ミッション『お嬢様を援護しろ! 』  二

 レスト魚のステージも終わりミッションも次のステージへ移行していた。

 今アンデリック達は市場いちばを離れ、歩いている。

 そこへ――


「おおっと、ごめんなさいね。水が……」


 花壇かだんに水をやるふりをしてセレスティナに水をかけようとしたのだが回避かいひされた。


「え? なんで? 」


 その素早い動きにショックを受けながらも失敗を連絡する。

 次から次へと作戦を実行じっこうするが全部失敗した。


「くっ! 流石お嬢様がみとめた殿方とのがただ。一筋縄ひとすじなわじゃいかない」

「これヤバくない? 」

「次だ次! 」

「おおっとそうはいきませんよ!!! 」

「「「誰だ!!! 」」」


 作戦を次々と実行じっこうしているとどことなく声が聞こえてくる。

 一斉いっせいにそちらの方を向くと三人のメイドが腕をみんでいた。

 服装はメイド服なのだが仮面かめんをしている。そのおかしなみ合わせに一同いちどう開いた口がふさがらない。


ひとつ、我らのお嬢様のためぇに!」

ふたつ、私達のしょくの為!」

みっつ、お嬢様の恋路こいじ邪魔じゃまするものは~」

「「「我らドラグ家のメイドがゆるさなぁいぃ」」」


 カカン! と持っているモップを地面にたたきつけリズミカルにアクアディア家の使用人達にげた。


「ドラグ伯爵家の使用人?! 」

「ちょっ! 何正体がバレてるのよ?! 」

「アイナ、今さっき名乗なのってしまったわ」

「せっかく仮面かめんで隠しているのに意味ないじゃん?! 」

「「「……変人へんじんだ」」」


 アクアディア子爵家の人達もやっていることは同レベルなので彼女達の事は言えないが、外見がいけんだけ見ると確かに変人へんじんだ。加えて自分から名乗なのりを上げてバレてないと思っているのが痛々いたいたしい。


「ザ……ザザ……作戦失敗しました! 応答おうとうねがいます」

「こちらC隊、大変です! レスト総隊長が魔力欠乏で倒れました」

「何?! それは本当か! 」

「こちらA隊。現在ドラグ伯爵家の使用人と思われる三人組と遭遇そうぐう。プランDへの移行いこう進言しんげんします。応答おうとうねがいます」

「……ザザ……ザ……ザザ……」


 彼女達を前にして状況を各隊長に伝えるがノイズがかかった音しかしない。

 それに嫌な予感よかんが走ったのかあわてて指輪に怒鳴どなる。


「各隊応答おうとうねがいます! 各隊?! 隊長!!! 」

「ザザ……ザ……」


 普通ではないノイズのかかり方に嫌な予感よかんが当たったと言わんばかりに、手から視線しせんはず仮面かめんメイド達を見て正体を当てる。


「これは……まさか阻害そがい魔法?! 」

「ふふふ、貴方達が伝達メッセージでやり取りをしているのは確認みです」

「分かっているなら対処たいしょは簡単」

「魔力干渉かんしょうによる阻害そがいをすればいいだけ」

「な?! まさかこちらの魔力波動まりょくはどうに合わせたというのか?! 」


 その無駄むだ高性能こうせいのうなメイド達に驚きくやしさのあまりこぶしにぎる。

 さもこの程度当然とうぜんと言わんばかりに目の前の龍人族達に言い放つ。


めてもらっては困ります。そのくらい朝飯前あさめしまえです」

「くっ! これでも指輪はオーダーメイドだぞ! それに相手の魔力波動まりょくはどう見抜みぬち消すだと! 」

馬鹿ばかな、どれだけ高等こうとうな魔法を使ってるんだ……」

「「「さぁすべては私達の話のネタの為におどってくださいな」」」


 途轍とてつもなくくだらない理由により無力化されていくアクアディア子爵家の者達。

 だが彼ら隊員の妨害ぼうがいは始まったばかりである。


 ★


水球ウォーター・ボール! 」

水球ウォーター・ボール! 」


 一人と一個隊は町の屋根やねをかけながら魔法戦をひろげていた。

 アクアディア子爵家側が魔法を放つと同種どうしゅの魔法でち消す。

 さも当然とうぜんのようにドラグ伯爵家のメイドの一人——サラが行っているが高度こうとうな技術である。


「ちっ! 相手は一人だぞ」

「何で俺達よりも魔力が少ない小娘こむすめされてんだ! 」

「数で上まってるのよ! なんで!!! 」


 サラの異常いじょうな実力に驚き少し動きがにぶった隊員達。

 一人の土龍人の角が黄色に光り魔法を発動はつどうさせようとするが――

 

「甘いですよ。ハッ!!! 」

「ぐふっ! 」

「きゃぁっ! 」


 サラの掌底しょうていらいくずれ落ちた。

 土龍人の腹部に一撃を与えたそのすきに倒そうとした獣人の女性隊員が回しりでノックアウト。

 今日彼らが市民にけ込むために武装ぶそうしていないのがあだとなった。

 け込めていたかは疑問だが。


「さぁ残るは貴方だけです」

「あ、あ……あぁ……」


 最後に残った隊員も呆気あっけなく意識をり取られこのはサラの勝利となったのであった。


「ふぅ。こちらは終わりましたね。それにしても……いつ彼らはいつ私が魔法使いと錯覚さっかくしたのでしょうか」


 そう言い今回は使わなかった木製の棘のついた球モーニングスターをドン! と落とし一人つぶやいた。


 ところ変わって北の森方面では。


「あははははは!!! 魔硬散弾バレット! 魔硬散弾バレット! 魔硬散弾バレット! 」

「ちょっ、この子いかれてんじゃない?! 」

「うぉっ! 容赦ようしゃねぇな! 」

「痛てっ! かすった! 今かすった! 殺す気かこの威力いりょく! 」

「あははははは! 魔硬散弾バレット! 魔硬散弾バレット! 魔硬散弾バレット! いつもいつもいつも私に大変な役目やくめし付けて! メイド長ぶっ殺す!!! 」

「「「いや、俺達メイド長じゃないんだけど?! 」」」


 ルナは黒髪をなびかせながら魔法で浮遊ふゆうし上下左右見境みさかいなく魔弾まだんを放っていた。

 屋敷やしきでお馬鹿ばか三人組として一括ひとくくりにされている彼女は日頃ひごろ鬱憤うっぷんを彼らにぶつけていた。

 と言うのも一括ひとくくりにされているものの本当の役目やくめは他の二人の調節ちょうせつとやらかしたことの報告、つまりお守である。

 最も話しているあいだじょうきいつのにか本当にお馬鹿ばか三人組の一人として遜色そんしょくないお馬鹿ばかっぷりを発揮はっきしていることに本人は気付いていないが。


 ともあれ持っているモップを三回ほど回転させ魔硬散弾バレットを三組発動はつどうさせる。


「そう何度も同じもんを喰らうかよっ! おお? 」

「ちょっ! なんで私の方へ来ているのよ! 」

追尾ついび機能?! 」


 っている三人を倒そうとしたと思いきや魔硬散弾バレット軌道きどうを変え女獣人の方に向かって行った。

 その持ち前の身体能力を使いたいらな地面を走るがついてくる。

 黒い残像ざんぞいうを残しながら追尾ついびし――そしてアクアディア子爵家の獣人はやられた。


 彼女が倒れる中、他の者達はそれぞれ武器をかまえ――前のめりに倒れた。


 追尾ついびしていた他の魔弾まだん操作そうさし後ろに回させ、攻撃したのだった。

 こうして北の戦いは終わりをげる。

 高笑たかわらいをするメイドを一人残して。


 そして南方面ではアイナ達が戦っていた。

 終わった。


「ちょっ! 私の勇姿ゆうしは?! 」

「「まぁアイナですから」」

「ちょっ!!! 」


 見事みごとアクアディア子爵家の面々めんめんを無力化しアンデリックとセレスティナを引っ付けようとしていた彼らの引きがしに成功したドラグ伯爵家のお馬鹿ばか三人組であったが、彼女達はまだ知らない。


 本当の恐怖メイド長の怒りという物を。


「ちょ! 本当に終わるのですか?! 」

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