第10話 三度目の出来事

 二度あることは三度あるとよく言うが、本当に起こるもんなんだなー。嫌だなー。

 とかとも言ってられないか。

 頼むぞ、杜和。今回も人任せになってしまうのが少しばかり嫌なのですが、致し方ないと思っている。


 これが今回の敵であるマンモスなのか、ただの象なのか微妙な奴ーダンレイに対する【万能鑑定眼】の説明をもとに考え出した攻略法である。


 1.臀部から背中によじ登る

 2.背中から胸部や脇腹にナイフを突き立てる

 3.落ちないように気をつける


 そしてそれができるのは私たちの中では杜和しかいなかったのだ。

 だから、頼む。


【ゾウのオス同士の争いではお互いに鼻を押し付けあったり、牙で突き合ったりして勝敗を決めるが、相手が自分よりも遥かに小さい場合は前肢で蹴ったり踏みつぶしたりする】とかとスキルは言っていた。


『臀部からよじ登るという方法は一見すると無茶な事のように思えるが、

 実際は最も安全で合理的な方法なのだ。

 何故なら、アフリカゾウは馬のように後ろ蹴りをしないからである。

 もちろん踏みつぶされるリスクはあるが、注意しながら飛びつけば何とかなるハズだ。』と言ってはいたのがまたもやなぜかいた、ハウンである。


 今回は、彼のおかげで良い作戦が思いついたと思う。

 事の起こりは、1時間くらい前だ。昨日、居酒屋で意識が落ちてからの初の覚醒からが始まりだった。


 気づいたら、見慣れた天井........。

 湊翔、家に連れて来てくれたんだ。ありがと。

 後でお礼のライン入れとこ........。

 って、はぁ⁉

「あー、おはよう。ってあれ⁉なんで望がいるの⁉」と隣には昨日と同じ格好の湊翔。

「それはこっちのセリフじゃ!!!ここ私の家!」

「えー⁉俺、送ったときそのまま寝落ちしたの?」

「見たいだね。はぁ........。どいて、テレビ見たいから。」

「へいへい。」

 ピッ…

『6月19日日曜日8時になりました。おはようございます。』

 などと、某国民的チャンネルの朝のニュースで、アナウンサーが挨拶を始めた。

 ここは聞き流して、コーヒーでも入れようかな。


『本日は、このニュースからです。人気沸騰中のVRMMORPG『ヨルムンガンド・オンライン』にて3度目の未知なるモンスターの襲来イベントが発生した模様です。詳しいことはまだ調査中とのことです。プレイヤーの皆さんは気を付けてください。続いてのニュースはー』

「「はぁ⁉」」

 同時に、テレビを振り返って見ていた。

「どうなってんだ⁉」

「知らない!ともかく、二人を呼んでいくよ。」

「おう、分かった。」


 ということで今です。今回、回想の回収早かったね⁉


 その後、湊翔は一旦家にお帰り頂き、その間に私は杜和と結葵ちゃんの2人に連絡を入れた。

 そこで、今回の事件の発生場所が、エーチのスタート地点であるブリュナークであることを知った。

 この前考えた、未知モンスターの出現場所に関する予想が当たってしまったらしい。

 ということは、今回の事件は、何者かがこれまでに溜まっていた不要なコードを使って、合成バグプログラムなるモンスターを作り出し、ゲーム内を混乱させようとしていると考えられる。

 そして、問題はそれをしている人物とその人の目的がよく分からないことだ。

 ただ単にゲーム内を混乱させようとしているだけのようには思えない。なにかから手を引くように、そして他の人の視線をほかに向けるため、にしているように思われる。

 つまり、なにかを妨害したいのか?

 それなら、何を妨害したいのだ、犯人さんよ。

 まぁ、それが分かったら、問題じゃないよね。

 おまけにその犯人さんは、なぜか知らないけれど人払いをしたいらしいが、私を含めた陣営側は、この事件は世に注目させているため、AIが創り出したシンギュラリティ ー 特異点がもたらした新手のイベントであるのだと大々的に報じて、客足を呼び寄せる作戦に出ている。つまり、宣伝作戦に利用されてしまっているのだが、少し可哀そうな気がする……。けど、今回のように、利用者数をあげるためにニュースを利用したりは普通しないんだけどな。足立さん、何考えてんだろう。しかし、もしかしたら、今回のメディア放送は陣営の人がしたんじゃないのかも。

 それに、なんか、変な引力というか、この事件に関わらないといけない、そんな運命なんじゃないのかって思うことが少しある。

 もし、本当にそんな運命なのだとしたら、なんで私なんだろうなー。とかと考えていたらまたもや、寝ていた。


 何故か、最近考え事していたらよく寝てしまうことが多い。そして、その時の夢の内容........。だいたい、皆がいて幸せだったころのことをよく思い出す。

 だけど、何か大切なことを何か忘れているような........。

 うーん、なんだろう。

 兎にも角にも、この、モンスターは邪魔なので、消えてもらうとしますか。

「杜和ー!いいよ!」と声をかける。

 なんか、杜和今回はあまり見てほしくないとかと言っているんだけど。

 なんで?普通にいつもは見せてくれるのに........。

 分かんないけど、今日は自分一人でするんだって。

 まぁ、行けるよね。暗殺者だから。移動という面では気にしてない。あいつは人に気配を分からせない、そんなスキルがあるし。

 でも、問題は攻撃の威力なんだよね。私だと魔法で限界値まで上げるから。行けるんだけど、エーチはそういう反則技出来ないから、少し大丈夫かなとは思う。

 でも、行けると思っておく。姉バカかもwww でも、それくらいは許してよ。


 ---------------------------

 一方、そのころエーチは


「あああああああ!なんで俺しか行けないんだよ!確かに俺、暗殺者だから、隠れたり、足音とかなしで対象者まで行けるけど!!!! でも、それは全部スキルの影響だし!!」とアワアワしていた。


 ついでに、さっき俺が言っていたスキルは、これね。

【忍び足】物音を立てずに歩く。レベルにより難易度あり

【潜伏】物陰に隠れる。レベルにより成功難易度あり


 つーわけで、こんなスキルあるし、暗殺者させられてます。

「それはひとまず置いておこう。問題は、今の俺の攻撃系スキルだけであの象倒せねぇことよ。」

 只今、俺が持っている攻撃系スキルは、

【暗器取り扱い】暗器を扱うことができる。戦闘スキルとしても使用可能。


 のみ。暗器である【ソンブルダガー】を使って攻撃することできる。

 しかし、威力という面では姉の魔法よりも劣る。ってまぁ、あの人は効果的な攻略法で戦っているし、魔法を魔法で威力上げてるから比較できないけど。


【身体強化】体力・敏捷力・感覚力が強化される。HP、SPボーナス

 こんなスキルもあるっちゃあるけど、攻撃力は上がらんので意味ないし。


「はぁ、どうしよう。」と、いうことで、自然的な流れで、両手を腰に当てた。

 これは、俺の考えるときの癖らしい。自分は気づいていないが、姉によく言われる。

 そして、その癖のおかげで今回のことを解決できる糸口をに気づくことができた。

 というのも、手を置いたところは、腰につけている箱型の小物入れだったのだ。

 そして、そこには........。

「........。そういえば、カナデにもらったスキルって入れっぱだったよな。」

 そう言い、ふたを開ける。中には、俺が書いた森の地図と、カナデがくれた、というか押し付けてきた虹色のスキルの球体が入っていた。

「んで、こいつの内容によっては使えるんだよな。」

 ということで、スキルの内容は........。


「ははは........。こりゃいいな! どうやったらこんなスキルを作れるのか知らねぇが、今回は、こいつが頼みの綱だな。」

 ということで、【メモリーオーブ】を使い、タガーにこのスキルを内蔵した。


 そのとき、姉から声がかかった。

 それを、合図にダンレイの方に向かう。

 物陰に隠れながら、近くまで移動する。そして、姉が考えた筋書き通りに背中側から、象に飛び乗った。

 象からしたら、虫かなんかがついたとしか思わないかもしれない。

 だからって……振り回すなー⁉

 落ちる、落ちるから----⁉

 手が滑る。もう落ちそう……。尻尾を掴み、落ちるのをどうにか回避する。

 が、このまま胸部に戻れるのか言われれば難しそうだ。

 しかも、こいつ尻尾を振り回しやがって........。

 ........うん?こいつが上に振ったら、行ける?

 とか言ってる間に上に振るなぁーーーー!!!!???


 一番上に行ったときに、手を放して、向きを変えて……。

「よっと、無事着地。っておわ!?」また、身体振り始めたし……。

 ん?今度は本気で落ちる……。


 パオオオォ!!!!


 落ちると、目を閉じていたがその鳴き声で開けた。

 しかし、落ちてなかった。

 その根源を見ると……。

「はは。俺そんなに死にたくなかったのか?まぁ、ここで死んでも、本体は生きるし、スタート地点か、セーブポイントに戻るだけなんだが。」

 身体が、反応したのか、左手に握っていた、タガーをあいつに刺していたらしい。

 そりゃあ、うるさく鳴くわけだな。

 でも、偶然とはいえ、横腹に刃が刺さったんだから、このまま

「くたばれ、お前! 【継承者の剣カリバーン】」そういい。臀部の方に向かって体を蹴って進む。そのたびに、血と悲鳴が飛ぶ。


 左半分を引き裂き終わり背中に乗った。

 すると、先ほどまでどうにかして、立っていた象が倒れた。

 しかし、そこで、手を止めないのが暗殺者である。絶対息の根を止める気だ。

 まぁ、そうして欲しいという感じで姉も見ているという……。

 あれは、俺の戦闘力に驚いているのか?

 まぁ、いいや。


「お前さんは、どうしたい?このまま、死ぬか?」と顔の前に移動し象に話しかける。

 すると鼻を使って、俺を遠くに放り投げた。そのおかげで背中を巨大岩に打ち付けられた。

 ああ、もう。このスキルが無かったら俺死んでるな。俺のHPあと10%だってさ。

 こりゃ、さっさと殺さないといけなくなったわ。


「そうかそうか。そんなに死にたくないか。だけど、俺も死にたくないからな。だからお前を殺すよ。」

 そういって、両手で短剣を振りかぶり、心臓があると思われる場所に突き刺した。

 これが、致命傷であったらしい。


 しばらくすると音とともにポップ画面が現れた。

【Quest Clear ハクアーネ霊峰の伝説の象を討伐せよ


  戦利品:

【SA-ゴーレム知識】ゴーレムの製作・操作を行うことができる。

【象牙の笛】象牙を加工してつくられた笛。魔物を従えられる?


   その他 詳細はアイテム欄へ

 】


「終わったぞー!!!!」と声をかける。

 すると、ぞろぞろと姉貴、結葵、湊翔さんが出てきた。

「……。あんたそんなに丈夫だったっけ?」と姉が首を傾げる。


「……。それに、あんなに強くなかったよね?」と今度は、結葵が首を傾げる。


「ともかく、少し、離れようか。」と少しまとも……いや、何もわかっていない湊翔さんが少し離れた場所で、話そうと声をかける。

 こういう時に、無知な人は助かる。


 ---------------------------

 ということで、場所を移しまして、話し合いましょう。

「そんで、改めて聞くけど、なんであんた、そんなに丈夫なの?さっき放り出されて死んだのかと思ったのに。」

「本当に!それに、なんであんなに戦闘力付いたの? なんか新しい武器を使ったの?」

 と姉と結葵がもう一度尋ねる。

「俺自身は変わんないよ。でも、変わったのはホントだな。」

「だから、その原因を聞いてんの。」と姉がしびれを切らしてように聞く。

「相変わらずの短気だな。答えは、スキルだよ。」

「「「スキル?」」」三人がはもった。


「うん、姉貴と結葵は分かると思うが、この前森行っただろ?そこで、とあるスキル屋に世話になってな。」

「あー、迷子になった時に道を教えてくれたという。」姉が、補足してくれた。

「そう。そんで、その人からもらった?というか、押し付けられた?スキルを今回タガーに内蔵して使ってみたんだ。」

「なるほど。だから、異常に強くなったんだ。」と疑っているような目線を俺に向けている結葵。

「あのさ、この前も言ったけど、彼女とはそれ以降会ってないから。」

 そのスキル屋が女性だと言ったとたん、浮気しているのではないのかと疑われた。

 そんなことはしておりません。それに、そいつとはあの時初めて会ったんですけど。少し好みではあったが。

 まぁ、これが結葵なりの嫉妬だと思えば、可愛いものだが。


「それで、そのもらったスキルってどんなものなんだい?」

「ああ、それが、これですね。」そういって、タガーからスキルを取り出す

「虹色⁉」姉が驚く。

 そりゃ驚くか。

「なんか、その人が作るスキルは彼女のスキルの影響で虹色になるらしいよ。」

「へぇー。」一旦、納得したかのように見えるが、これは後で調べる気だな。


継承者の剣カリバーン】剣撃の信念(一定時間攻撃力が徐々にアップする)・HP+10%・通常攻撃の威力強化+5%


「ふーん........。確かに、強いスキルだな。」と湊翔さんがいう。

「なるほど。だから、威力も、HPも上がってたのね!」と結葵が興奮していた。

「ああ、そういうこと。これで種明かしは終わり……で........。」

 俺が、言葉を切ると、姉が訝しがった。

「・・・?杜和?どうしたの?」

「姉貴、スキルって進化するものなのか?」と聞く。

「う……ん? 私システム関係じゃないから詳しくは分からないけど、そういうことは聞いたことないような。もしかしてだけど……そのスキル、進化するとか言い出さないよね。」顔が強張ってるよ、姉貴。

「うん。なんか、【進化可能なレベルに達しました。進化しますか。】っていう通知が来た。」

「やってみたら。今のままでも強そうだけど、こっからどうなるのか、魔導士としても気になるし。」

「了解。」そう答え、通知の【YES】を押してみた。

 すると、スキルの球が光った

 そして、スキルの名前を見る。

「【聖剣セイクリッド・ソード】?」名前が変わっていた。

「なにそれ、詳しく見せて........。」

 姉の言葉は遮られた。


 ゴオォォォ……。


 何かの咆哮の様な音が聞こえた。

 その声の主に視線を向けると、先ほど俺がぶつかった巨大岩の奥から蛇?

 いや、違う。違うからこそ恐ろしい。


「何で........。」


 目の前には、そいつの出現で吹いた風に乗った、オダマキの紫色の花びらが舞っていた。


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