第八話 宿屋『銀狼』 三
フェルーナさんの声に
もふもふしている金色の
「ねぇ、デリク。変なこと考えてない? 」
「え? そんなことないけど」
そう? とだけいい、一瞬こちらを振り向いたケイロンは再度前を向く。
だが彼自身も右に左に
目が
わかる! 分かるぞ! その気持ち!
あのもふもふ!
流石ガルルさんの妻なだけはある。
物凄いもふもふ具合だ。
ガルルさんの
元気よく
流石ガルルさんを
ふぅ……神はここにいたのか……。
ガルルさんの銀色もふもふとフェルーナさんの金色もふもふ……合わせて金銀夫妻といった所か。
一人そのもふもふ
一階へ行くと、そこには丸い机に丸い椅子。
その上に置かれたお椀の上にはサンドイッチが
「お昼も過ぎ夕食も近くなることから少なめの食事にしました」
俺達に着席を
「し、白い……パン……ですか! 」
「ええ、そうです」
ニコリとして返事をする。
何やら簡単そうに言うが、基本的に
司祭様がそう言ってた。
ケイロンも驚いているようだ。
目の前に置かれた野菜が
「す、すごい、です、ね。どこから仕入れているのですか? 」
「企業秘密です♪ 」
「確かパンは水辺の工房で作られてるはず、なんです、が」
「企業秘密です♪ 」
笑顔が……怖い。
どこから
「フフン! 驚いたでしょう! このパンは、ムグー!!! 」
フェルーナさんは
そのまま
口から
何やら重要なことのようだが、これ以上
ケイロンもフェナの様子を見て
元より
これで
だが……
「このパン。宿をするより売った方が
白パン自体、貴族の食べ物というほど高価だ。
だが少なくとも宿のメニューにするということは、値段を抑えられるのだろう。
ならば数を
「他のパン屋さんに
少し困ったような顔でフェルーナさんが言う。
頭に疑問符を浮かべているとこちらをみたケイロンが俺の疑問に答えた。
「デリクの村もそうだったかもしれないけど、基本僕達が食べるのは固い黒パンだよね? 」
「そうだけど? 」
「で、黒パンは大体水につけて柔らかくして食べるのが普通」
「ああ」
「で、この
「どういうこと?」
「つまりこの白パンをパン屋で出すと――数量を限定しても、他のパン屋を
「え……えぇ?! パンに! 」
「それだけ価値があるってこと。それにまだ暴力なら何とかなるかもしれないけど……」
「けど? 」
「あらぬ
その言葉に
そこまでするのか!
都会、恐ろしいぃ!!!
「そういった理由もありますが……
と、良い顔で言った。
こっぱ
「「クレアーテ様の
創造神へ向けた食前の
手を組み、少し
そして白いパンを手に取り、口にいれる。
ふっかふかや!
食べたのか一瞬分からなかった!
溶けるような感じだ。
中に挟んでいるレタスとハムの食感でやっと分かったくらいだ!
ハムも最高!
何の肉かは分からないが、とても
食べたことのない味だ!
塩味が効いてて、口の中を
レタスのみずみずしさも
半分くらい食べ、水を一口。
村では味わえない食べ物に驚いたと共にその美味しさから手がとならない。
ぱくぱくぱく、と食べ一瞬にして机の上にある食べ物がなくなった。
「ふぅ……
「ありがとうございます。サンドイッチを作った
「それはよかったわ! 私が手伝ったもの! まずいなんて言わせないわ! 」
フェナが
そう聞くと
一つ一つに味の違いがあるような気がしてきた。
不思議だ。
「何よ! その反応! そっちのお姉さんはともかく、お兄さん! 失礼でしょう!!! 」
ブフォ―――!!!
ゲホッ! ゲホッ!
ケイロンが、むせた。
手に持っていた木製のカップを机に置き、
「ケ、ケイロンがお姉さん! ハハハッ! ケ、ケイロンがお姉さん」
俺も笑いが止まらない。
お腹を
ひぃー、ひぃ……。
腹が痛い。
顔に出てしまったのは申し訳ないが、それ以上にフェナが申し訳ない事を言っている。
「ケ、ケイロンは男だよ、フェナ」
「え? ええ???? 」
フェナが混乱する。
俺達二人を見て、訳が分からない、といった表情をしている。
「た、確かに
「え? だって……」
「……フェナ。これにはやんごとなき理由があるのだと思いますよ」
やんごとなき理由というのがいまいち分からないが、フェルーナさんは最初からわかってくれていたようだ。
十歳の女の子には
むせかえっていたケイロンが復活した。
「これでも一応男だよ、フェナさん」
「本人も、そういってんだ。フェナ」
ケイロンの言葉に、ガルムさんが言葉を乗せる。
何か
金銀夫婦とその娘は何やら話し込んでいるようだが、よくわからない。
向うの状況を放置したのだろう、ケイロンが俺の方を向いて口を開いた。
「さて、これからどうしようか? 」
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