第10話 毒きのこハウスの謎
家に帰ってきた。
「ビリーさ~ん!」
わたしは、家の中に入るなり地下にいるであろうビリーさんに聞こえるように大きな声で呼んだ。
「ん? おかえり」
ビリーさんは何事かのように1階に登ってきた。
「ただいま、ビリーさん」
「どうしたんだい?」
「ビリーさんに聞きたいことがあって」
「まあ、落ち着いて。きみたちも座って」
わたしは椅子に座った。
ルークとレオン、ステラも椅子に座った。
「あの、リンさんって知っていますか?」
「ああ、知ってるよ」
「では、リンさんのおじいさんの善吉さんのことは?」
「もちろん知っているさ」
「お、教えてください!」
「な、なにを?」
「善吉さんはどんな人だったんですか?」
「まあ、落ち着いて」
わたしはマシンガンのように話した。
「ルナ、落ち着いて。みんなに飲み物でも出してあげて」
わたしはフッと我にかえった。
ちょっと慌てすぎた。
落ち着こう。
「ミルクでも飲む?」
「うん、もらおうかな」
ルークがいった。
「わたしも」
「じゃあ、ぼくも」
「わかった、ちょっとまってね」
わたしはミルクを3杯コップにいれテーブルに運んだ。
少し落ち着いた。
「ビリーさん、ごめんなさい、落ち着きました」
「そうだね。じゃあ、わたしの知っていることを話そう」
「はい、お願いします」
「善吉さんとは、むかし研究仲間だったんだ」
「やっぱり、関係があったんですね」
「善吉さんはすごい人でね」
「すごい人?」
「うん。ある日突然このローデン村にやってきたんだ。たまたまわたしが見つけて声をかけると、急に倒れてしまってね、しばらく家で面倒をみてたんだ。」
「ここでですか?」
「ああ。そのころこの村で病気がはやっていてなんとか薬を作って治してあげたかった。でも、わたしは薬の研究に行き詰っていたんだ。それを知った善吉さんが『ハッカク』という高木の話をしてくれて、それを調合したんだ。」
「その病気ってもしかして、風邪ですか?」
「そう、よくわかったね」
「「「ルナ、すごいな」」」
「まあ」
わたしはお母さんからハッカクの話を聞いたことがありました。
でも料理に使う話から、むかしは風邪にも効くって漢方薬にも使われているって話だった。
「そして、この村の風邪は治まったんだ。わたしは、善吉さんにもっといろんなことを教えてもらいたくてたくさん話をきいたよ。ずっと一緒に暮らしたかったけど善吉さんは新しく家を作ったんだ。それが今のリンさんが住んでいる家さ」
ステラがすかさずいった。
「あ~あの毒きのこハウスね」
「毒きのこハウス?」
「えっ? 知らないの?」
レオンとルークが答えた。
「実験が失敗して家中に毒がまわり、家の色が変化したんだって」
「そして、今の紫になったんだって」
ビリーさんは笑いをこらえて吹き出した。
「……ぷはっ、はっはっはっこれは面白い」
「えぇ! 違うの?」
「違うさ。あれは善吉さんの研究でもあったんだ」
「どういうこと?」
「善吉さんの家は、雨などの水によって色が変わるようになっているんだ」
「えっ? どういうこと?」
わたしはもしかしてアジサイと同じ考え方かなと思った。
「もしかして、この辺の雨が酸性の雨だから青っぽい紫になっているってことですか?」
「すごいねルナ、その通りだよ」
「もしアルカリ性が強ければピンクになるってこと?」
「そうだ」
「あっ、だからはじめのころは赤い屋根だったっていってた」
「「「あっ、赤い屋根だった」」」
「そのとおりだよ。毒きのこハウスなんてひどいな~」
「でも、アルカリ性の雨なんて降らないですよね」
「うん、そうだね。善吉さんはアルカリ性のものを家の近くにおいたり家のまわりにアルカリ水的なものをまいたりと研究してたよ」
「そのころは、赤い家だったと思うよ」
「善吉さんはもの知りでね。特に人間界のことをよく知っていたよ」
「どんなことを?」
「一番は食べ物かな。人間界で食べられているもの、その名前、そして作り方までどうやってしらべたんだろうっていうくらい知っていたよ」
「図書館にあった本にたくさん書いてありました」
「あ~硬貨もあったね。結局定着しなかったけど硬貨を作って売買をしようとしてたっけ」
善吉さんはどうやって人間界のことを知っていたんだろう。
やっぱり、リンさんに話を聞きたい。
「とにかくすごい人だった。わたしが今薬をつくれるのも善吉さんのおかげだ」
「その善吉さんはいつ頃なくなってしまったんですか?」
「それが、突然いなくなってしまったんだ。突然きたと思ったら突然消えた」
「えっ? 亡くなったんじゃないの?」
「う~ん。もっといろんな話を聞きたかったんだけどね」
えっ、亡くなったわけじゃない?
いなくなった?
……ん……やっぱりおかしい。
「わたしやっぱりリンさんに話を聞きたいので、毎日でも会いにいってみます」
「うん、ルナが気のすむまでやるといいよ」
「はい」
「ルーク、レオン、ステラ、リンさんはわたしがなんとかしてみせる」
「「「わかった」」」
――――
「ところで、探偵団! 次なる依頼がきているぞ」
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