第6話 家族は元気なの?

こびとになって4日がたった。

毎日、新鮮で忙しくて忘れていたが人間の世界ではわたしはどうなっているのだろう。

お父さんやお母さん、妹は元気なのだろうか。

急に心配になった。


突然家族がいなくなったら悲しむよね。

どうしているのだろう。


「ビリーさん、人間界のコルマー4丁目ってどのあたりかわかりますか?」

「ん? 行きたいのかい?」

「えっ、まあ……はい」

「ルークに連れていってもらうといいよ」

「言ってみます」

「今からルークの家に行ってごらん」


そういえば、みんなの家知らなかった。


「わたしいけますか?」

「ここを出たら左に行き、左右に数えて5件目の黄色い屋根の家だよ」

「行ってみます」


えっと、家を出たら左。

そういえば、この村をちゃんとみてなかった気がする。

けっこう家があるんだな。家があるということはこびともいるってことだよね。

まだ他のこびとにあってないや。

会ったらどうしよう緊張する。


あ~さっそく外に誰かいるし。

どうしよう。声をかけようか。


「こんにちは」


こびとは振り向いた。


「こんにちは、きみが最近きた子だね」


なんで知ってるんだ。


「ルークたちと探偵やってるんだって?」

「はい」

「ありがたいねぇ」


ありがたい? なんでだ?


「これからも頑張ってね」

「はい」


なんでだろう。

まあ、いっか。

早く、ルークの家に行こう。


えっと、5件目はこれかな? 黄色い屋根だしこれだよな。


ピンポーンってないし、開けていいんだよな。


「こんにちは」


ドアをあけてみた。

中には、お母さんだろうか女の人がいた。


「はいはい、だれかな?」

「あっ、ルナといいます。ルークさんはいますか?」

「ぷっは。ルークさんって」


わたしなにか変なこと言ったかな?


「ごめんね、ルークのことルークさんなんて言う人いないから笑っちゃったよ」

「あ~なんか恥ずかしい」

「ちょっとまってね」


『ルーク!ルナちゃんが来たよ!』


「なに?ルナ?」


ルークが2階から降りてきた。


「ルナ」

「ルーク、ごめんね急にきて」

「いや、いいけどどうしたんだ?」

「あの、人間界のコルマー4丁目あたりにつれていってもらいたいんだけど……」

「あ~ルナが倒れていたあたりかぁ」

「いいよ、じゃあ行こう」

「うん、ありがとう」


ルークはさっそく連れていってくれた。

しばらく行くと、緑のポストがあった。

この道はビリーさんと通ったから覚えてる。ここをまだまっすぐ行くのね。

ビリーさんと違って、ルークは歩くのが早い。というか、ぴょんぴょん走っているようだ。

だから、わたしは走ってついていくのだ。

だから体力がなくてへとへとになってしまう。

これが若さの違いだろう。

というかルークたちはいったい何歳(いくつ)なんだろう。


しばらく走った。

この道は川のような水場がないため、ロープで渡ることもなく葉っぱをぴょんぴょん飛ぶこともない。

とにかくひたすら、ジャングルのような草や木の下を右に曲がったり左に曲がったりと走っているだけだ。

わたしが助けてもらった時もこの道だったような気がする。


「ルナ、ついたぞ。この辺りがコルマー4丁目あたりだ」


草の影から町をのぞいてみた。

見覚えがある。

ここは……。


わたしの家の坂下にある交差点だ。

この坂を登れば家がある。


「ルーク!この坂の上に行きたい」

「えっ? 坂の上か」


ルークは行き方を考えてくれているようだ。


「よし、ルナついてきて」


人間にみつからないように、隅っこを歩き人の家の庭を進んだ。

わっ! 犬だ!

しっぽを振って吠えている。


ワン! ワン!


鎖をしているから安心だ。

あ~びっくりした。


とにかく草を探して隠れながら坂を登った。

ようやく、わたしの家の庭についた。


こっそり、窓から部屋の中をのぞきこんだ。

そこには、お母さんと妹のまいがいた。


『おかあさん! まい!』


つい叫んでしまった。

でも声は届かなかった。

わたしは涙がでてきた。


「ルナ、どうしたんだ」

「……っ……! なんでも……っないです……っ!」

「お母さんって!」

「……ごめん……っなさい!」


また、泣きながら家の中をのぞいた。

お母さんとまいがわたしの制服を抱きしめながら泣いていた。

かすかに声が聞こえた。


『ルナ!どこにいるの?』

『おねえちゃん!早く帰ってきて!』


ふたりの声が聞こえた。

わたしは人間界では行方不明のようだ。


わたしはここにいるよと叫びたい気持ちをおさえた。

だって、こびとの姿でふたりの前に現れても驚くだけでわたしとは気づかないだろう。

今は会うのはやめておこうと思った。


わたしは、しばらくその場で泣いていた。


ルークは何も言わず横にいてくれた。


「ごめん、ルーク」

「落ち着いたか?」

「うん」

「じゃあ、帰ろうか」

「うん」


わたしはお母さんとまいの姿を目に焼きつけて帰った。


――――


村までの帰り道、ルークはわたしの手をひき歩いて帰ってくれた。


「ルーク、今日はありがとう」

「ここに来たいときはいつでもおれが一緒にきてやるから」

「……うん、ルークありがとう」


――――


家に帰ってきた。


「ただいま、ビリーさん」

「おかえり、ルナ」

「夕飯たべようか」

「うん」


ビリーさんは今日のことは何も聞かなかった。

わたしの顔を見ればわかるのだろうか。

大人だ。

しかも、わたしの大好物のシチューを用意していてくれた。


わたしは泣きながらシチューを食べた。


……っ、……おいしい……っ。


今日のシチューの味は一生忘れない。


そして、ビリーさんとルークのやさしさも忘れない。


その夜は枕を濡らした。

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