第14話 善吉さんの謎
今日もリンさんの家に向かう。
トンットンッ
「こんにちは」
「……」
「リンさん、こんにちは」
「……」
「また、明日来ます」
カチャ
ドアがあいた。
わたしは振り向いた。
ドアを開けて立つリンさんがいた。
「リンさん!」
「中へどうぞ!」
「ありがとうございます」
「あなたもしつこいね」
「えへへっ」
「なにが聞きたいの?」
「善吉さんと人間との関係です」
「えっ?」
「なにか知りませんか? 聞いてませんか?」
「あなた、名前は?」
「ルナです」
「ルナさん!何を聞いても信じてくれますか?」
少し怖くなったけれど、今更引き返すわけにはいかない。
「はい! 信じます!」
リンさんは覚悟を決めたように話をしはじめました。
「ルナさん、もし善吉おじいさんが人間だ、といったら信じますか?」
「えっ?」
「まあ、そういう反応になるよね」
「本当ですか?」
「冗談よ」
「えっ? 冗談?」
「わたしも見たわけではないから本当のところはわからないけど……」
「なぜ、そんなことを言ったの?」
「わたしの両親はわたしが小さいときに病気で亡くなってしまったの」
「そうなんですか」
「亡くなる少し前に、善吉おじいさんの話を聞いたの」
「おじいさんにあったことはないんですか?」
「ない。わたしが物心ついたときにはおじいさんはいなかった。でも、時々両親が人間の話をしていたの。」
「人間の?」
「うん。でも、ある夜聞いてしまったの」
「まさか……」
「そう。人間の話をしていると思っていたら、それはおじいさんの話だった」
「え~じゃあ」
「わたしも確認したわけじゃないから、本当のところはわからないけど」
「確認しなかったんですか?」
「次の日に確認したよ。でも、夢でもみたんでしょってちゃかされた」
「そんな~」
善吉さんは本当に、人間なんじゃ。
「善吉さんは亡くなったのではなくて、いなくなったってきいたんですけど」
「そうなの。あの夜の話によると人間に戻って、元気にしてるのかって話をしていたの」
「やっぱり、人間なのでは」
「わたしはそう思ってる」
「そうなんですか?」
「両親がかくしていた手紙があるの」
手紙を見せてくれた。
それは、善吉さんがリンさんのご両親にあてた手紙だった。
そこには、こう書かれていた。
『わたしと家族になってくれて、ありがとう。会えなくなっても、ずっと見守っているよ。』
もう、古くなってしまった紙に薄れてきている文字。
かすれ文字だけど、読めた。
「これをずっと両親は大事にしていた」
「これは間違いなく善吉さんの手紙ですね」
「ルナさんは信じてくれるの?」
「はい、信じます」
というか信じたい。
善吉さんが人間に戻ったとすれば、わたしも戻れる方法があるかもしれない。
「わたしの話を信じてくれたのは、ルナさんだけだよ」
「ほかの人にもこの話をしたんですか?」
「うん、変人扱いされたけどね」
それで、リンさんは人とあまり話をしなくなったんだな。
「リンさん、善吉さんが図書館の本を書いたって残ってるんですけど」
「うん、おじいさんの部屋見てみる?」
「えっ? 残ってるんですか?」
「いつでも戻ってこれるように残したままなの」
「見せてください!」
善吉さんの部屋になにか残っているかもしれない。
わたしはドキドキしてきた。
2階にあがった。
「ここよ」
扉をあけ、中にはいった。
すると、本がぎっしり置いてあった。
「触ってみてもいいですか?」
「うん、いいよ」
わたしはなにか謎が解消できる本を探してみた。
すると、目に入った本があった。
それは、『人間とこびとの生態』という本だった。
手にとってみた。
中には、こびとの生態が詳しく書かれていた。
善吉さんがかいたであろう本です。
『こびとの身長、体重、頭囲、胴囲、胸囲、足の長さ、食べる量、体力、握力、肺活量、便』ほかにもこと細かに記されていた。
パラパラとページをめくっていくと、最後のページに意味深な言葉が残されていた。
『この本を最後まで見たきみ! もしかして、人間かい?』
えっ?
なに?
『図書館にて『世界で一番高い山』の本を見てごらん!きみが知りたい謎がとけるだろう』
なに? なに?
最後のページにこの2行の暗号のような文字が書かれていた。
わたしはリンさんにばれないように本を閉じた。
「リンさんありがとうございました」
「ううん、わたしも話を信じてくれる人に会えてうれしかったよ。また遊びにきて」
「はい、きます」
わたしは家にかえった。
帰り道、暗号のことを思いだしていた。
世界で一番高い山って、エベレストだよね。
図書館でエベレストという見出しの本があるってこと?
パッみた感じ、なかったような気がするんだけど……。
あったら気づいたはずなんだけど……。
とにかく明日、図書館に行ってみよう。
ルークたちにも一緒に探してもらおうかな。
――――
「ビリーさん、ただいま」
「おかえり」
「ビリーさん、聞いてください」
「どうしたんだい?」
「リンさんに会って話を聞くことができました」
「そうか、それはよかった」
「はい、善吉さんのこときけました」
「そうか、それはよかったな」
「はい、でももう一度図書館にいって本を調べないといけなくなりました」
「そうか、謎が解けるといいな」
「はい、明日ルークたちにも手伝ってもらおうと思って」
「そうか、探偵団のお出ましだな」
「はい」
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