第4話

 そう言ってリリアヌス先生は教室を出て行った。

それを見た生徒達が次々と席を立ち始める。

「ねえ、あなた名前はなんていうの? 私はセシリアンナっていうんだけどよかったら一緒に帰らない?」

「えっ? あっうん。いいよ」

「やったー!じゃあ決まりだね! あっそうだ、せっかくだし他の子も誘わない? みんなで一緒に帰った方が楽しいしさ! それにあなたのことももっと知りたいし!」

「う、うん。わかった。じゃあとりあえず声かけてみようか」

「おっけー!じゃあちょっと行って来るね!」

「あっ、ちょっと! あんまり走っちゃ危ないよ!」

「わかってるってばー!」

まったくしょうがないなぁ……。でも元気なのは良いことだ。

私は昔から友達を作ることができなかった。だから彼女達の気持ちはよくわかるのだ。「あの、ごめんなさい。少しよろしいでしょうか?」

「ん? ああ、なんだ君か。どうかしたのかい?」

私は話しかけてきた少女に返事をする。

「実は私のパートナーになって欲しいんです。ダメですか?」

「ああ、そういうことね。もちろんいいよ。喜んで引き受けさせてもらう」

「本当ですか? 嬉しいです! じゃあ早速帰りましょう!」

「ああ、わかった」

こうして私達は下校を共にすることになった。

「へぇ、君は騎士を目指しているんだね」

「はい、そうなんです。それで将来は自分の力で大切な人を守れるような立派な騎士になりたいんです。そのために今は訓練を積んでいるんですけどなかなか上手くいかなくて……だから貴方のような強い人と一緒なら頑張れそうな気がするんです」

「そっか、それは光栄だな。ところで一つ聞いてもいいかな?」

「はい、なんでしょう?」

「どうして私に声をかけてくれたんだい? 正直な話、君の実力なら他にもたくさん相手がいたと思うんだ。なのにどうして私を選んでくれたんだろうと思ってね」

「それは単純に見た目が好みだったからです! あっ、いえ、決して変な意味ではないですよ? あくまで純粋な意味ですからね! 勘違いしないでくださいね!?」

「えっ、あっ、うん。大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。それと私のことはニートと呼んでくれて構わないよ」「わかりました! ニートさんですね! 覚えました! 私のこともアンナとお呼びください!」

「わかった。改めてよろしく頼むよ、アンナ」

「はい! こちらこそよろしくお願いします!」

「さて、そろそろ帰るとしようか」

「そうですね。そろそろ暗くなってきましたし、急いで帰りましょう!」

「ああ、そうだね」

こうして私と彼女は帰路についたのであった。

「おはようございます、ニートさん。今日も良い天気ですね!」「ああ、そうだね。本当に良い朝だ。こんな日は日向ぼっこをしながらゴロ寝して過ごしたいな」

「そうですね! 私も今度やってみます! きっとすごく気持ちいいと思いますよ!」

「ははっ、確かに。でもやるとしたらベッドの上じゃない方がいいかもね」

「ええ、そうですね。できれば草むらの上でやりたいです」

「うん、それならなおさらだね。風を感じながら寝転がってみたいものだ」

「私も早くその機会が訪れることを祈っておりますわ」

「私もだよ。まあしばらくは無理だろうけどね」

「あら、どうしてですの?」

「だって私達まだ学生じゃないか。流石にそんな暇はないと思うんだよ」

「ああ、なるほど。たしかにその通りですわね」

「それに私はともかく、アンナはまだ子供だからね。ちゃんとした大人になってからの話だと思うよ」

「むぅ、失礼な人ですねぇ。こう見えても私はもう立派な淑女ですからね? 心外です!」

「ふふっ、冗談だよ。ごめんね」

「まったくもぉ〜。絶対に許しませんよ? なので罰として私と一緒にお昼ご飯を食べてください!」

「はははっ、仕方ないなぁ。わかったよ。一緒に食べよう」

「ふふっ、やったー! じゃあお弁当持ってきますね!」

「ああ、待ってるよ」…………

「それじゃあいただきましょうか!」

「うん、そうだね。じゃあ早速……」

「あっ、ちょっと待った!」

「ん?どうかしたのかい?」

「せっかくだから何か芸をして見せてよ!」

「芸か……。うーん、何が良いかなぁ……あっ、そうだ。アンナ、ちょっと目を瞑ってくれないか?」

「え? 別に良いですけど、どうしてですか?」

「ちょっと面白いものを見せてあげようと思ってね」

「へぇ〜、面白そうですね!じゃあ期待しておきますね!」

「ああ、任せてくれ」

私は彼女の顔に手を当てる。そしてそのまま口づけをした。

「んっ!? んー! んー!!」

「ぷはぁ……。どうだい? 驚いた?」

「はぁ、はぁ、はぁ……な、何をするんですか!!いきなりびっくりするじゃないですか!!!」

「いやぁ、君がキスして欲しいって言ってるような顔をしていたからついね。嫌だったかい?」

「べ、べつにそういうわけではありませんけど……少しだけ恥ずかしかったです」

「それは申し訳ないことをした。でも今ので満足してくれたかな?」

「はい、とても嬉しかったですよ。ありがとうございます。ではそろそろお昼ごはんにしましょうか」

「うん、そうだね。冷める前にいただくとしよう」

「はい! それじゃあいっきましょー!」

こうして楽しい時間は過ぎていった。

「おはようございます、ニートさん!」

「やあ、アンナ。今日も元気だね」

「えへへっ、ありがとうございます!ところで今日の放課後は空いてますか?」

「ああ、特に用事はないから大丈夫だよ」

「良かった!実は昨日街で美味しいケーキ屋さんを見つけたんですよ!それでよかったら一緒についてきてくれないかなと思いまして!」

「それはいいね。ぜひ行こうか」

「ありがとうございます!楽しみにしておいてくださいね!」

「ああ、私も楽しみにしているよ」……

「いらっしゃいませ!二名様ですね!こちらの席にどうぞ!」

「わあ!見て下さい!ニートさん!とっても可愛い店員さんですよ!」

「本当だ。それに綺麗な髪の色をしているね。まるで宝石のように輝いている」

「えっ? そ、そうでしょうか? えへへっ、嬉しいなぁ〜」

「ああ、君は素敵な女性だ。きっと君の旦那さんになる人は幸せ者だろうね」

「あっ、いえ!その、私はまだまだ未熟な身なので!もっと頑張って一人前の淑女にならないと!」

「ははっ、そうか。でも焦らずに頑張ると良い。応援しているよ」「あ、ありがとうございます! はい、私も精一杯努力します!」……

「うわぁ〜!このパフェすっごく大きいですね!」

「ああ、見ているだけで胸焼けしそうだ」

「ふふん、ニートさんには私のを半分分けてあげますよ!」

「おっ、それはありがたいね。じゃあ遠慮なく貰おうかな」

「はい!あーんしてあげますね!」

「あ、あーん……うん、甘いね。甘すぎて頭が痛くなりそうだ」

「ふふっ、そうですか?私はこれくらいの方が好きですけどね!」

「アンナは甘いものが好きなんだね」

「えへへっ、そうなんです。お砂糖たっぷりのお紅茶も大好きです!」

「それなら今度一緒にティータイムを楽しむというのも悪くないかもしれないね」

「あっ、良いですね!是非ご一緒させてください!」

「もちろんだとも。約束だよ?」

「はいっ! 絶対忘れません!」……

「ふぅ〜、やっぱりお風呂に入ると落ち着きますねぇ」

「ああ、気持ちの良いものだね」

「ふふっ、ニートさんの背中を流してあげましょうか?」

「え?いや、流石にそれはまずいんじゃないのか?まだ結婚もしていないのだし……」

「もう、そんなこと気にしなくて良いんです!ほら、こっち向いて下さい!」

「あ、ああ。わかったよ」……

「ふう……。良いお湯だったね」

「えへへっ、とっても楽しかったです!」

「そうか、それなら良かったよ」

「あっ、そうだ。あの……そろそろ寝る時間なんですけど……。一緒にベッドに入っても良いですか?」

「えっ!? ちょ、ちょっと待ってくれ。流石にそれは良くないんじゃないかなぁ?ほら、私たちは恋人同士というわけではないわけだし……ね?」

「大丈夫です!私を信じてください!絶対に変なことはしないって誓いますから!」

「いや、そういう問題ではなくてね……。うーん、困ったなぁ」

「お願いです! ダメですか?」

「ぐぬぬ……仕方がない。今回だけだからね?」

「やったぁ!ありがとうございます!じゃあ失礼しまーす!」

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