第百七十二話 試練の魔導書 スミナ
「どこだ、ここは」
スミナは気が付くと一人
鉱山
周りには
しかしこんな場所来たことがない。
混乱。
確かセレスが本を開いたと思ったら光り出して――。
「おい、新入り! 何ぼさっとしている!!! 」
そう言われ、女ドワーフに
「痛ぇ! 何しやがる! 」
「何しやがるとはなんだ! もうすぐ領主様から受けた依頼の
そう言うと比較的大きなドワーフの女性が持ち場に戻った。
領主?
少し周りをみて考えるも答えは出ない。全員必死に鉄を打っているだけだ。
伝説に聞く転移魔法でどこかに飛ばされた?!
「いや、ねぇな」
スミナはその場にいたらまた何を言われるかわからないため壁の方へ向かった。
彼女は
なぜなら女性はスミナの事を『新入り』と呼んでいたからだ。
恐らく彼女は周りに『新しく入った
ならばこの現象は何か。
分からない。
「考えてても仕方ねぇか。
どう考えても異常事態なのだが、考えても答えが出ないものは仕方ない。
そう割り切り自分に振られた仕事をすることに。
しかし彼女はどんな仕事をするのか全く分からない。
よって
「……。すまねぇ仕事なにすりゃいい? 」
「はぁ? 何言ってるんだ! お前は川から
「少し熱にやられたようだ。ありがとさん」
そう聞かれた
理由を付けて自分の仕事を知った彼女は一度外に出ることに。
★
「っても、川がどこにあるのか分かんねぇんだが……」
彼女が右を向くと大きな――鉱山と思われる――
道を少し歩きぶらぶらする。
割り振られた仕事をしないといけないのだが道が分からない。
川があるということはどこか山のような場所があるかもしれないと思い周りを見渡すもそのような物は見られなかった。
「これは……困ったな」
「何がお困りなのじゃ? 」
自分のつぶやきに返事が返ってきてびっくりする。
周りを見渡し確認すると一人のエルフ族と思われる男性がいた。
しかし、かなり歳をとっている。恐らく四百は超えているだろう。
そう
「川を探してんだが……」
「川、とな。この周辺に川は無いよ。川は」
「だが
「
と、少し老いたエルフは目を細めた。
だがすぐに表情をもどして笑い出す。
「ほほほ、これは
「どういうことだ? 」
否定されて少し機嫌が悪くなって口調が荒くなる。
「お嬢さんが言う
「だ、か、ら……あっちにっておい! 」
老エルフに示すべく指を
いや正確に言うと町すらもなかった。
スミナは突然の事に慌てふためく。
周りを見渡すと川が横を流れる
確かに
そしてこの異常事態に目の前の老いたエルフはなおも笑っている。
「なるほど、なるほど。こことは違う、どこかから来たのじゃな? 」
「こことは違う?! ということはここがどこか知ってるのか! 」
「知っとるとも、知っとるとも。ここは『
「げん、む? 」
聞きなれない言葉に
「夢か、はたまた幻か。人の心を映し出す。そんな世界じゃ。まぁ
「な、なんだよ」
「お嬢ちゃんのように
興味深そうにスミナを見て
にわかに信じられない言葉だ。
違う世界?! そんなことがあってたまるか!
スミナはそう怒り、顔を赤くする。
しかしどうしようもない事は
そこである事に気が付きはっ! となる。
「ワタシを飛ばしたのは、爺さんか? 」
「違う、違う。わしはここに
そう言われれば、と思いあの光を思い出す。
「わりぃ。少しイライラしていたんでな」
「構わんよ。そんな時は、ほれ」
パン! と両手を叩くとスミナの前に
何が起こったかわからずいきなりの事に驚く。
このじいさんは一体? と思いながらも前を向くと笑顔のまま口を開いた。
「ここは人の心情を写す。鍛冶屋の
「ワタシは早く出たいんだ」
「何、ここでは時間のような
「くっ……」
スミナは「これは何を言っても引かないな」と思い
★
カン、カン、カン、とリズミカルな音が鳴る。
熱く熱せられた未知の素材は、変形しない。
「かてぇ……」
こんな素材見たことも触ったこともねぇと思いながら打ち続ける。
彼女は
未知の鉱物、彼女が本来求めていた物だ。
今はギルドランクを上げることで
カンッ!
少し、変形した感じがした。
よし、と思い再度、打つ。
思いを込めて、打つ。
打っている中でふとアンデリックの事が頭を
いつも
しかしいつの
くそっ!
カン!
どのくらい時間がかかっただろうか。
あの老人も来ずにひたすら鉱物を打ち続けた。
そのことに焦りを
外は大丈夫だろうか。
時間の
夢の世界なら夢を見ていると
ならば夢を見ている時、外の世界は時間が経過していないのかと言うとそうでもない。
実際、
しかし今度は――まるで元に戻ったかのように――硬くなってしまった。
どういうことだ……。
「わからんという顔をしているの」
「……
「
「何がだ」
「その鉱物はお嬢さんの写し心。つまり硬くなるも柔らかくなるもお嬢さん
驚きと共に
「この『
「いいのかよ。答えを教えて」
「構わんよ。別に教えたらいかんというルールもないしの」
ほほほ、と笑うエルフ老人を見ながら「初めから教えろ」と怒鳴りそうになるが、押し留まった。
ここで教えてもらわなければ教えてくれなさそうだからだ。
「抜け出すのは簡単。答えを見つけるだけじゃ」
「答え? 」
「そうじゃ、お嬢さんの答え」
それを聞き
その中に輝く
スミナがとった行動は――。
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