第9話 海の恵みと晩酌
<食事を楽しみたい部門>
杜和と湊翔が、IT技術に見入っている頃、私と結葵ちゃんは、というと……。
「うーん、海だー!!!!」
「海だー!」
二人で海に向けて手を挙げる。
そして、二人で顔を見て笑う。
「お?海の家っぽいのあるねぇ........。結葵ちゃん、行ってみる?」
「行ってみましょう!なんかおいしそうなものがありそうです!」
「うん!下にもなんか売店あるみたいだしね。行くかー!」
等と、暢気に食欲を倍増させていた。
そして、下で1番近くの場所で売られていたイカ焼きを2人で海岸線に沿って置かれていたパラソルと椅子の下で食っていた。
「にしても、海とか久しぶりだなー。」
「ほーはんでふか?(そーなんですか?)」
「うん。いつが最後だったかな?私が小学校に上がる前だと思うな。……うん。お母さんもいたしな。」
「ほうなんでふか。(そうなんですか。)」
「そうだよ。 ……いつまで結葵ちゃん、イカ食べてるの?」
「ぷは…… 全然イカ噛みちぎれないです……。」
しょぼんとしている結葵ちゃん可愛い!!
って、そういう話では無い。
うーん、海……。海と言ったら、私にとっては家族最後の全員そろっての旅行。あと、迷子になったこと。そして、新しくできた二人の友達……。
........。
そういえば、後で話すって言ってたっけ。二人ー小町と明日花ちゃんと会った経緯を……。うん、どうせなら思いついた今のうちに話しておこうかな。
まだ、結葵ちゃんイカ焼き食べてるし、追加で買った焼きそばも食べてないから。
そうだね。あれは、今から何年前だったかな。お母さんもいたから........。
ああ、そうだ。私の6歳の誕生祝いをホテルでしてたかな。だから、19年前かな。私が幼稚園最後の夏休みで、本当は園で一泊二日のお泊り会があったんだけど……。その時、運悪く私風邪ひいてしまって、参加できなかったんだよね。
それで泣きじゃくって、だからその代わりとして沖縄旅行に連れていってくれたんだ。当時はまだロシアに住んでたのに、何で日本だったのだろうかと思っていた。
しかも、暑い沖縄だったんだろ。これは今も分かってない。
そして、そんなことで、沖縄旅行をいたしまして、大満足で最終日を迎えていました。そこで、親は追加のプレゼントとして、島の形からクロワッサンアイランドと呼ばれている島へのツアーを用意してくれていたらしい。
私は最近まで、ずっと三日月島ってことで、クレッセントアイランドって呼んでたんだけど。
そこはそこまで大切じゃないんだけど。そこへ四人で観光ツアーに参加して、歩いていたら、一匹の猫が塀から飛んできて、私の前に躍り出てきた。そのまま、数歩歩いてから後ろを見てきた。まるで『私についてきて。』と言っているようであった。
そう思った私は、無我夢中でそのキジトラ猫を追いかけていった。そして、気がついたらどこかの神社に到着していた。
鳥居に注意していたら、いつの間にか猫が消えていた。
そのままボーとしていた。そして、理性を取り戻すと迷子になったということで慌て始めた。しかし、猫を追いかけるのに夢中になっていたので周りの光景など覚えているわけがない。そこに、二人の少女がこちらに駆けてきた。
そのうちの1人、ゆるフワな髪をポニーテイルにしていた少女が私に気づいてくれた。
「ねぇ、えっと。もしかして迷子?」とその子が尋ねに来た。
「うん、そうみたい。ネコさんを追いかけてたら、ママたちと離れちゃった。」
それを聞くと本堂にお参りに行っていたもう一人を連れてきた。
「小町ちゃん。この子迷子になっちゃったんだって。」
「そっかー。多分ツアーの子だよね?だったら港に行けばいいんじゃない?私たちも海に行けるし。」
「そうだね。海に行こうよ。お母さんたちに会えるカクリツ?が上がると思うよ。」
「う……ん。ありがとう……、えっと........。」
「あ、私は、小町!こっちは明日花!ここの島の子供だよwww」と八重歯を見せながらニカと笑う。
「私は、望........。よろしくね。」
「うん!」「よろしく。」
ということで、二人の先導でというか、両手を二人に捕まれて海まで出た。
そこには、砂遊びをしていた杜和を見ているお母さんがいた。
「おかーさーんーー」と泣きながら、腕に収まった。
それを見て二人が微笑んでいた。
「「じゃあねー。」」
と二人が、家に帰る、かと思ったら近くの波返し護岸に腰かけていた。
お揃いの白いワンピースがもったいないとかと思ったのを覚えている。
それに、夕日に照らされて、天使かと思った。
そんな二人を遠くのカフェから見ている人がいたとかいないとか。
そして、私はその事件がきっかけで、その少女二人と出会い、今も……最近まで三人で仲良くやってた。あんな人に何であの子が殺されないといけなかったのか分からないけど。
って思っていたからか、泣いていたらしい。
視界がぼやけている。色がにじんでいた。
そういや、結葵ちゃんどこ行った。ボーとしている間に消えてるし。探さないと。
「今日はお疲れ様でした。」と、結葵ちゃんがいう。なんか嬉しそう。
何で?ってああ、そうか。さきほどかき氷を買いに行った海の家にあったロッカーを使ったらなぜか中に入っていた500円をもらえたことだな。
杜和もうれしそうだね。それはそうか。メカ大好き民が思う存分見れてるもんね。
なら、下二人はこのままお帰りかな。
私は、どうしよう........。 私も帰るか。
「おーい、これから一杯いかがです?」と横からジェスチャーしながらお酒に誘うめんどいやつもいるので、今日は飲みに行ってやろう。
その道中に事が少しだけ動いた。
電話が掛かってきた。渚沙さんからだった。
『もしもし、のぞみん。』
「はい、こんばんわ。何かありましたか。」
『今日は何もないよ。でも、この前のヘンテコモンスターの解析結果が出たから、一応伝えとこうと思って。』
「あ、なるほど。ありがとうございます。で、どうでしたか」
『うん。簡単に言ったらあいつら合成バグプログラムだね。』
「合成バグプログラム……ですか。」
『そうそう。これまで直したバグって一定の処理をして、サーバー内のごみ箱にしまうでしょ?』
「はい。」
『それらのコードーを使って何故かは知らないけどバグが起こってモンスターが構成されたらしい。』
「そうなんですね。わかりました。ありがとうございました。」
『うん、お楽しみの最中にゴメンね。じゃーね。』
「えっ!?それってどういう意味で・・・ 切れたじゃん。」
ああああああ。勝手に解釈するな。
確かに、あいつといるが、そういうことではない。
そんなこともあって、居酒屋ではいつもの倍くらいのペースで飲んでいた。
頭が痛くなってきた。そのままカウンターに突っ伏す。
「おいおい、そんなに飲んで大丈夫かよ。」と横から揶揄って来る。
「ウザイ。」と言って頬をつねる。
「へいへい、大丈夫そうじゃないので水取って来る。」と言って席を立つ湊翔。
そんな彼に、常連客の人は「あれが噂の彼女様か。」などと気さくに話しかけている。相変わらずのモテ具合で。意味少し違うかもだけど。
違うって分かっているのに、モヤモヤする。こんな自分が嫌だ。
「いつだって、順風満帆な私でいられたらいいのに……。」お酒を飲んだ影響か、いつも思っていたことがふいに口から飛び出た。
これは……湊翔には聞かせたくなかったことなんだけど........。
まぁ、聞こえていないようだからいいけど。
だって、湊翔の前だけでも出来る人を演じてたかったから。
でも、なんとなく『期待通りの答え』を待ってしまう。
閉塞感の正体だってさ、きっとわかっているはずなのに........。
あー、でも今回は答え聞けなさそう。
「いつか君と、恋に落ちたら……」そう、呟いて意識が飛んだ。
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東京 新宿区 某所
廃れたビルの非常階段で、ある密会は行われていた。
階段の踊り場で一人の女性が町の風景を見ながら携帯電話で会話をしている。
その会話を終えたらしい。非常ドアを見る
「もういいですよ。お待たせさせてすみません。」とドアに向かって告げる。
ドアが開き、オールバックのヘアにフチなしの眼鏡という見た目だけではインテリ系の人が出てきた。
「こんにちは。いや、こんばんわの方がいいですね。新稲さん。」とその男性は言う。
「そうですね。
「はい。それでは。」そう言って、男性は腰を折る。
接触は一瞬だ。しかし、その接触が今ゲーム内を旋律させつつある出来事の原因を産んでいたのだと、今の私は知る由はなかったのだが。
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