第2日目 りんごジュース

昨日は、母方の叔父の家へ行った。「参りにいくかねぇ」と言われて「どこへ?」と返した。祖母の位牌のある仏壇へ、だった。

お盆だ。そうか。

おとつい、母と姉が話していたのを小耳に挟んだから聞いた。

「予定は何かある?」

不定期な休みの姉は、休みの日に用事をぶち込む。

駅前のショッピングモールにある足のマッサージ屋さんへ行って、それから「時間があれば行こう」とのこと。よって、姉の帰りをまず待つこと。

帰ってくるだろう時刻になっても何の連絡もなく、着替えてから化粧をして待つ。暑い廊下で冷房もなく、折角、着替えた服も汗で汚れる。

「待ち疲れるねぇ。」

言ったら、母は、ふふっと笑った。

姉の運転で行く。駅前から帰ってくる姉。

「混んでるんだろうね。」

いつも徒歩とバスで移動する私は、自分では運転しない。

バスの路線と、姉の帰ってくる道は、同じところを、一旦、通る。運転しない私にも道路事情は少しは分かる。

家の中を、意味もなく自室に戻ったり、うろうろして、耐えきれなくなって、外へ出たら、向こうから車が1台やってきた。姉だ。

車を停めて出てきたから、

「トイレ行っとく?」

「ちょっと待っといて。」

軽の自動車。脇で立って、またうろうろ。景色を眺める。

風もあって、いくらか過ごしやすい。なんせ暑いのには慣れていて、ちょっと雲も出ているから、太陽の直射がない。

手持ち無沙汰で待っていた。

畑で穫れたカボチャとキンウリを持って母も来た。

助手席には私が乗り、やっと出発。

道の選択肢は、それほど多くない。いつもどこかへ行く道を、やっぱり今日も辿って、冷房を利かせた車内でラジオを点ける。いい番組はやってなかった。声を張って言葉を交わす。

着いてから、離れのある家の、離れのほうへ案内された。祖母と、祖父と先代夫婦の遺影が掛けてあり、皆で般若心経をつっかえつかえ。叔父の低音も、時折、中断されて、また加わって、読み終えたら母屋に戻り、お持たせのカステラと、「飲み物なにがいい?」

お茶が、このところ美味しいから、普通に「お茶ください」と応えたが、「りんごジュースは?」と逆に薦められた。

「おいしいやつ?」

叔父の顔を真っ直ぐ見て、

「うん、おいしいやつ」という答えの間髪入れずに、

「ほしい。あとでいただきます。」

めずらしい白いトウモロコシもいただいて、おいしかった。黄色い普通のものと食べ比べをしてほしかったらしいが、おなかいっぱいでやんわりと断った。

お茶には氷が浮かべてあり、そのグラスで飲み終えて、りんごジュースを注いで飲んだ。おいしかった。テレビを見たり、他愛ない話をして、早々に、おいとますることにした。

帰りに、りんごジュースを2本も持たせてくれた。

今、冷蔵庫から出してストレートで飲んだりんごジュースは、

「うんまい。」

甘酸っぱくて濃い。本当に美味だった。



<了>

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る