第九十六話 エンカウント 二
「妹にね。好きな人が出来たらしいんだ」
「そ、そうですか……」
長椅子に座った男性は
重い……あまりにも重い。
何だこの
「前はね。小さくてかわいい女の子だったんだよ」
「は、はぁ……」
「そう小さくてね。でも元気
「それはさぞ
否定せず失礼がないように答えていく。
逃げたい。今すぐ逃げたいが、と思い
「そうなんだよ。もうね、隣の子と走り回ってね。それはもう
「そうですか」
その勢いに引きながらもどうにか逃げれないか
広場にあるのは長椅子とちょっとした
ダメだ。逃げる場所がない。
「でもね、
「それはさぞお
「うん。僕が知らない
貴族子女の
が、この青年貴族は貴族として話を聞いて欲しいのか、それともあくまで平民として聞いて欲しいのか分からない。
どう答えればいいんだ!
「ではその
「それが違うんだよ。婚約者はその
複雑ぅ! そしてなにその状況?!
結婚
「ふぅ、話したら少し楽になったよ。ありがとう」
「い、いえ。それほどでも……」
青年貴族はその
彼が見えなくなったあと俺はただ一人
「……平民に話すことじゃないだろ。だが結局何が言いたかったんだ? 」
そう独り
来た方向と逆、つまり銀狼へ
最終的にあの貴族以外他に人が
多分あの人一人だったのだろう。せっかくの休日だ。気を取り直して
★
そして俺はすぐに
「なぁ俺の話を聞いてくれないか? 」
「……はい」
俺が向かった先。つまり
しかし前の
「妹がよぉ。好きな人ができたってよぉ。言うんだよぉ」
筋肉の多さとは
騎士団にいそうな
人ってここまで
「……好きな人ですか? 」
「ああ。メイ……いや
今メイドって言おうとしたよな?! もう貴族だろう。隠しきれてないよ。
お
少し冷ややかな目で彼を見ながらも
「一緒にいただけでは好きな人とは
「いいや! 絶対に好きな人だ! 相手がもし……もし
声を上げる
「はぁ。まさか
ともすれば相手の男も気になるな。
「どのような人なのですか? 」
「どうやら冒険者らしい。年下で
複数女性を相手取るだとっ! 確かにそれは家族として
いくらこの国が一夫多妻制とはいえ
しかもそれが貴族
うんうんと
「少し気が楽になった。帰って剣でも振ってその男を切り
「貴族ってのは……武闘派なのか? 」
そう疑問に思いながらも少し考える。
この先行くと恐らくまた貴族に会いそうな
……道を戻るか。
そう
「少年。現実とは
「……今それを実感しています」
「? 君の
三十代前半と思しき貴族の男性に声をかけられた。もちろん
お
というわけにもいかず立ちすくむ。
「まぁ立ったままじゃなんだ。
「では失礼して」
「僕に
何だろう、ケイロンに
それに一般人と言い
「この前ね。娘に好きな人ができたんだ」
「娘? 」
「はは、
「四十っ!!! 」
ありえないだろ……。どう見ても三十前半だ。いや下手をすると二十代と言われても不思議じゃない。
これは
「いつかは
「……自分は親ではないのでよくわかりませんが」
「はは、むしろわかったらすごいよ。本当は
「どういうことですか? 」
「今まで
なるほど。それなら
「でも……
心から
あー、なんで俺は貴族のごたごたを聞かされているんだ?
おかしいだろ。
「しかも彼はこの前
血の
むしろ俺はどうしたらいいんだ、この状況。
貴族の
「流れに……そう、流れに身を
「そうか……」
答えの一例を出したら少し落ち着いてくれた。
このまま何もなく終わってくれると良いんだが。
やがて俺の肩から手を離し、立ち上がりこちらをみた。
「話を聞いてくれてありがとう。また今度お礼でもするよ。アンデリック君」
そう言い残しその貴族は立ち
なんで俺の名前を知ってんだ?
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