第12話 恐るべし猫

わたしは毎日リンさんの家に行きどうにか話を聞きたかったが、なかなか家にいれてはもらえなかった。

そんなある日、わたしはこびとの兄弟を見かけた。

仲良く、買い物をしているようだ。

そんな様子を見ていたら、わたしも妹のまいに会いたくなってしまった。

場所はもう覚えた。

道もそんなに危なくないし、ひとりで様子をみに行こうと思った。


よし、いってみよう!


わたしは走って草木をくぐり家に向かった。

道路にでた。

あとは端っこを歩き、人の庭を通って坂の上までいけば着くはず。

と思いながら歩きだした。

急に暗くなった。


ん?


ふと、顔をあげるとそこには猫がいた。


え?


猫と目があった。


ぎゃあーー


わたしは走って逃げた。

でも猫はついてくる。

どうしよう。

怖い。

猫に食べられてしまうの?


嫌だーー

必死で逃げた。


逃げた先は行き止まりだった。

あ~終わった。


猫がとびかかってきた。

わたしは目をつぶってやられる覚悟をしあきらめた。


ぎゃあー


ん?

なんの声?

それは猫がフクロウにつつかれ、足でつかまれとやられている声だった。


猫は逃げていった。


ふぅ……助かった。

すると、フクロウからぴょんとルークが降りてきた。


「ルーク!」


わたしは思わずルークに抱きついた。


「ルーク! ありがとう」

「ルナ、ひとりで来るなんて危ないよ」

「ごめんなさい」

「間に合ってよかった」

「でもなんでここにいるってわかったの?」

「ビリーが、リンさんのところにいったっていうから心配になってリンさんのところにいったんだ。そしたらいなくて近くにいた兄弟にルナのこときいたら門から出て行ったってきいて、もしかしたらと飛んできたんだ」

「でも、フクロウに乗れるなんてすごい」

「友達なんだ」

「友達?」

「うん、エルっていうんだ。ときどき空を飛んで調査することもあるんだぞ」

「へえ、そうなんだ。エル、助けてくれてありがとう」


わたしは、フクロウの頭を撫でた。

触ったのは初めてだった。

エルは顔をわたしのほほに近づけ、優しくスリスリしてくれた。

エルのやさしさを感じた。


「ルナ、またあの家に行きたかったのか?」

「うん」

「じゃあ、エルで行こう」

「えっ、いいの?」

「ああ」


わたしもエルに乗せてもらった。

エルの背中にのると、エルは飛び上がった。

そしてあっという間に家の庭の木についた。

そこから中をのぞいた。

妹のまいの部屋がみえた。

まいは机に向かって勉強をしているようだ。

えらいな~


まいは医学のみちに進みたいと言っていた。

今年、高校受験だ。

行きたい高校に合格できるように祈ってるよ。

がんばれ!!


「よ~し、わたしもがんばらなくっちゃ」

「ルナ、元気がでたようだな」

「うん、ルークありがと」


「よし、じゃあ村にもどろうか」

「うん」


エルに乗って、村まで飛んだ。

空の上から見る世界はまた違った。


風を感じ、香りを感じ、人間の世界は広い。


あっという間に村に着いた。


「「エル、ありがと」」


エルは帰っていった。


「ルーク、エルはどうやって呼べるの?」

「おれの指笛だよ」

「なるほど」


「ルーク、今日は本当にありがとう」

「うん、またな」


ルークは帰っていった。

わたしも家に帰った。


「ビリーさん、ただいま」

「おかえり、ルナ」


「夕食できてるよ、食べようか」

「はい。今日はなんですか?」

「今日はグラタンだよ」

「やったー」

「グラタンは好きかな?」

「うん」


グラタンを食べた。

中はマカロニではなくてパンだった。

パンが小さく入っていて、そこに牛乳とコーン、ウインナーに玉ねぎ、塩コショウで味付けしてあり上にちゃんとチーズがかかっている。

そして、かまどで焼いている。


「おいしい」

「よかった」

「このチーズって作ってるんですか?」

「いいや、これはすずなさんにもらってるんだ」

「じゃあ、報酬ってことですか?」

「そうだね」


なるほどね。

作れないものは報酬として人間界からいただいてるってことなんだね。


「「ごちそうさまでした」」


「じゃあ、片づけます」

「お願いするよ」

「はい」


わたしは食べたあとの片づけをした。


「ルナ、先にお風呂に入っていいから」

「は~い」


わたしはお風呂に入って部屋で休んだ。


でも、今日は危なかったな~

ルークがきてくれなかったら、どうなってたんだろう。

猫に食べられてたのかな~

最初に犬にはなめられたけど、やっぱり猫は怖いんだな。

気をつけないと。

猫に出会ってしまった時の対処法を聞いておこう。

ビリーさん、まだ地下室にいるのかな?

ちょっと、覗いてみよう。


地下室に行くとビリーはまだなにかを調合して薬を作っていた。


「ビリーさん!」


わたしが声をかけるとビリーさんはすごく驚いた。


「わあ! びっくりした」

「あっ、ごめんなさい。そんなに驚くとは思わなくて」

「いや、ごめん。もう寝たと思っていたから……」


「どうしたんだい?」

「あの~今日実は猫に襲われそうになって……」

「えっ? 大丈夫だったのかい?」

「はい、ルークが助けにきてくれて……」

「それならよかった」

「はい、でも猫にあったときの対処法とかあるんですか?」

「対処法? ……」

「ん?」

「死んだふり」

「えっ?」

「まあ、それしかないんだよね~」

「まじですか?」

「まじです」


「こびとにはそれぐらいしかできないんです」

「そうですか……」

「わたしたちは小さいころから、そういう訓練をしてるんだよ」

「訓練? 死んだふりの?」

「そうだよ。みんなすごいんだよ。明日ルークたちに見せてもらうといいよ」

「う……ん」


死んだふりって、見せてもらうようなことではないような。

まあ、いっか。

一度は見せてもらっておこう。


それにしても猫のやつ、恐るべしだわ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る