第16話 謎キャラは味方なのか、敵なのか


 私たちの母星、地球。


 環境破壊、国家間戦争などが相次いだ結果、私たちの星は人類が住めない環境へと大きく針路が歪んでしまいました。

 国連主導により計画されていた、人類移住計画。

 試験稼働が終わり、第一次移民船団が地球を離れた数ヶ月後に、地球からの通信は途絶、軌道を変えることができないまま、目的の星へと長い旅を続けることを余儀なくされてしまいました。


 それから15年。

 目的の星に到達し、移民船が惑星表面に着陸。

 その目の前に広がっていたのは、地球から眺めていた緑の星ではなく、荒野でした……。


 幸いなことに大気はあり、オアシスらしき場所もあります。

 だが、見渡す限りの荒野、私たちは、この移民船の生活区画を居城としながら、この地での開拓を余儀なくされました。


 ………

 ……

 …


 ──惑星ピオニーア

 かつて、この星にやって来た祖先たち、その移民船の名前。

 この、何もない星に辿り着いた先祖は、ピオニーアが停泊する地を中心に、ゆっくりと開拓を進めて来ました。

 少しずつ、ゆっくりと、だが確実に。

 円を広げるかのように開拓を進め、幾つもの村を築き上げます。

 それはやがて町となり、都市となり、多くの人々の生活する基盤となりました。


 私たちの運命の転換期、それはこの星にあった古い遺跡、そこから発掘された『魔導機関マギ・リアクター

 それは、魔力を吸収し、エネルギーを生み出す装置。

 それが発掘され、研究されてからは、人々の生活には魔導機関はなくてはならないものになっています。

 だが魔導機関の小型化は難しく、車一台走らせるにもその半分の大きさの魔導機関を積み込まなくてはならず、街のあちこちにも大きな魔導機関マギ・リアクターを設置しなくてはなりません。

 そこから送り出されるエネルギーも、太いパイプの中に『レアメタル』によるケーブルを通して送り出されており、私たちの生活は不恰好な開拓時代に突入しました。


 ──そして今

 人類がピオーニアに到着して500年。

 惑星歴500年、私たちは、まだ、開拓を続けています。

 なぜなら、星の裏側、そこには前人未到の地が広がっていますから。


 私たち人類が越えることのできない『プラズマの海』と呼ばれる、海面全てがプラズマ活性している『死の海』が広がっていますから。


 ここを超えた時、私たちはまた、新しい時代を迎えることができるのかもしれません。



 これが、EFOの開始冒頭に流れるプロローグ。


 それにあやかり、EFOをメインに活動している人をピオーニア人、逆にヨルムンガンドをメインとして活動しているがEFOに来た人をマグナ・カルタからの旅人などというんだけど……。

 これは、日本人にしか通用しない隠語なはずで........。

 ということは彼も日本人ということなんだろうね。

 残念だけど、私にはそういうことが分かる術はないんだよね。

 特権機能『国籍表示』っていうスキル?でもないかもだけど、それでそのユーザーがどこの国の人なのかを知ることができるらしいんだけど。


 使えるのが、北条氏の次男ー充さん、あと彼の相棒ー優輝ちゃん達直接監察課のメンバーと、充さんの前職である総務省フルダイブ技術監督課にいる特別司法警察員の調査員三名くらいだっけ?

 あと、私たち関係だと、ユメカガクの統計調査員の二階堂さんと北条社長、あと実質ナンバーツーの足立さん、ナンバースリーの三浦さんぐらいだったかなぁ。


 まぁ、世界各国の不特定多数のプレイヤーの重要な個人情報は漏洩させることが出来ないものなので、司法機関やそれに準じる組織や、超中核のメンバー以外には中々難しいものなんだろうな。

 だから、実質初期メンバーの中では一番年も、能力も下の望さんはこのような能力は授かっておりません。


 ここではあったら結構役立つと思うんだけど。

 まぁ、仕方ない。

 でもさ、この今ほど声をかけてくれた男の人ーコード・アイロニーというらしいが、はどう考えても日本出身らしい。

 しかし、仕事の影響でアメリカに行っておりそこで、EFOが発売されてプレイしていたらしい。

 それは、認めると言うか、認めざる負えない事実なんだけど……。

 何となく、彼は何かを隠しているそんな気がするからな。

 あんまり認めたくないんだけど。


『全てが本当のことではない。噓も紛れ込んでいると思うべし。』


 これは、私のおばあちゃんの口癖。まぁ、本当は彼女の父親ー私にとっては曾祖父の口癖だったらしい。曾祖父さんには会ったことないけど。

 なんか噂では、何か凄い組織を率いていた人らしい。

 その組織についてはあまり皆教えてくれなかったけど、杜和が高校時に少しグレテいた時には『血だな。』とか言ってたからヤクザとかそこらへん関係なのかなと少し予想中。

 まぁ、本当の答えは知らないけどね。


 にしても........。

 滅茶下二人と打ち解けるの早いな⁉

 のわりに、私にはなぜか警戒しているらしい。

 って言っても、最初からしていたわけではないけど二人と話していると途中から急に私にはあたりが強くなったんだけど?なんで?

 二人ったら何を言ったんだ?


 まぁ、ひとまず彼から情報をもらっていきますか。

「あの、エーチとララと仲良くお話しされているところすみませんが、私からいろいろ聞いてもよろしいですかね?」

「うん。いいよ。大魔導士さん。」


 いや、なんでその俗称をご存じなのですか?二人が言いましたか?


「いや、彼らは言ってないけど僕が知り合いから聞いていただけなんだよね。」

「そうですか。っては!? どんな友人さん何ですか?」

「別に話してもいいけど、長くなっちゃうから聞きたいこときけなくなっちゃうよ?」

「えっ、じゃあ先に聞いておこう。」

「うん、でもまぁ。二人から聞いた限り皆はRINGクエストについて調べているみたいだね?」

「ええ、まぁ。それ関係でこちらで行われるらしいクエストに行こうと思ってきたんですよね。」

「うーんと?要は、リング関係かもしれなくてこちらの世界で行われてるクエスト?........。あー、もしかしてだけど魔導書クエストのこと言ってる?そのクエストなら今から知り合いと参加する予定だから近くまで一緒に行く?」

「いいんですか?願ったり叶ったりな話なのですが。」

「いいよ。ピオーニアまで行かないと行けないけど大丈夫かな?」


 二人にアイコンタクトをして彼を信用できるのかを確認。

 一番話していた二人ならそれくらいわかるでしょ?


 まぁ、それに万能鑑定眼も使ったけどそんなに危なそうなポイントはなかったもんね。でも、何か隠している。それは確定。鑑定眼で見たらだいたいのことはすべて洗い浚いにすることはできるんだけど……。

 この人所属の欄と、アイテムとスキルのいくつかが見れないようになってるね。

 そこが怪しいんだよね。

 でも、人物的には悪くなさそうだし、注意はしながらにはなるけどついて行っていいと思う。


「分かりました。ありがとうございます。」とエーチがいい。

 ララと同時に頭を下げた。

 私も頭を下げたが、気になることが一つあった。

「あの、先ほど、ワープ魔法は使えないとおっしっていましたが、どうやって行かれるのですか?」

「それは........。答えは簡単だよ。結構原始的なものだからこっちにもあるし、現実にもあるし。でもすぐ答えを言ったら面白くないから此処では言わないでおこうかな。」

「つまり、魔法関係ではないと?」

「そうだね。関係はしているけど、ヨルムンガンドほどには、それ単品では使われていないね。」

「?それはどういうことで?」

「そうだねー。それは出発の時の道中にでも説明してあげるよ。それじゃあ、俺はこれで……。あ、誰かフレンドになってくれない?場所とか伝えないといけないから。」

「だったら、俺が……。男性同士の方が気が楽でしょ?」と杜和がなってくれた。

 その時コードの顔が少し不満そうになっていた。

 多分、私と繋がろうとしたんだな。理由は分からないけど、友人さんとかと関係があるのかな?


 まぁ、これでクエストに取り組む準備はできたかな?


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【EFO ソルト 某所 とある組織のアジト】

「なぁなぁ、コードをあのクエストに参加させても大丈夫なのかよ?」

「うぁ?一度やめたから信用してないのか?」

「そりゃそうだろ。だってあいつがバグモンスターを逃がしたきっかけを生みだした張本人なんだぜ?」

「まぁな。でも、今回は大丈夫だろうよ。監視用に同伴者付けてるし、それ以外にも何人か近くに居座らせているんだからな。」

「まぁ、そうだよな。でもさ、もしかしたらこっちでも警察系の人に捕まったりとか、監視させるとか嫌なんだけど?」

「それは仕方ない。にしても、まさかこの前王都近くの実験場で作った、マグナム内蔵の特大魔道銃が破裂するとはな……。しかもそれでテロを計画してるだのなんだのってあらぬ疑いかけられたしよ。」

「まぁ、良いじゃん。そのおかげでほぼ全員が本部の近くに戻ってこれたんだし?」

「それに、王都が大混乱になったってことは、俺たちの真の目的に着実に近づいているってことだよな?」

「ああ、あのくそ野郎ー京極 優誠を消し去り、鳳亀麟ほうきりんを復活させることだ。」

「そうだよな。だから、そのために前組長であった法林 実弥ほうりん さねみさんの子孫である円満井望・杜和姉弟に賭けるしかないんだよな。」


 等と、順調な道路のウラには、私にも関わりそうな裏事情が渦巻いていた。

 しかも、それは私の仕事仲間とも深く関わりがあり、それが更なる騒動を起こすことになってしまうのだが……。

 今の私には、知ったことじゃないよね?

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