第3話

 〜〜〜〜〜〜

「ふぅ、やっと着いたわね」

馬車から降りて大きく伸びをする。すると目の前に大きな門が現れた。これがロイヤル魔術法導学園か……

思ったよりも立派な建物じゃないか。

きっと金にものを言わせて作ったんだろうな……。

まったく金持ち共はいつもこうやって無駄遣いばかりするんだよな。

こんなことしている暇があったらもっと別のことに金を回せばいいのにさ……。「さて、いつまでもここにいてもしょうがないしとりあえず入るとするかな」

そう呟きながら校門の中へと足を踏み入れる。

するとそこには大きな噴水がありその周りでは沢山の学生達が集まっていた。

皆とても楽しそうだ。しかしそんな中ただ一人だけ浮かない顔をした女がいた。

それが私だ。

何故ならこれから入学式だというのにも関わらず未だに心の準備が出来ていないからである。

何せ生まれて初めての学校なのだ。

緊張しない方がおかしいだろう。

しかも俺は今日からこの学園に通うことになっている。つまりクラスメイトになるということだ。

正直不安でしょうがない……だって今まで友達一人いたことないんだもん。

だからと言って怖じ気づくわけにはいかない。

これは私が決めたことなんだからな! よし、いくぞ!

「すみません、遅れてしまいました」

「あら、あなたが噂のニートさんかしら?」

「はい、ニートです」

「ふーん、確かにパッと見た感じはどこにでもいる普通の女の子ね」

「そうですか? ありがとうございます」

「あっごめんなさいね、初対面なのにいきなり変なこと聞いちゃって。気に障ったのなら謝るわ。許してくれるかしら?」

「いえ、全然問題ありません。むしろ褒めていただいて嬉しいですよ。それで私は一体何をすればいいんですかね? 土下座でしょうか?

それとも靴を舐めたほうがよろしいでしょうか? なんなりとお申し付けくださいませ」

「いやいやそこまでしなくても大丈夫よ。ただちょっとだけ質問させてほしいことがあるだけなの。実はあなたの入学試験の成績についてなんだけど……あれは本当なのかしら? もしよかったら答えて欲しいのだけど……」

「はい、もちろん事実ですよ。全て本当のことです。筆記試験は満点で実技試験も文句なしのトップクラス。その結果があの順位というわけですね。まあ、当然の結果といえばそれまでなんですけどね」

「なっ!? ほ、本当にあの子がそんなことを!? 信じられないわ!」

「まぁ、無理もないと思います。なんたって私の見た目は完全に普通以下の人間にしか見えないですしね。でも安心してください。私はどんな時だろうと全力を出しますので。それと私に敬語は必要ないので普段通りに話してもらえると助かります」

「わかったわ。じゃあその言葉に甘えさせてもらってもいいかしら? じゃあ改めてよろしくね、ニートちゃん」

「はい、こちらこそよろしくお願いします」

「ところで一つ聞いていいかしら? どうしてそんなに強いのか理由を教えてもらえないかしら。もし良かったら教えてくれないかしら?」

「ああ、そんなことですか。別に大したことじゃないんですよ。昔、ある人に助けてもらったことがあったんです。その時は本当に嬉しくて、自分も誰かを助けることが出来るようになりたいと思ったんです。だから必死になって努力しました。ただそれだけのことなんです。だからあまり参考にはならないかもしれませんよ」

「なっ……! そ、そうなの……」

「はい、そうです」

「そう……なの……」

彼女は驚いたような表情を浮かべている。

どうしたんだろう? 何かまずかったかな? もしかしてまた余計なこと言っちゃったか? でも嘘をつくのはなんか嫌だしな……。

うーん、やっぱり正直に話すしかないか……。

でも今更取り消すことはできないしもう言うしかなさそうだな……。

「あの、私の話はもういいんで早く中に入りましょう。これ以上遅くなると式に遅れてしまいますから」「えっ!? もうこんな時間だったの!? そ、それは大変だわ! 早く行きましょう! 急いで行けばまだ間に合うはずだわ! ほら、こっちに来て!」

「ちょ、ちょっと待ってください! まだ心の準備が……!」

「そんなの必要ないわよ! とにかく急ぎなさい!」

「はい……わかりました……(泣)」

こうして入学式は始まりを迎えたのである。

〜〜〜〜〜〜 入学式が終わった後、私は自分の教室へと向かった。

ちなみにこの学園は一学年につきA〜Fまでの6つのクラスに分かれている。そして私が振り分けられたクラスはAクラスだ。

Aクラスの担任は確かあの人だよな……。

まさかこんな形で再会することになるとは……。

「よし、全員いるわね。では早速自己紹介をしてもらいます」

そう言って一人の女教師が教壇に立つ。その顔を見て思わず目を見開く。何故ならその女教師の顔に見覚えがあったからだ。

間違いない……あいつだ……!

「初めまして皆さん。私の名前はリリアヌス・オブリアージュナといいます。これから三年間このクラスで皆と一緒に過ごすことになります。なので仲良くしてくださいね。では一人づつ自己紹介をしてください。出席番号順でいきましょうか。では一番の方からお願いします」

「は、はい! わ、私の名前はマラホって言います! 趣味は読書です! あと好きなものは猫です! えっと、よ、よろしくお願いします!」

「はい、ありがとうございました。とても可愛らしい方ですね。それでは次の方が自己紹介を始めてください」

「はい、俺の名前は……」…………

「ふぅ、これで全員終わりましたね。それでは最後に私からの挨拶をしたいと思います。私は先ほども言った通りリリアヌスと言います。これからよろしくお願いしますね。さて、それでは今日のところはこれで解散となります。お疲れ様でした。明日は朝八時にここに集合してください。それでは今日はゆっくり休んでくださいね」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る