよう」


「「「おっけい」」」


「ルナ、今日からルナにはこのリュックをもってもらうよ」


ビリーから手渡された。

なぜかうれしかった。

ようやく、探偵団の一員になれたような気がした。


「ありがとう、ビリー」


「じゃあ、ルナこの袋を入れておいてくれる?」


レオンから渡されたのは、少し固めのビニール袋といったところだろう。


「よし、行こう」


家をでて、東側に向かった。

図書館の方角だ。

ようやく位置感覚がわかってきた。


すると、ここから危険という立札があった。

ん?

小さい立札ってことはこびと用だと思った。


「ルーク?」

「なに?」

「危険ってなにかあるの?」

「ときどき、蜂に襲われたりするんだ。ちょうど時期的に盛んに活動しだしている可能性はある」

「じゃあ、気をつけないとね」


図書館とは別の方角に走った。

やはりこのあたりもだれもこないのか、草や木がぼうぼうで走りにくい。

ここはとくに木が多い。


「このあたりにあるはずなんだけど……」


ルークが言うと、レオンとステラは上を見て探し始めた。


「ステラ! 桑の実ってどんな感じなの?」

「ん~そうね、小さいつぶつぶでできていて赤や赤黒っぽい色をしているの」

「ラズベリーみたいな感じ?」

「そう、ラズベリーは知ってるんだね」

「うん」

「高い木に実がたくさんなるの。だから上をみてさがしているんだよ」

「そうなんだ、わたしも探す」

「うん」


わたしも上をみて、木に赤や赤黒っぽい実がなっていないか探した。


レオンとルークがなにか話をしている。


「このあたりにはなさそうだから、場所をかえる」

「「わかった」」


次の場所まで走った。

わたしもついてった。

何かにつまづいて転んでしまった。


とんっ! ばたっ!


痛い!


「ルナ、大丈夫か?」

「ごめん、何かにつまづいて転んじゃった」


「おい、ルナでかした」

「ん? なに?」

「ルナがつまづいたのは桑の実だよ」

「えっ?」


レオンが手にとって見せてきた。


「ほんとだ」


上をみてみると、そこにはたくさんの桑の実がなっていた。


「やったー」


この高い木の実をどうやってとるんだろう。


「レオンとステラとおれが木に登る」

「うん」

「ルナに渡したビニール袋の出番だ」

「ん? これ?」


わたしはリュックからビニール袋をだした。


「このビニール袋を下にひいておくんだ」

「うん」

「そのビニール袋の上にとった桑の実を落としていく」

「うん」

「ルナはそれをビニール袋の中央に集めておいてくれ」

「わかった」


そういうと3人はスイスイ木に登り始めた。

わたしは言われた通りにビニール袋を広げた。

3枚あるようだ。

とりあえず、1枚を木の下に広げた。


「じゃあルナ、落としていくぞ」

「いいよ、準備できた」


すると、ポンポン上から実が落ちてくる。

赤い実や赤黒い実がポンポンあっという間にビニール袋いっぱいになってしまった。


「ねえ、ビニール袋いっぱいになったよー」

「「「わかった」」」


そういうと3人は木から降りてきた。


「たくさんとれたね」

「これだけあれば十分だろう」

「よし、ビニール袋を結ぶぞ」


このビニール袋をどうやって結ぶの?


「ルナ、ここをもって」


ルークがそういうと、ステラとレオンも端をもった。


4隅をそれぞれがもっていた。

まず、手前の角をもっていたステラが上手に桑の実をかぶせました。

そして、レオンがもっていた奥の角も同じようにかぶせ、余った部分をしたに巻きこんだ。

わたしが持っている角とルークがもっている角を持ち上げ、体を使って上手に真結びにした。

桑の実の入った袋を、持ち上げても実は落ちません。


こんなちいさな体でも人間と同じように結べることに驚いていた。

この大きな袋はレオンが持つことになった。


「蓮の実もどんな感じか様子をみてから帰ろう」

「もうできているかな~」

「まだちょっと早い気がするけどな……」


やはり材料には、それぞれ取れる時期があるようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る