第11話 合体するとか聞いてないけど

 何が起こったの、これは。

 先ほどの戦いで、杜和が打ち付けられた巨大岩の後ろから、何かが顔をのぞかせている。

 何か、分からない。

 否、ほんとは分かっているが、怖い。


 何で?

 どうして、今になって新しいモンスターが出てくるわけ?

 今さっき、クエスト終わったでしょ⁉

 もしかして、これハウン用の奴?

 いや、でも……。

 もし、出現場所がキャラのスタート地点に関係しているのなら、ここにハウン用が出てくるのはおかしい。

 ハウンは最初っから王都にいたんだけど。

 もう、どういうこと?本気で分かんない。


 ひとまず【万能鑑定眼】でこいつの正体を........。


【未知モンスター出現 一連クエスト ラスボス:龍王ーロンワン

 これまでのクエスト出現モンスターである、エルミナ大森林の大蛇:アングイス、ハーメルンの神の亀:ヒェロナ、ハクアーネ霊峰の伝説の象:ダンレイを合体させた最終形にして、今回の一連クエストの最終討伐対象。】


 ん?


 一連クエスト? ラスボス? 龍王? アングイス。ヒェロナ。ダンレイ。 合体........。 最終討伐対象........。


「はぁ!!!??? 今までのモンスターが合体? どういうこと?」

 一番、問題なのがそこだった。

 一連クエストがどうこうは今あまり関係なかった。


 だって、今までのモンスター、さっき倒した象は置いておくが、それ以外は会社の施設に安置されたままなのに?

 そこが犯人と手を組んでいた?

 いや。冷静になれ。そんなことはないと思う。


 となると、どういうことだ?

 サーバーに問題が?

 ううー、分かんない。


「姉貴?あいつ、倒せそう?」この一言で、正気に戻ることができた。

「えっと、ちょっと待って。スキルに確認を........。」

「あのさ、杜和。望さんを戻そうとするためとはいえ、分かりきっていること言わないで。」

「えっ⁉なんで分かったの?」

「はぁ、さっき言っただろ。今までのモンスターの合体だって。」

「うん。」

「だから、今までのはどうにか勝ててましたけど、一度に今までの全員を合わせたやつと今の私たちが渡り合えるのかどうか........。」と杜和に自作のポーションを手渡していた結葵ちゃんが苦笑いする。


 そっか、そうだよね。うん。

 スキルにも……


【⚠注意⚠

 今の、貴方、エーチ、ララ、ハウンのチーム総合力では、あのモンスターに勝つことができません。】


 と辛辣なコメントが書かれていた。


 ぐぬぬ........。

 どうやって、こいつを撃退するか……⁉


「のわー!?」

「あれ??」

「おいおいおい........。」

「ちょちょちょ……」


 龍王が出した突風に巻き込まれて、

 みんな一緒に、どっかに放り出された........。

 かと思ったが、強い光に目がくらんだ上に、どこかに強打されて........。


 意識が……


 ---------------------------

「うん???」

 ここは?どこかで見たことあるような........。


 って、もしかして⁉


 ガバッ……!!!!


「うわー。マジかよ........。」

 なんで、ここにいるのよ私........。


 今いる場所は……

 言うまでもないかも、うん。

 私たち、龍の吐息に飛ばされただけで息絶えたのか........。


 ということで、

 私は今ゲーム内のいろんなものが散乱しまくりな自室にいます。

 ここをセーブポイントにしておいたから分かりやすい……。


 ピロン!!!!


『おい、今皆セーブポイントにいた?』と杜和からメッセージが飛んできた。

『うん。』と結葵ちゃん

『俺も、兵の宿舎まで戻された。』

『私も、自部屋にいる。 今の私たちじゃ、あの龍。ラスボスには勝てなかったみたいだね。』

『そうみたいだな。でも、覚えてないかもしてないが姉貴が放った特大魔法に驚いたのかあの龍、最後に竜巻起こして、巨大岩の後ろに在ったらしい洞窟に逃げていった。そんで俺らは姉貴の魔法と竜巻に巻き込まれてお亡くなりということだな。』

『うう……。ごめん。でも、私そんな魔法出してたんだ........。』

『ああ、確かに出してたよ。』


 うううー。

 でも、どうしよう……。

 どうやったらあいつを倒せるのかなぁ……。


 コンコン!!!!


 うん?

 何だろ?誰か来たのかな?

 でも、誰が........。

 あっ‼‼‼


『ゴメン、客が来たから私落ちるね。』

『りょうかーい!』

『お疲れ様でした。』

『またなー。』


 はぁ、完全に忘れてた。

 今日はあの人が来るんじゃんか……。

「ソーンちゃーん?いないのー?まだー?」

「あの、いるって分かって言ってますよね。」

「ははは、じゃあ早く開けてよ。」

「今開けますね。」


「はぁー‼‼相変わらずのゴチャつき具合だねぇ……。現実の方とは違いすぎだよね。」などと文句?を言いつつ今ほど入ってきたのは、クリーム色のロングヘアーと琥珀の宝石の持ち主の少女である。髪飾りのカチューシャの両端には花のように見えるリボンがあしらってある。


「はいはい。座れるところは作ってますんで、どうぞ。」

「はいはーい。」


 相も変わらずの緩さなんだよな........。

 まったく……。


「うん。おいしーい!!!! 流石‼ソーン様、料理がお上手でございますね!」

「はいはい。ありがとうございます。って言っても、そのクッキー作ったの私じゃないですし。」

「えっと?あー、弟君の彼女さんだっけ?料理スキルがあるのって?」

「はい。というか、いつまでその大音量でしゃべるつもりですか?ゲームの中とはいえ鼓膜割れますよ。あと、そのソーン様って何ですか?有名具合的にもあなたの方が上ですよね、ミドルさん?」

「むー、相変わらず乗りが悪いな、のぞみん。」


 今度は急に通常モードに切り替えないでよ。

 まぁ、渚沙さんらしいっていうか。


 この人についての説明をしておこうか。

 今、目の前で前にララちゃんがスキルを使って作ってくれたクッキーを平らげているのが、ミドルというキャラクターだ。

 彼女はエーチのスタート地点でもあるブリュナークで有名な精霊術師で、蛇型の地を司る大精霊:ラミアと蜘蛛型の闇を司る大精霊:アラクネと契約している。

 もちろん、ほかにもいるんだけどね。

 そして、私ーソーンとは仲が良く、オデッセアに来た際には絶対というほど、遊びに来るんだよ。


 それが悪いとは言うつもりはないけど、頻度が多いんだよ⁉

 まぁ、最近仕事でってこともあるんだろうな。

 こっちでの精霊術師だというだけでなくて、現実での立場もあるしね。

 その現実での立場っていうのが、ヨルムンガンド・オンライン初期メンバーにして、システムエンジニア部門総合監督ー新稲 渚沙。

 ということなんですよねwww


 まぁ、そんなことで、こちら側でも仲良くさせてもらってます。

 にしても、渚沙さんって日頃からゲームに入ってパトロールしているしね。

 だから、水曜日以外は会社に来ないってこともあるのかもね。

 まぁ、今はオンラインでの業務は普通にあるしね。


「そうだー、のぞみん。」そんなミドルが、クッキーを頬にいっぱいに詰めながらこっちを向いた。

「はい、なんですか。」

「のぞみん、さっきまでブリュナークにいた?」


 ギクッ!!!!


「は……はい。いましたが........。どうしてそれを?」

「うーん……隠しても意味ないかな。いやぁ。ほら、今回のモンスター出現してからそんなに経ってないのに、もう倒されたって聞いたからさ。もしかして、望ちゃんたちかなーって思ったから、聞いてみただけなんだけど。」

「それどこで聴いたんですか……。」

「それは答えなくてよくない?」

「うん。まぁ、そうですね。……あぁ、そうだ。少しそのことで相談がありまして........。」

「うん、どうしたの?」


 カクカクシガジカ


「はぁ、なるほどね。一連クエストのようで、今までのモンスターを倒したらそれらを合体したモンスターが出てきて……。そして今のソーンちゃんたちだと倒せないと……。」

「そうなんですよー。どうしたらいいでしょうか。」

「それは分かんないけど……。」

 と言いつつ何か考えているようだな。


「話は変わるけど、のぞみんの弟君、杜和君だっけ?が、今回は大活躍だったんでしょ?」

「そうですよ……。って何で知ってるんですか⁉」

「うん?今の説明で、杜和君が凄かったんだよって何回言ってたと思ってるの。もしかして無自覚?」

「多分そうです……。」

「にしてもいいよなー。杜和君はどんどん成長していくじゃん。同じ弟なのに、どうして雅成まさなりは成長しないのかなー。」

「雅成君ですか?今はアメリカでEFOのシステム関係に携わっているんでしたっけ?」


 今ほど会話に出ている雅成君ー本名:篠塚 雅成しのづか まさなりは、渚沙さんの異母弟というか、義理の弟さん。渚沙さんのお父さんと雅成君のお母さんが再婚したためである。私と同い年で、姉の背中を追ってアメリカーEFOの開発チームに飛び込んだエンジニアというか、ハッカー。サーバーの特にヨルムンガンド・オンラインと共有している部分の管理を主に担当しているらしい。


 そういえば、さっきから出ているEFOって何なんだって話か。


 事の始まりは約6年前、足立さんがフルダイブ技術を考え出したのと同時期、アメリカのベンチャー企業「Dream Catcher」が、先輩が考え出したのとは別のシステムを考えだしたことが始まり。その後日米間で『フルダイブ競争』と言われる、開発競争が勃発した。


 その後、日本政府は、ユメカガクに投資。ゲーム企業大手の仁志院、横浜電子株式会社、ゲームソフト大手のサガゲーム、ユメカガクと共同で「ユメミライ」プロジェクトを結成し、フルダイブゲーム機開発に本格的に着手した。


 一方でアメリカ政府、日本を上回る額の投資をDream Catcher社に行い。IC大手企業「M personal」社、Dream Catcher社と共同で「Dream star」プロジェクト設立。こちらもゲーム機開発に着手した。


 そこから、日本は共同資本で「株式会社ユメミライ」そして、アメリカ側は共同資本で「Dream star」設立したため。競争がさらに激化する。


 その後、私たち『ユメミライ』が、世界初のフルダイブゲーム機「DD」、ゲームソフト「ヨルムンガンド・オンライン」を同時に発表。


 そして、その半年後、Dream star社がゲーム機「Dream sphere」、ソフト「eternal frontier online」を発表した。


 そして、その年の12月25日、ユメミライ、Dream star両社共に世界同時販売を開始し、「クリスマス革命」としてゲーム史に名を残した。


 そして、そのアメリカ側の「eternal frontier online」の略称がEFOである。

 うん。まぁ、私のところも略称あるっちゃあるがそれほど認知されていない。

 SNSのハッシュタグくらいにか使われていないのではないのだろうか。

 そんで、そのハッシュタグっていうのが『#YOLO』なんだよね。

 ヨルムンガンド・オンライン(yolmungand・online)を略したんだろうけど、本当なら【Jormungand・online】だから、『#JORO』なんだろうな。

 どうでもいいけど。


「うん、そうそう。……あっ、そうだ。アメリカ・EFO繋がりで思い出した。」

「?何をですか?」

「もしかしたら、望ちゃんたちその龍倒せるようになるかもよ?」

「どういうことですか?」

「ふふふ。なんて言ったって、EFOと連携して行われる、0.5周年記念のイベントの【第二回 R・I・N・Gクエスト】があるからね。」

「【R・I・N・Gクエスト】?」


 ここから、私たちの物語は新たな章ネクスト・ステージへの幕が開かれた。

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