第二十五話 臨時休業 二
危機感
「何かすることはないのか? 」
誰にともなくそう
思えば何もしない日というのはこれが初めてかもしれない。
村にいた
こうも
ドン。
ん? 何だ?
壁の方から音が聞こえた。
何だろう、と思い壁に近付こうとしたら扉からノックの音がする。
「デリク、今大丈夫? 」
「大丈夫だ、入ってきていいぞ」
ケイロンだ。
音は気になったものの特に気にすることもなく、入ってくるよう伝える。
キー、っと音を鳴らしながら扉が開き黒いポニテを弾ませながらケイロンが入ってきた。
「お昼は大変だったようだね。フェルーナさんに聞いたよ」
「いや、
痛みも違和感もないが、あれは二度と味わいたくない。
ある種のホラーだ。
「だけど、女の子に「あーん」なんて……いい想いしたんじゃない? 」
「何がいい想いだ。もうあれは
ケイロンが意地悪そうに言う。
「ならケイロンが
「え? 嫌だよ、そんな。前もってわかっている危険に
「いやいや、もしかしたら
「半日も
首を振りながら、自分は嫌だとポニテを
なら言わないでくれ。
黒い瞳がこっちを見る中、彼は
そして茶色い紙の
「
「お、仕事が早い」
「Fランクの依頼だからね。残り物ばっかり」
「やる人がいないからな。仕方ない」
「逆に
「そう言えば、ケイロンはいいのか? 」
「何が? 」
「この前見たが、少なくてもFランクじゃ
「あぁ~いいよ、いいよ。そんなに
ハハハ、と笑うケイロン。
しかし、不思議だ。
スライムとはいえあの動きはどう見てもFランクの実力じゃない。じいちゃんほどじゃなかったがそれでも
それに着ている物もそうだ。
パーティーを
『普通じゃない』
それに
しかし最低ランクに甘んじている。
どういうことだ?
まぁ
「君が明日には回復すると
「で、どんな依頼だったんだ? 」
「ヘレンさんの所の解体
「了解、それで行こう」
「もう出しているから安心してね」
「俺の了解なしにか? 」
「この依頼なら了解すると思って」
「なるほど」
「もしかして、ダメだった? 」
「考えあっての事だろう? 大丈夫だ」
うるうるとした瞳でこっちを見るケイロン。
そんなんだから女と間違われるんだよ!
ケイロンはよかった、と
受付嬢に変な依頼を入れられる前に入れたのだろう。
「
「え? んー」
ほらほら当ててみて、と
これは、
「……あの受付嬢に変な依頼を入れさせないため」
「えー、つまんないな。正解」
「
「何か今日はいなかったよ」
「え??? 受付嬢って休みあるの? 」
「流石にあるでしょ。多分
あ、確かにそう言われれば。
でも専属が休みって……いいのか?
「だから今日あの
「流石、ありがと」
「いえいえ、それほどでも」
「ならヘレンさんの所に行けばいいんだな」
「うんそう。時間も
「……なんか思ったよりゆるゆるだな」
「Fランクというのもあるだろうけど、多分ヘレンさんが
「そうか? 」
「だってさ、前の依頼でさえ受ける人がいなかったんだよ?
ケイロンは「多分僕達をあてにしての事だろうけどね」と言い紙をひらひらとこちらに向けながら
ん? そう言えば、
「ん? 他の
「これはこの町の地図や周囲の
「え? そんなもの売ってるの? 」
「売っている、というよりも冒険者ギルドにあった」
「それ、かなり重要なものじゃないのか? 」
「重要だよ。冒険者ギルドの資料室にあったから書き
「いいのか? そんなことして」
「きちんと了解はとってるよ」
見ていて
何せ重要
「まぁ行政は頭痛いだろうね……」
「ケイロンのような人がいたら、な」
「違うよ!!! はぁ、こういった資料が冒険者なら無条件で手に入る状況に、だよ」
バンバンバンと机を叩き、強く否定した。
確かに、頭を抱えるだろうな。
それこそ町の地図が敵国に渡ったら大変だ。
「でも、行政が
「
一息つき、はぁーっと
そして説明しだす。
「ギルドと行政は相互不干渉が
「ふむふ……む? 」
「これは冒険者ギルドに限らず他のギルドにも言えること……。例えばギルド内で不正があったとしてもそれを
「ギルドというのはつくづく
「本当にね」
その顔にはどこか疲れた様子が見えた。
「だけど行政もギルドの
「
「そう。つまり
「町の憲兵さんとかじゃいけないのか? 」
「……人を雇ったりモンスターと戦闘が出来るように憲兵さんを育てるにはかなりお金と時間がかかるからね。厳しいと思うよ」
持ちつ持たれつということか。
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