絶望のイチイナと差し伸べる手
「イチイナ、お前をこの家から追放する! 」
「二度と
イチイナは
「ち、ちょっと待ってください。一体どういうことですか?! 何が……」
「お前の婚約者が不正を行った」
その言葉にイチイナの顔に疑問が浮かぶ。
「それだけなら今まで通りにもみ消せばいいじゃないですか、それだけで追放なんて」
「
「ひっ! 」
「このことはすでに陛下の耳に入っている。おかげで派閥内で私達の立場が
「貴方をこの家に置いておくことがどのくらいリスクなのか、わかりますよね? 」
「しかし! 」
「お黙りなさい! そもそも婚約を
「我々は無関係だがな」
イチイナは必死に
彼女の目に映るのは失望した両親の姿。
五女ではあるが高位貴族の仲間であったイチイナ。
しかしその後ろ盾もなくした状態で商人達がいなくなった王都を歩く。
「どうしたら……」
放心状態で中央広場のベンチに座るその姿はまるで職を失った文官のようだ。
もっとも彼女は職すらなかったのだが。
そこには
「なんで私がこんな目に……。そうですわ、騎士! 騎士ですわ! 」
一人大声を出し急に立ち上がった。
放心状態から
こうして彼女はブリッツ騎士爵家へ行くのであった。
ブリッツ騎士爵家
騎士爵でも
それもそのはず騎士爵は一代限りの爵位であり男爵から次世代へ
そう腹をくくってイチイナは来たものの――目の前に広がる光景は
「何が起こって……」
このことからこの行為は貴族かその子供達の
が、
そんな中、門が開き使用人と
これ
「私はイチイナと申します。ここはロロ・ブリッツ様のお
そう言うとその老人は何かに
「な、なんで私まで……」
「あの」
「お、お前もか! お前もあのゲロ騎士の被害者なのか?! 」
被害者? どいうことですの?
頭の中で言葉を
被害者、確かに被害者ではある。結婚
しかしこの
実家から追放された彼女はその『ブリッツ家』に
彼女は
この手段がブリッツ家がいくら落ち目とはいえ家から
妻――例え正妻でなくても――になれば自身の生活は保護される。一代限りの騎士爵でも彼女が、もしくは主人が生きている
息子や娘が出来れば
もしロロが生きていたとしても彼女を元婚約者であるからと言う理由で結婚する必要も、ましてや
しかし破滅から立ち直った彼女のポジティブ・シンキングはそれを否定し、現実と切り離した。
「被害者ではありませんが……。この家に何が起こったのですか? 」
だがそれだけでこのような落書きがされるものだろうか?
何をやらかしたのか分からない彼女は使用人に聞いた。
『被害者ではない』ということや『何も知らない』ということに
「……ブリッツ家はもうなくなりました」
「え……」
しかしそれを受け入れることが出来ない彼女は相手の言葉を
「なくなった? え? でも騎士爵は一代限りですが
「話せば長くなるのですが……」
本当の意味でなくなったことを知るイチイナ。
その為か急に体に力が入らなくなり
「私は年なのでどこかに引き
そう言い老いた使用人はイチイナを置いてその場を立ち
一人座り込み、
もう誰も彼女を保護し、
それが実感として
「なんで……私が」
「それは創造神クレア―テ様がこの世界にいないからです!!! 」
それに驚き座ったまま後ろに、素早く移動する。
目の前には白い法衣を着た男性がいた。
逃げなきゃ。
そう思い立とうとするも、ショックの影響か立てない。
そして彼女の目の前にいる男性は
「この世界はクレア―テ様がお創りになった」
この世界に住む者なら誰でも知っていることだ。
イチイナは聞くふりをして警戒しながら、立とうとする。
「そして我らが
本当の事は分からない。
最後の部分は
「だが実際はどうだ? 出来ているだろうか?
「あ、貴方は一体」
「やはり創造神クレア―テ様にお戻りになっていただけねば……」
うっとりとした表情で語る白い法衣の男性は語り終えると優しい笑みを浮かべながらイチイナの方を向いた。
「我々『サンクトゥス・クレア―テ教』が貴方を幸福に
男性が差し伸べた手をイチイナは――。
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