第16話 薬で戻れるの?

薬のことはビリーさんがくわしいはず。

本を持ち帰ることにした。


家に帰ってきた。


「ビリーさん、ただいま」

「おかえり」


「探し物は見つかったかい?」

「はい、ビリーさんにお聞きしたいことがあるんですけど……」

「なんだい?」

「この本を見つけたんです」

「これは……懐かしい」

「えっ?」

「知ってるんですか?」

「ああ、善吉さんがいなくなる前に一緒に実験もしてたからその結果とか書いてあるんだろ」

「そうなんですか?」

「で、この本を探してたのかい?」

「はい、ここに書かれている薬を作りたいんです」


本に書いてある薬の名前をみた。

そこには、体記憶薬と書いてあった。

必要な材料もかいてある。

これを作って善吉さんは人間に戻れたのかな?


「この薬を作るきっかけはなんだったんですか?」

「それは……、善吉さんが人間に戻りたいから作りだしたんだ」


「「「「えっ?」」」」


ビリーさんはあっさり言ったけど、大丈夫なの?


「ビリー!善吉さんは人間だったの?」

「ああ、わたしも見たわけではないけど、この薬ができて姿が見えなくなったということは人間に戻れたんだとわたしは思っているよ」

「ビリーさん!善吉さんが人間でも、なんとも思わなかったんですか?」

「ああ、最初は驚いたけど話を聞いていくうちに人間のことをよく知ってるんだから信じるよね」

「たしかに、あれだけの本を書いて人間の生態も知ってるなんてね」


やっぱり、善吉さんは人間だった。

そして、人間に戻れたのかもしれない。


わたしも人間に戻れるかもしれない。


そうなると、みんなに話すべきなのか……。


とりあえず、今は先に薬を作ろう。

そのために材料をそろえよう。


「ビリーさん、その薬作れますか?」

「ああ、たぶん材料がそろえられればできるはずだよ」

「わたし、材料集めますから薬を一緒に作ってもらえますか?」

「いいよ、作ろう」

「ありがとうございます」

「探偵団で、材料を集めておくれ」


「「「おっけい」」」


「みんな、ありがとう」


この日から、探偵団の材料集めが始まった。


本には『心の栄養と機能が正常であれば脳も健康的に働く』と書いてあった。

やっぱり、脳と深く関係があるのだろう。

そして、材料として小麦、蓮の実、トマト、えごまの葉、ブロッコリー、桑の実、ブルーベリー、すずき、烏骨鶏の卵、栗と書いてあった。


「ビリーさん、この材料はすべて集められるんですか?」

「基本的には集められるけど、すずきと烏骨鶏の卵が大変だろうな」

「そうなんですか?」

「でも大丈夫だよ、探偵団なら全部集められるはずだよ」

「はい、よろしくお願いします」


「じゃあ、さっそく集めに行こうか」

「はい」


すべて集めるまで時間がかかりそうだ。


「今日は、海にいってすずきを釣りに行こう。」

「海って遠いよね」

「よく知ってるね。かなり遠い」

「すずきが早めに釣れるといいけどね、これがなかなか釣れないんだよね」

「しかも、海はすごく遠いし、大きいから危険が多い」

「危険か」

「人間もいるから見つからないようにしないとね」

「うん」


「よ~し、行こう」


「「「おっけい」」」


門をぬけ、湖へいった。


ピー!ピー!ピー!


レオンが指笛を吹いた。

すると、つばめが5羽とんできた。


「レオン、すごい」

「ぼくはつばめをよべるんだ」


「もしかしてステラもできるの?」

「うん、わたしは指笛できないから木で作った笛ですずめをよべる」

「へえ~すごい」

「ルナも笛を作って、なんの鳥がよべるかわからないけど作ってみようよ」

「もしかして、音で呼べる鳥が違うってこと?」

「そうなんだよ」

「なんの鳥がくるかもたのしみでしょ」

「たしかに」


「じゃあ、つばめにのって海までいくよ」

「ルナ、ひとりで大丈夫か?」

「うん、ちゃんと羽をつかませてもらうわ」

「そうだね」


みんなはいつものリュックとクーラーボックスをもっていた。


「わたしもリュック持つよ」

「大丈夫か?」

「うん」

「じゃあ、このリュックを頼むよ」


リュックを背負って、つばめに乗った。

つばめに乗ると、5羽はつらなってとんでくれた。

上からみると、くの字のように飛んでいるのだ。

結構スピードがでている。

どのくらい飛んだだろうか。


海が見えてきた。

人間の姿もみえる。

どうするんだろう。


「ルーク! 人間の姿が見えるけど大丈夫なの?」

「ああ、もうちょっと奥の岩場に行けば人間はこれないから大丈夫だよ」

「なるほど」


岩場についた。

つばめたちは羽を休めている。

その間にわたしたちはすずきを釣る準備をした。


「どうやって魚を釣るの?」

「まあ、みてな」


そういうとレオンはリュックから、なにかえさのようなボトルをだし海にまいた。


「ルナ、危ないから少しさがって」


えっ? なに?


わたしは言われたとおりにさがった。

すると、遠くから渡り鳥だろうか大きな鳥がやってきた。

そしてその鳥が海の水中に顔をつっこみ何かをしている。


ジャボーン!


顔をあげたと思ったら、口に何かをくわえていた。


ピョンピョンピョン!!


飛んできた。

魚だ!

魚がたくさんとんできた。


「すごいね。釣りをするわけではないのね」

「まあ、この方が効率がいいでしょ」

「たしかに」

「でも、この中にすずきがいるか確認するのが大変だよ」

「なるほど」

「ルナ、すずきわかる?」


「これがすずきだよ」


レオンがすずきの絵をかいてもってきてくれた。

なんとなくわかった。


「たぶん、わかると思う」

「じゃあ、探そう」


そう話をしている間も、魚はバンバン飛んできていた。


――――


今日はいなかった。


「あきらめずに、また明日こよう」

「そうだね」


なかなか大変な道のりだ。

でも、みんなが手伝ってくれてるんだから頑張ろうと思った。

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