ガネーシャ編
第8話 誤解と淡い恋の物語
今日は……非常に面倒な日である。
というのも、出かけなくてはいけないためだ。普通なら、お出かけすると言っても、別段気にすることもないと思うが、今日はそんなことは言っていられないのである。
その理由は、3日前の水曜日に遡る。
蓮花と新稲さんと女子会みたいにお昼を共にして、昼休憩終了ぎりぎりに帰って来た時のことである。
もう、昼初っ端から打ち合わせをする会社の担当者さんであろう二人が待合室に来ていた。
その時は、なんとなく流していたが、その担当者さん絡みで、今が少し面倒になっているのである。まぁ、本当の意味でトリガーを引いたのは、蓮花と渚沙さんの悪乗りとそれを真に受けた足立さんと担当者の片方がした、こっちにとってはだいぶ面倒な提案なのだが........。
ひとまず、その担当者たちを放置して席に戻る。
その時、その待合室へと向かうのが、足立さん。
今回の、会議の担当なのだろう。というか、だいたいの会議に足立さんとその部署の担当者が来るのがセオリーなのだが、今回は彼一人なのだろうか???
呆けている私の後ろを足立さんが通っていく........。
かと思っていたが、呼び止められた。
「なぁ、円満井。これから空いてるか?」
「........?ええ、まぁ、空いてますけど???」何故足立さんがそんなことを聞くのかあまり分からなかった。
「うーん、本当は俺と別のシステム奴がつくはずだったが、そいつ体調不良で休みで........。ほんとは立場的には新稲なんだが........。あいつに任せられないからな。」
と言った。確かに今日休みのシステムのメンバーはその会社と深いかかわりだったと思う。その人が休みなら、足立さん一人なのも頷けるが、どうしてここで新稲さんに任せられないのだろうか?
そのことを疑問に思ったが、なんとなく聞けずにいた。勘ではあるが、そのことを聴いてはいけないような気がしたが........後に意外なタイミングでその答えを聞くことになるのだが。
こうして、なぜか私が足立さんの同行役になりました。
ていうか、そもそも!!!!私システムの人じゃないんですけど?大丈夫なのそれで?
と思ったら、大丈夫でした。
どうも、今回の未知モンスター事件の影響かは定かではないが、電動モジュールがうまく動かないという利用者がいたため調査したが、何もなかったというので、システムの問題なのではないのかと確認しに来ただけ、と相手側はいうが、特にシステムはいじってないので担当者も足立さんも頭を悩ませていたらしい。
なので、デバッカー班のリーダー兼今回の事件に今のところ一番関わっている私を入れたらしい。
事情は分かりましたが、あの、そういうことは最初に言っていただけませんかね?
戸惑ったままで話を聞いていたから、変に緊張してるんだけど。
「失礼します。」とコップを持った事務の子が入ってきた。
私、足立さん、足立さんの前に座っている人、私の前の人の順でコップを渡していく。
事務の人がコップを置いて行っている間、足立さんと前にいる担当者ー
とおもっていたら、水を渡しに来た事務の子に『ありがとうございます。』って話しかけていた。
にしても、その時の笑顔胡散臭すぎだろ。そんなに人に良い風に見せたいのか!!!!
それに、あんたの声何度も聞いたことあるから、そんな甘い声しても意味ないし........。
ってあれ?何言ってんだ、私?
ということで、よくよく、前の人の顔を見たら........。
「なんで、あんたがいんのよ⁉このポンコツ⁉」と思わず叫んでました。
ついでに立ち上がってた。
「うん?あー、やーと気づいたわけ?気づいたうえで無視してるのかと思ってたけど」と杜和を彷彿とさせる薄ら笑い。その笑い方が嫌いなんだっつーの。
「なんで、そんな面倒なことをしないといけないのよ........。もう、嫌だ........。」
そんなことを言っていたらお隣の二人が笑っていた。なんで、笑うのよ…。
顔にもろに出でいたらしい。私、よく顔に出ますね。
「イヤー。なんとなく、天城が君の方を見ないなーと思っていたんだけどその理由がそれとはね。意外とかわいいなーと」
「いや、意味が分かんないんですけど、彪雅さん。」と本気に困惑している。
そんな湊翔の耳へ顔を寄せて何かを話す彪雅さん。
それを興味深そうに聞いていた湊翔がだんだん顔を赤らめ始めた。
彪雅さんがすべて話した途端首筋まで一気に赤くなった。
どうしたんだ?
「ばっ!?な……何を言い出すんですか?........。俺がこんな奴のこと、そんな風に思ってなんかしませんよ!!?」
何かと急に慌てふためき始めたのだが........。
「それだけ慌てるっていうことは図星なんだろうね。」と私の隣の人が笑う。
何がどう図星なんだよ。誰か教えろ。
ついでに言うと、このプロジェクトリーダーさんは、大学時代から相変わらず笑い方が癖があるんだよね........。
うんまぁ、癖というか、胡散臭い。
うん。よく笑うんだけど、だけど........。
その笑顔自体が胡散臭過ぎというか、無理をしているという感じなのかな。
無理して笑っているという感じ。
心から信頼している人、例えば北条教授........今は社長か、の次男で私のゼミの先輩にあたり、足立さんとは幼馴染だったっけかな?の
とかと言ってるから、全然大事なところまで進まないね。もうそろそろ蓮花と渚沙さん出しますか。
「ねぇ……足立ー。のぞみん借りても良い訳ー?」と事務さんと入れ替わりに会議室に入ってきた渚沙さんがそういう。ドアからは蓮花も顔をのぞかせている。
「うん?ああ、いいよ。」
「そっかー。ありがと。一周年記念の新クエストがうまく動かなくてさー。だから、のぞみんに診てもらおうと思って。」と正当性をアピールするかのようにそういう。
そうして、会議室から出ようとしていた渚沙さんがあいつの存在に気づいてしまった........。それがトリガーで今このような状態になっているのだが。
「あれれー?天城君じゃーん。久しぶり!元気してた?」何かと普通に話し始めたしな........。うん、まぁ知り合いなのでそこは致し方なしなのであるが........。
私の酒仲間となぜか有名なんだよね。誰が広めてるのかわかりきっているけど........。
「どうも、新稲さんもお元気そうで何よりです。」と差し障りなさそうなことを言って切り上げようとする奴。そのままでいいと、そのまま何も起こらないで行けと思ったのにさ。
そういう時こそ何か起こるんだよね。なんでだろうね。
「そーいえば、湊翔さんって望ちゃんの彼ピッピだよね。」
のワーーー!!!!
普通に、何となく、蓮花がそういったのだがそれが面倒なことになった。
「........。うん……そうだねー。」と答える。
なんで、その時そう普通に答えてしまったのだ........。
そういったとたん、湊翔は少ししょげてしまった。
そんなこともあって何故かいたずらしたくなった私。
「今は……ね?」と女子二人に目配せしてそう答える。
二人は、『またかー』という感じで笑う。
それを聞いて、少し湊翔の顔が明るくなった。
私今までそこしか見てなかったからな........。
オジサンふたりを置いてけぼりにしてた........。
そのおかげで勝手におじさま方が勘違いして、どういう思考でそうなったのか分からないが、なぜか私は有給休暇を消費しろとかで、ホントは出勤の日だった今日を休みにさせられ、湊翔が働いている会社『株式会社 観月電気通商』が海でやっているイベントのチケットを渡されたのですが........。
何なの?しかも滅茶苦茶めんどいこと言われたのだが........。
「なんか、天城君が迎えに来るってさ。良かったね。」
そこで、彼らの勘違いに気づいたがすでに時遅し。
あのさ、今更言っても仕方ないかもだけど、彼ピッピってさ彼氏のことじゃないよ?
彼ピッピってさ友達以上恋人未満ってことだからね?
彼氏っていう意味は彼ピだから。
ということで、そんなことがありまして、今はなぜか迎えに来ることになっている彼ピッピと、どうして二人で行きたくなかった二人が、それぞれ呼んだ助っ人二人を待っております。
待ち合わせ場所は、私の部屋ではなくて、これから海へと行くため駅の近所にある超人気ファーストフード店:サイゼリアンである。
私自身はそこまでくることはないのだが、友人と来たり、今回のように待ち合わせに使ったりすることが多い。
特に、私の昔からの友人で今は北海道にいる
何でなんや? まぁ、なんでも一緒にここでよく食べに来ていた
それに、ただよく行ったからというわけでもないかも、それは少し前に起こった彼女たちに纏わるワクワクドキドキハラハラする物語があるんだけど、そこは省略しとくね。
何でそんなに詳しいのかって⁉
うーんまぁ、その子とも会ったことあるというか、小町と同じ時に会ってるからな。
そのことについては後で詳しく話すとして…。そろそろ来ない?
「お待たせしましたー。」と結葵ちゃんが杜和を引きずるようにして連れてきた。
杜和はまだ虚ろ?もしかして、さっきまで寝てたの!?
そんな二人の後ろには湊翔もいた。
「あのさー。姉さん。俺らまだご飯食べてなくてさ。今食べてもいいですか?」
「うんいいよー。私も食べてないし。湊翔は?」
「僕も食べてないよ。」
ということで、サクッと食べることになりました。
ということで、食べ終わり移動します。
と言ってもお台場に行くだけなんだけどさwww
ハイ、とーちゃーく!
小説だかんね。移動はサクッといたしましょう。
そうはいっても、北海道とかだったら移動時間半端ないよねー。
ってそうじゃなくてさ!!!!
あーもー、人多い。人に酔うよ。
乗り物酔いとかはしないけど、人には結構酔っちゃうんだ私。
今日のイベントは、何だ?
予備知識何もなしで来たので、まったくもって分かりません。
パンフレットを見てみるに、海に関するIT関係での技術の紹介と、海で捕れた海鮮を楽しもうというイベントらしい。
ということで、IT系を見たい部門(杜和と湊翔)と食事を楽しみたい部門(私と結葵ちゃん)に分かれて、これからは進んでいきます。
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<ITを見たい部門>
「おわー!!!!やべぇ!!!!どこ見てもメカだー‼」と大興奮中の杜和君。
「紹介人冥利に尽きるね。」とかいう。
って言っても、そんなこと全く聞いちゃいないよね杜和君……。
ホントに、ロボット系、IT系には目がないよね。
さすがは望の弟と言ったところかな?
彼女も好きなことに対しての好奇心は凄いからね。
といっても、お父さんの血が強いのかな?
望はプログラマーだし、杜和君も元々はロボットエンジニアを目指してたみたいだしね。なんでか詳しくな知らないけど、その道からは脱線したらしい。
まぁ、そんなことを言っている俺も脱線しかけたことがある。
その時、連れ戻してくれたのがほかでもなく望である。
彼にとって、そんな役割が結葵ちゃんなのではないかと思う。
どういう意味か、か。
そうだねー。ここで少し思い出話を入れ込んでみようか。
俺が、望と初めて出会ったのは高校三年生の時だった。
どういうことかというと、簡単だ。
入試の時に席が近くだった……。というか数席開けて隣だったのだ。
その時に、綺麗な人がいるなと思って、見惚れていた。
つまり、完全に一目惚れだ。
なので、なぜかその時の実力なら落ちていたはずの東京帝都大学に受かってしまったのだが........。
親や先生は、大喜びしたが、俺にとっては授業についていくのに大変だった。
大学の授業内では俺の学校では全く習わなかったことが山盛り出てきたからだった。
それを、消化してイキ、落単をギリギリで回避していき、休みになった。
そして、時が巡り二学期となった。
再会は俺が思っていた形ではなかった。しかし、俺にとっては逢えてうれしかった。
そのとき、俺は授業の空コマで、空いていた部屋に入って時間を潰そうとしていた。
そして、部屋に入って、しばらくダラダラ過ごしていたら、女性生徒さんが部屋に入ってきた。その時は彼女も時間を潰しに来たのだと思ったのだが........。
授業開始時のチャイムが鳴り始め、
しばらくしてから俺たち以外の誰も来ないということに慌てふためき始めた。
どうも時間を間違えてしまったのかと危惧しているようだ。
おまけに、部屋も間違えてしまっていたようで、隣にあった大教室の入って行ったが、どうも運悪く休講だったようで、しょんぼりしながら部屋に戻ってきた。
その時顔を見たら、あの入試の時に会った、あの美人だと気が付いた。
そして、その時なぜか普段ならしない行動をした。こちら側から話しかけたのだ。
そのおかげで彼女の名前が円満井望ということ、そして偶然本日休講になっていた授業は俺も取っていたということが判明した。
ということで、そこからは今のように、時々ともに行動して、本当にたまに、お酒も飲んで、『友人以上恋人未満』の関係をつなげていた。
そして、その時は突然訪れた。
俺の夢はAIを作ることだった。しかし、当時の俺の技術では、それを作るのが難しいということが分かった。俺は今までプログラミングを作るスキル、AI業界で言うところの機械学習の部分しか所得していなかったのだ。
そのことで、このまま技術をより深く学ぶままが良いのか、それともAIに必要なもう一つの分野ー 人工ニューラルネットワーク(ANN)を新たに学ぶのかどうかについて葛藤していた時期に、偶然望に呑みに誘われた。
本当は、俺が何かについて悩んでいるのが分かりきっていたが、首を突っ込むのはどうかと悩んでいたら、俺のサークル仲間が機転を利かせて愚痴を聞いてほしいと頼んでいたらしい。
そんなことがあって、飲みに行った。
そこで、愚痴を吐きまくった。そして、最後に
「俺はどうしたらいい?」と聞いていた。
その時は、別に何もヒントや力をもらえるとなんて思っていなかった。
ただ、感想を欲していたのだ。
しばし、手をあごの下に置き考えていた望は、急に核心をついてきた。
「あのさ。今、湊翔はどうしたいの? 確かに、あんたの夢って、いつも言っているAI作りを本気でしたいんなら、人工ニューラルネットワーク?だっけ、にあたりそうな、脳科学とか心理学を学ぶっていうのも有りだと、私は、思うよ。」
そこで、一息つく。さっきの一言で『私は』という部分を妙に強調していたのは、他の人がどう言っても関係ないということを言いたいと分かった。
「……でも、ホントにそれでいいの? 私は、なんであなたがそのちょっと壮大な夢を持っているのかは知らない。というか、知りたいとも思わないけど。……けど、それでいいの?脳科学とか心理学ってただの理論だから。……これは、それぞれに携わっている知人からの受け売りだけど。だから、しっかりとしたスキルが必要な方を、優先したらいいんじゃないのかなって、個人的には思う。」
そう言って、フイッと視線を壁にかかっていたカレンダー付のポスターを見やる。
「今日って........。ああ、そうか。じゃあ、私は、今週末に施設の見学をしないといけないのか。」
「うん?なにを言っているの?」
「なんでもなーいwww。あっ……。でも、だったら........。」
なんか、急に真剣に考え始めた。
そう思っていたら、鞄から一枚の冊子を取り出した。
そして、中をパラパラとめくり、中間くらいの位置で止めこちら側に向けた。
「もし、もしも。あんたが今のままスキルを磨こうと思うんなら。うちのグループが採用する。これは絶対に。コネだろうが、賄賂だろうが、なんだろうが使って入れてあげる。だから、今のままでいて。……もし、本当にAIを作りたくなったら、二人、三人かを呼んで脳科学と心理学のレクチャー会でも開いてあげるよ。」
と笑っていた。
そして、そのページには【新たなるゲームが幕を開ける!!!!】
というだいだいなる見出しがついていた。
そして、下には二人の男性の写真が載っていた。
1人は、望が支持している北条教授、そしてもう一人は望のゼミの先輩にあたる足立大誠なる人物であった。
どうも、見出しにある『新たなるゲーム』の基礎となるらしいフルダイブ技術を開発したのが彼らしい。
『そして、北条ゼミは近々【株式会社 ユメカガク】という会社を立ち上げるらしい。今後の活躍に目が離せない。』とページの下部分にそう書かれており、この記事が閉じられていた。
「……はぁ⁉お前のゼミ会社作んの⁉」
「うん、そうみたい。だから、会社用の建物探さないといけなくてみんなで総出で探してるんだよね。」
「ああー、だから、施設がどうのこうのと……」
「そう。そんで、話は戻るけど、もし君がスキルを今のまま伸ばしてくれるのなら、君のスキルが必要になる時が近頃絶対来る。これは誓える。」
「それは……どうして?」彼女の気迫に押され気味だった。
「ん。このゲームが世に出たとして今のままだと問題があるの。それはねゲームに入るにはヘッドギア?がいるんだけど、それを作れる技術者が今いないの。しかも、私たちゲーム作りしか専門じゃないからさ。同じプログラムでも無理なわけwww だから、いつになるかは分からないけど、そういう人がいるの。あと、脳科学とかに地味に知識があった方がいいから........。」
そこまで彼女が言って、彼女が言いたいことが分かった。
「ふぅ……。なるほどな。……お前にはかなわねぇ。」
「ふーん。ならいいや。」そう言って店員に追加の注文をした。
確かに当時の俺はどちらに偏って舵を切ったら、半端者になって誰にも必要とされないのではないのだろうかと危惧していたのだが、そんなことはないようだから。
半端者だからこそ、必要とするところがあるらしいと、その時知った。
そして、そんなやり取りから数年後、望の予言は当たり、俺のような半端者を必要とされる場所に入ることができ、今そのモジュールの根幹となるシステムの策定に関わっている。
望が示してくれた、道をそのまま俺は進んで今存在している。
俺にとっては、望は文字通りの望だったようだ。
こうして思い出してみると、俺はあいつにー望に勝てたことなんかないなwww
「やっぱり、お前の姉貴はすげぇよ........。」
すぐ隣でまたもやメカに見入っている杜和に向かってそうつぶやいた。
「ん?湊翔さん、いまなんか言いました?」
「言ったけど、なんでもねぇよ。ほれ、こっちにも面白そうなやつあるぞ」
と促す。
「ホントだー!」と再びこうして爆走し始める杜和君。
それを見て自然と笑みを浮かべていた。
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