三章 RINGクエスト

下準備編

第12話 夢が叶う指輪?

 もし、夢を簡単にかなえられる、そんなアイテムがあれば欲しいと思うだろうか。

 多くの人は欲しいと思うであろう。

 その考え方そのものを否定するつもりはさらさらないが、私は欲しいとは思わなかった。

『夢はどんなに苦しくても自分の力で叶えるものなのである』と。

 そう教わったからだ、亡き父親から。


 しかし、今そのようなアイテムに縋ろうとしている。

 その原因は明らかである。

 この前まで必死に倒してきたはずのモンスターたちが合体してしまい、今の私たちでは太刀打ちできないようになってしまったからである。


 しかし、出来ることならば倒したい。

 それは私たち四人の共通の思いであった。しかし、その思いを実現にするのは不可能ではないかと思い始めていたとある日、


 あのクエストについて........私たちをさらなる冒険へといざなうことになる魔法のアイテムとそれに関する不思議な出来事に出会うことになったのであった。



 等と仰々しく書いてみたが、私もまだよく分かっていない。

 ということで、渚紗さんにもう少し詳しく聞いてみよう。


「えっと........。【R・I・N・Gクエスト】っていうのはどんな?」

「あれれ?のぞみん知らなかったっけ?」

「えっと........。いや、一応は知ってますよ。一冒険者としては!!!! でも,

 そこまで詳しくないので........。」

「あー、なるほどね。」

「んーと、じゃあどっから説明始めようかね。」

 しばし上を見た。そして説明を始めた。


 ---------------------------


 ということで、渚沙さんの説明が終わった。

 そんな説明を私流に解釈して、吞み込んだらこうなった。


 まず、このクエストについて根本的かつ簡単にまとめたものは


【R・I・N・G】と呼ばれる、二つの詩篇により構成されたクエストをクリアすることで手に入る、願いが叶う指輪。


 このアイテムを手に入れるためのクエストこそが、【R・I・N・Gクエスト】と呼ばれるものだ。


 もう少し、【R・I・N・G】ついて詳しく言うとこうなるらしい。

【R・I・N・G】:伝承級聖遺物トゥルーアーティファクト

 ゲーム世界の何処かに存在するアーティファクト。 ユメカガク公式発表によると、世界に7つしか存在せず、それを手に入れたものには望むものが与えられる。


 また、R・I・N・Gとはある文章の頭文字を繋いだもの、らしい。

 それがどういう意味なのかは手に入れた人のみぞ知る。


 とか、どうとか........。

 そして、なんでこんなクエストがあるのかというのが問題。

 別に問題でもないが、少し厄介かも?


 ゲームのプロローグにはこんなくだりがある。

 このクエストはその話にあやかっているらしい。


 <プロローグ>

 世界が生まれた時、 神は、世界に7つの指輪をもたらしました。

 それは、いかなる奇跡も起こすアーティファクトであり、望みの力を得ることができるもの。


 やがて人々は、その指輪を求めて世界を彷徨い始めました。

 その指輪はどこにあるのか? 本当に存在するのか? 指輪の姿をしていないのではないか?

 そんな疑問を持ちながらも、人々は奇跡を求め、夢を求め、世界を旅しました。


 そして、やがて一人の冒険者が、最初の指輪を手に入れました。


「俺が望むものは……亡くなった恋人を蘇らせてほしい」


 その冒険者の言葉は、指輪を通じて神の元に届きます。

 そして彼の前には、新しい肉体を持って蘇った、大切な恋人が姿を現しました。

 そして指輪は、その中に眠る【3つの奇跡】の一つを失い、またどこかに旅立ったのです。


 うしなった恋人を取り戻した冒険者は、生まれ故郷に戻ります。

 そして指輪の力を人々に伝え、神がもたらした奇跡が本当にあることを告げました。 それはやがて、吟遊詩人の耳に届き、村から街へ、そして王都へ、隣国へ……海を越えた大陸にまで伝わりました。


 一人の青年が起こした奇跡。 それは、誰にでも手にすることができる可能性。

 さあ、立ち上がってください。

 あなたの目の前に広がる世界へ。

 遙かなる、二つの世界【マグナ・カルタ】へ。



 ということで、その話がもとになっているらしいR・I・N・Gを探しましょっていうクエストだとか。

 そして、リングは全部で七つあり、最初の一つはプロローグ内の男性が手に入れたらしい。そして、前回のリンククエストではハルナ・フォン・ルーゼンベルグとアスナ・アシタバとかいう二人組が、二個目にあたるリングを手に入れることに成功したんだとか。


 っていうか、そのことは知っている。

 二人が、悲劇に見舞われることになった原因だもの。

 実は前のリングクエストで大活躍だったらしい、ハルナとアスナというキャラクターの本体は、この前した思い出話にも出ていた、小町と明日花なのだ。

 そして、そのクエスト絡みで狙われてしまい、結果として、明日花の命と取り換えるようにして、噂の指輪を手に入れられた、という。

 これは、小町が後に私に話してくれたから知っているだけで、そこまで詳しくは知らなかった、というか聞いていなかった。

 まさか、第二弾が開かれるとは思ってもいなかったし、自分が関わって来るとは微塵にも思わなかった。


 今となっては、あの時もう少しちゃんと聞いておいたらよかったって思う。

 まぁ、今からでもテレビ電話とかで聴いてもいいんだけど........。

 やっぱりなんか嫌だな。

 あの時のことを今聞いたら、立ち直ってきていた心の傷をえぐるようなことになっちゃうからね........。

 心の傷はえぐられるとほんとに痛いから........。

 体の傷とは比べ物にならないくらいにね。

 わたしにも経験あるからわかるんだよね。

 ということで、小町には聞かないで行こう。


 となると........。

「んー?どうかした?のぞみん。」

 じっと横顔を凝視していたら、不思議がられた。

「いえ、別に。そういえば、今回のリングクエストはEFOとのコラボレーションだって言ってましたよね。」

「うん、そうだよ。ほら、うちのゲーム部分的にだけど世界観共有してるじゃん?だからそれを使ってみようってことで。」

「なるほど。なら、今回はEFOが主なメインの活動場所ということで?」

「えっと........。そうなるのかなぁ。どうなんだろう?って言っても、答えるの、ここまでだけどね?ざんねーんwww」


 えっ!?気づかれてたわけ?

 渚沙さんなら情報を聞き出してもバレなさそうだと思ったのに。

 普段は疎そうなのに、そういうとこだけ変に敏感だよね。

 こういう情報の扱いには長けてる感じ?なんか嫌だな。


「来週?今週?今日だっけ?にでも発表になる、公式情報を確認してね。」

「分かりました。」少し膨れている私に笑いながら頭を軽く叩く。


 そこは変わってないね。

 初めて会った時から、私に対しては親戚のお姉さんみたいで、頼れるから安心する。

 私たちを引き合わせてくれたお互いの父親には感謝。

 もっと言えば、日本に戻るきっかけをくれた母親にも感謝。


「にしても、最近もっと賢人さんに似てきてない?」

「そりゃ、親子ですからね。」


 望ちゃんか........。

 久しぶりに聞いたな、その呼び名。お母さんが主に使っていたからな。

 会ったばかりの頃の渚沙さんも使ってたけど、いつからかは忘れたが呼び名がのぞみん、になっていた。

 彼女なりの同類の私への配慮だったのだろう。


「まぁ、そっかー。……じゃあ、このクエストは私からのプレゼントだよ。楽しんできて。ってことで私はもう帰るわ。長居しても迷惑だろうし。」

「それってどういう意味ですか?まぁ、そうですかね。調べたいことができましたし。」そう言い、魔導書が散乱しているトールタイプのライティングビューローを一瞥した。

「それじゃあね!また水曜ね。」

「はいはい。また。」


 渚沙さんの見送りをして部屋に戻ると、早々に机の下にあるコンセントに刺さっているトリプルタップを引き抜いた。そして、中を専用の道具で開けて........。


「ふふふ。渚沙さん、まさかこんなものが仕込まれているとは思わないでしょ。」

 ということで、中に仕込んでいた自作のを取り出した。

 そして、それに録音された音声をダウンロードいたしまして........。

 よし、皆に集合かけようwww



 ということで、

 またまたやってきました、サイバリアン!

 今回は私が集めたし、私もあまり分かっていない状態で集めたのでみんな少しばかり不満?

「えっと?なんで呼んだわけ?しかも急に?」特に杜和がね........。

「えっとね。それはこれを聴いてもらったらわかるんじゃない?」

 ということで、ダウンロードしておいた音声を聴かせる。



「マジで?」

「みたいよ。」

「それなら望みはありますね!」

「だな。でも、結局はその詩編が出ないと対策ができないってわけだろ?」

「まぁ、そうなるかな。」


 と言って頼んでいたコーヒーが来たので、飲む。

 すると、ちょうど通知が来た。その相手は........。


「とか言っている間に公式情報出てきたよ。」

「ホントか?」

「どんな感じなんですかね?」

「よっと........。iPadで開けてっと……」


【ヨルムンガンド・オンライン 公式HP】

『0.5周年記念イベントに関するお知らせ』


 恒常型ハイパークエスト、【R・I・N・Gクエスト】において、新たなる詩篇が登場します。


 R・I・N・Gーそれは、世界のどこかに存在する七つの指輪、それを求める旅。

 指輪を手にしたものは、望みのものが与えられます。



 それは富


 それは知識


 それは愛


 それは友情



 如何なるものも、ユメカガク研究所は叶えます。




「ふーん。これは、さっきの音声で聞いたっつーの。」

 と言って杜和がQ&Aコーナーに飛ばした。


 Q:ゲーム内ではなくリアルで現金一億円とかを望んでも叶いますか?


 A:まあ、望むものとは言いましたが、現金なら10億円までですね。



 Q:リングを手にしたら、すぐに使わないとならないのですか?


 A:夢を叶える権利を使わず、装備しても構いませんか。


  リング装着者は、自動的に【対人OK】に強制的に変更されます



 Q:リングの権利の譲渡は可能ですか?


 A:権利を行使していなければ、リングの譲渡により権利も譲渡されます。



 Q:クエストの難易度的には、かなり難しいのですか?


 A:アメリカのDreamcatcher社のフルダイブゲーム【E・F・O】との共有クエストとなります。なお、このクエストアイテムの入手方法としては、同一アカウントで向こうのゲームのキーアイテムを見つける必要があるかも知れません。


 今回のアップデートで、【E・F・O】へのアクセス権もインストールされますので、ご期待ください。



 Q:一人のキャラクターがリングを手に入れることができるのは、一度だけですか?


 A:はい。一度きり、ひとつだけです。


  Dream catcher公式のQ&Aからも回答を補足させていただきますが、一人で手に入れることができるのは、一つもしくは最後の一つです。


 と書かれていた。ってそこは一回目から書き換えられていないらしい。

「つまりさ、この叶えられる願いって現実関係のものでもいいってわけだ。」と今まで沈黙していた湊翔が言った。

「そうみたいだね。」


 でも……。唄は出てこないんだね。

 受注できる人は限られているのかな?

「ひとまず、帰るぞ。」そう言って、杜和が結葵ちゃんの手を引く。

「えっ……?どうして?」結葵ちゃん困惑。

「周りを見てみろ。」


 周りには、遠巻きに私たちの行動を注視している人がウジャウジャ。

 中には、少し怖そうな人もいるし。

 ホントは杜和の力と、結葵ちゃんの家の名前を出したら、離れられそうだけど。

 まぁ、いいや。

 変に問題を作りたくはない。


「あー、了解。私たちも帰ろうか、湊翔。」

「そうだね。話し合いはギルドで?」

「いや、私の家でどう?」

「了解。そんじゃゲーム内で再会ということで。」

 頷き、それぞれが家に戻る。



 そして、ゲーム内の私の部屋。

 皆が来た。

 そして今は、リングクエストについてそれぞれが様々なサイトやコネを使って探っているのだが........。

 よく分からない。

 私も陣営側だが、そこまで情報を渡されているというわけではない。

 しかも、私はゲーム開始後が出番だし........。

 もぉ........。


 苛立ち、サイトを全部消そうとしたが、うまくいかず二度タップした。

 すると、ポップアップ画面が一度閉じたと思ったが、すぐにもう一度開いた。

 それは、クエスト一覧画面だ。


 今、私は受注しているクエストはないはずで........。

「はぁ!? なんでこんなクエストがあるわけ?」



 ってそういえば........。


 スタート時には必ずメッセージに表示されるパターンと、知らず知らずのうちにフラグが成立し、クエスト画面に浮かび上がっているパターンがある。


 そしてもう一つ


 クエスト内容は、二つの詩篇で構成されている。


 これは、公式が出している情報ではないが、正しい情報らしい。

 そこは、先駆者に確認してみた。


 ということは........。

「【R・I・N・Gクエスト】があるんだけど……。」


 そう言ったとたん、皆の顔が驚愕に歪んだ。

 にしてなんで私?

 意味わかんない……。

 けど、助かった…かも。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る