第6話 亀退治のキーパーソンは

 えっとー。まだなのかなー。

 今回ばかりは、完全に人任せになっています。

 というのも、私と杜和のスキルを使っても倒せそうにないので……。

 ここは、ここをスタート地点にさせたスキル持ちに任せるのがいいだろうとかとどうにか正当化していますが、事実私たちでは倒せません。

 何でかというと、キーアイテムであるらしい、線香を作れないからです。


 なら、ララちゃんー結葵ちゃんは作れるのかって?

 うん、残念ながら作れるの。

 と言っても、線香の基礎になる粘土を......だけどね。

 その後、私と杜和も参加して、さっさと線香を作るのです。

 そして、神棚に刺して、亀を火祭りにしてもらいますかね。

 とかと思っていますが……。


 うーん?なになに~?

 何がどうなってそうなっているのか分かんないって?

 えと、材料探しのとことか、システム検証の部分って書いてなかったっけ?

 そりゃ分かんないか。


 それでは、今から書いていきましょう。先に言っておくが今回は絶対亀を倒すから。



 ということで、説明していきましょう。


 まず、今回のクエスト……前と同じようなシステムであると仮定したうえで話しているけれども、それで絶対に必要になってくるのが線香だよね。

 そしてそれをどう手に入れるのか、はたまたどう作っていくのかが問題。

 またまた、その線香を捧げる神棚どこですか。あと、バトルマップってなんだよ。


 この三つが最大の難所……だと思う。

 よし、一つずつ解決していこうということでまず着手に取り掛かったのは線香について。

 これ、普通に作るんだったら大変だしね。

 まぁ、だけど作り方と材料によるけど、結構早くできちゃうと思うんだよな。

 とはいえ、どうやったらいいかね。


 ひとまずヨル観にアクセスして調べてみますかね。

「お気に入りサイトに飛んで」

 とシステムに呼びかけると、ポップアップ画面でGoogleの検索ページが出てきた。ということで、ヨル観にさっそくアクセス。


 ざっと見てみるが、そのようなものはないのか???

 うーん、八方ふさがりになったなぁ……

 というのも、私の万能鑑定眼さんも、線香の作り方はレクチャーしてくれてないんですよね……。


 と思っていたその時、どこからともなく突風が……。

 そして、目の前に何やらいろいろと散らかっているのですが……。

 ……。これ、トタン屋根?こっちは扉?あと窓のフレームっぽいのまであるし、となるとこれは元小屋?

 よく分かんないけど、関係ないでしょ……。


 と思って放置しようとしていたら、私の横で小屋の残骸を物色していた杜和が私のローブを引っ張った。

「姉ちゃん……。これもしかして、線香の作り方じゃない?」といって残骸の中から見つけたのであろう少し古びた紙を持っていた。ところどころ破けている。


 これを書いた人の文字は残念ながら達筆と言えばそうだが、下手とも言えそうなほどで、よく読めなかった。なのになぜ杜和がこの紙に書かれているのは線香の作り方なのではないかと思ったのかと言われると、横に書かれていたイラストのおかげだ。

 多分、制作の工程を絵にしたもので、その最終形がどっからどう見ても線香だったからである。


 にしても、何語で書いてるの?この人……。日本語?ではなさそう........じゃあ英語?

 まぁ、ともかく翻訳翻訳……。

【Ingredients: bark, agarwood, sandalwood, cinnamon bark, clove, large incense


 How to make:

 1. Pour the incense ingredients one by one, and add the tab powder at the end.

 2. Add water little by little to the mixed ingredients.

 3. Knead the ingredients

 4. Check the kneading condition

 5. Mold

 6. Cut with a utility knife

 7. Dry】


 やはり英語だった。

 それで意味は?


【材料:たぶ沈香じんこう白檀びゃくだん桂皮けいひ丁子ちょうじ大茴香だいういきょう


 作り方:

 1.用意した容器に香原料をひとつずつ入れ、最後にタブ粉をいれる。

 2. 混ぜた原料に少しずつ水を加えます。

 3.原料を練り上げる

 4.練り具合を確かめる

 5.成形する

 6.カッターナイフで切る

 7.乾燥させる】


 ふむふむ。

 上の六つの香原料が主な材料か……。

 材料はこの森になかにあるらしく、その場所もご丁寧に別の紙に記されていた。(それも杜和が見つけた)


 となると……。

「ララちゃん、チャット欄に書いた香原料、地図を見ながらエーチと一緒に探してくれるかな?」


「えっ、ああ。別にそれは大丈夫です。日頃からしてますし……。」と言いつつ、なぜ私がララを指名したのかを薄々感づいているようだった。相変わらず鋭い。


「それは、別にいいけど。ララが探すから俺はその護衛兼荷物持ちみたいなもんだろ?んで俺らがいない間姉貴はどうするつもりよ。」少し鈍感な我が弟が問う。


「そうだねー。あの子全然攻撃してこないから散策でもしようかなーとwww それはひとまず置いておいて」

 置いておくなと顔で言っている杜和に、アイテムボックスから取り出したものの片方を渡した。


「これ持っておいて。今言った通り私も少し動こうと思うから。何かあった時お互いの居場所が分からないと不便でしょ。ということで、これ。」

「ただのコンパス型の魔道具じゃないのか?」

「確かにコンパスだけど、少し変わってるやつなの。これの、これらの刺す方向は北じゃない。もう片方がある方角。」

「「もう片方?」」と二人がシンクロするかのように首を傾げた。

「そう、今杜和が持ってるのは【ポルックス】っていう名前の方。金の枠ぶちの中に青のビーズと白の針があるでしょ。そんでもう一つ【カストル】という奴があって、今は私が持っているんだけど、銀の枠ぶちに赤のビーズ版なの。この二つは二つで一つの魔道具で【双子の導き】ーディオスクロイ、ってやつなの。」

「なるほど。つまり、こいつを持っていればもう片方を持っている姉貴の居場所が分かると。」

「そういうこと。壊さないでね。そっちが壊れたらこっちも壊れるから。」

 と言い残して二人と別れた。


 先ほど二人に渡した魔道具ーディオスクロイは私のスキル【錬金術】(魔導具作成、武具の強化錬成、魔法薬作成が可能)を用いて趣味程度に昔作ったものだ。

 まさかこんなところで役立つとは思わなかったが。

 この案をくれたバスコさんに感謝しないとな。バスコっていうのはローランドの酒仲間である。あと、名付け親である桫沫さわにもお礼言わないと……。彼女は私たちの父方の従姉。今は確かロボット関係の会社で働いていたはず。


 というか……どこあるのかな神棚。

 というかココどこだ?

 当てもなくぶらついていたら、よく分からない場所に着いた。


 何かの実験場?なんかいろいろ物騒な?

 サクッと、神棚無いか確認したら出よ。

 なんかここには長居したくない。

 そんなことで、ウロウロして何にもないので別の場所に移ろうとした、その時。

 壁に触れていた手が何かのボタンに触れてしまったようであった。


『ガコン!!!!』


 壁に備え付けてあった箱の扉が落ちた。

 外から見ると機械の一部だと思っていた所だった。

 何で空いたの?ボタンを押したからなのはわかっているんだけど……。


 箱の中を見に行くと中に神?のような........人型の置物が置いてあった。

 そして、その前には線香を刺す部分ー香炉のような........いや、それそのものが置いてあった。


 ということは?ここがポイント地点の神棚?

 仮にそうだとして、ここにある仏像らしいやつは何なの?

 何の神なのだ?

 分かんないなー

 ともかく、二人に神棚を見つけたという報告を……。


 ……。あれ、もしかして……。

「開け!Google!!!!」となんとなく言ったら、開いた。

 システム作ってくれた、足立さんに少し感謝。


 と、すぐさま今引っかかった疑惑を調べてみる……。

 やっぱりそうか。

 だから……。


 なるほど。だから、ここじゃないといけないのか……。

 でもなんで焼かないといけないのかは疑問のままとなってしまった。

 ともかく問題の一つは解決。もう1つは現在進行中だけど道筋はできているのでオッケー。

 ということで、バトルマップについて聞いてこようか。

 誰にって?仕事仲間に聞いてくるの。本職の伝手で聞いたらいいわけよ。

 でも、足立さんは少し嫌だからな……。

 誰に聞こうかな。プログラマーで出来れば初期メンバーで。


 となると……。

 新稲にいなさんしか思い浮かばぬ。


 他にもいるにはいるけど、なるべく巻き込みたくない。

 巻き込んだら面倒なことになりそうだから。

 面倒なことになりなさそうな三浦さんとかは、プログラマーじゃないし……。

 ということで、彼女になるはやで聴いてこよう。ということで、いったん離脱。


 ---------------

【現実・望の部屋】

「えーと、新稲さんの番号は……と……。あった。」

 電話をかける。彼女に限って一発目で出るとは思わないが……。


『もしもしー。のぞみん、どうしたー?』

 まさかの一発目で出た。

「あっ、どうも、こんにちわ。........いきなり電話してすみません。」

『全然いいよ~。んで?なんの御用?』

「えっと、あの。直球で聴きますが、うちのゲームってバトルマップのシステムありますか?」

『……。バトルマップ?』思っていた内容と違ったらしい。声がキョドっている。

「はい。詳しいことは伏せさせていただきますが、それがいるクエスト?があってどうなんだろうと思いまして。」

『うー。確かねー。........あったはず。........ちょっと待ってね、資料取って来る。』

 そう言ったとたん、耳元からガサガサと書類を探っている音が聞こえてきた。


 こういう時は少し時間がかかるんだよね。彼女の部屋……正直言って散らかってるから........。

 そこで、彼女の説明を少しだけ。

 今私が電話しているのが、私と同じく初期メンバーで足立さんと並んでチームの頭脳と言われていた新稲 渚沙にいな なぎささん。


 凄腕プログラマーなんだけどね。癖が凄い……。

 家からほとんど出ないの。出るのは一週間で水曜日だけ。しかも毎週出るとは限らない。そこは気まぐれ。

 何で水曜かというと彼女の先祖が鎌倉幕府を倒した立役者の一人新田義貞にったよしさだと言われているから。本当かどうかわからないけど、そういわれている。そんで、彼は海側から攻めたからそれにあやかって?水の日しか動かないんだよ。

 滅茶めんどい。


 何かと愚痴っていると、見つけたらしい。

「おまたー。えっとねー。あるっちゃあるけど。発動条件が滅茶苦茶あるの。なんで、こんな面倒なことにしたんだろね、タイン。」とここにはいないタインー足立さん、に向かって愚痴をこぼす新稲さん。それは分からないでもないが一旦置いておく。今知りたいのはそこではない。


「それで条件というのは?」

「うーんとね。大きく三つ。一つ目は、来た場所が初めての場所であること。二回目以上なら出ないって。そんで二つ目がクエストがかぶって無い事。同時並行でクエストをしてたら作用されないらしい。そんで最後は……なんだこれ? なにこれ差別かよ……。」

 と最後は愚痴になっていたが、聞きたいことは聞けた……。いや、聞けてなかった。


「なるほど。それで、条件をすべてクリアしたとして、どうすれば見れますか、そのマップ?」

「えっと、クエストのページあるでしょ?そこで、今やってるクエストを選んだら、視界の右上に小さく出るらしい。赤が敵で、緑が仲間。青があったらそれはイベントに必要なポイント、を示しているらしいけど……。」

「なるほど。ありがとうございました。失礼します。」

「うん、じゃあ……。」


 渚沙さんの言葉を聞かずに電話を終えた。

 急いで戻ろう。これで、このクエストに必要なパーツが全部そろった。


 ---------------

【ワーディス王国・ハーメルン郊外・ルーゼンベルグ領・オワリ郊外の森】


「んー。覚醒いたしましたと……。」そう言いつつ伸びをする私。

「やーと起きたのかよ、姉貴。」とめんどくさそうな顔をたたえながらこちらを覗く杜和。

 隣には結葵ちゃんがいるが、何かしている。

 というか、戻る前に頼んでおいたのだ。

『線香の基礎を二人で作っておいて』と。


 なぜかというと、作り方の冒頭部分。

 1.用意した容器に香原料をひとつずつ入れ、最後にタブ粉をいれる。

 2. 混ぜた原料に少しずつ水を加えます。

 3.原料を練り上げる

 4.練り具合を確かめる

 5.成形する


 上の五つは結葵ちゃんが持っている超便利スキルのおかげでサクサク行けるのだ。

 その便利スキルというのが、こちら。

【薬剤師】薬草などから薬品を作り出すことができる、というもの。


 普通は、薬剤師的な人や薬売りの人しか現れないのですが、それではない結葵ちゃんが持っているのです!

 なので、普通なら結構時間がかかるのであろう工程を難なく進めていく。


 そして、その工程を終えるのを待っているのが今ー冒頭部分である。

 やっと戻ってきた。

 これからあとの二工程も私と杜和のスキルを使えばサクサクッとできてしまうのである……。

 ということで、杜和のスキル【暗器取り扱い】(暗器を扱うことができる。戦闘スキルとしても使用可能)で線香を切り出して、私の【SA-属性魔法・全】で炎属性と風属性の間の子魔法を使い一気に乾燥させる。


 よっしゃー!線香完成!(三本)

 出来上がるたびに香炉に刺していくと、神様の仏像が一度目には起動し、二度目には亀に照準を合わせ、最後には........魔法とは言えないほどの熱量を持ち始めた。


 それを見て、マップを出そうとするのだが、私の所には、どうもそれらしいクエストがない。

 二人にクエスト欄を見てもらうことにしたところ、それらしいクエストがララの所にあった。なんで、ララの所に? それは後で……、いや何となく分かってはいるけど。

 それで、渚沙さんから聞いた通り亀が位置している場所は赤色で示されていた。

 それをタップした瞬間、目にもとまらぬ速さで、光線が発射され、亀を退治してしまった。


 すると、音ともにポップアップ画面が出てきた。

 といっても結葵ちゃんの目の前にだが……。瞬時に結葵ちゃんが私たちにも見えるようにしてくれたのだ。



【Quest Clear ハーメルンの神の亀を退治せよ


  戦利品:


 【SA-伝承知識】伝承についての知識を持つ。レベルにより難易度がある。


 【星火の粉】亀の甲羅をベースに作られた毒・漢方薬にもなる。


   その他 詳細はアイテム欄へ


 】


 私の時と同じような形式でクエストクリアの旨が書かれていた。

 でも、なんでヒェロナが神の亀なのかって?

 それは、あの亀ー本名クールマというらしいが、はヒンドゥー教のヴィシュヌという神が亀になったものであるからだ。

 だから、マップ出現の条件の一つ。神話関係ということをクリアしたのだ。


 なぜ、神が亀の姿となったのか、ネットではこのように書かれていた。

『不死の薬・アムリタを得るために神々がヴィシュヌに相談すると、大海をマンダラ山を棒にしてかき混ぜればよいと教えられます。神々はアスラ(魔人)たちと仲良く協力して、引き抜いたマンダラ山に蛇王・ヴァースキを巻き付け、片側を神々、反対側からアスラ達がそれぞれ引っ張ることで海を攪拌します。あまりに強く攪拌したために海の底に穴が開き山が沈みそうになってしまいます。そこでヴィシュヌは亀(クールマ)に姿を変え、マンダラ山の軸受けとなって海の底を守りました。』

 そして、この森は昔海の底であり、今は無くなったが山の麓であったそうだ。


 これで、全部が繋がった。まだだって?ああ、なんで結葵ちゃんだったのかか。これはまだ私の予想だけど、ゲームのスタート地点が関係してるのではないかと思う。私はオデッセアだから、蛇のクエスト。結葵ちゃんはここ出身だから、今回のみたいな?だったら、もしかして杜和の場合のあるのか? まぁ、ひとまず置いておくか。

 兎も角これで、今回も無事終了!


 今回の事件が幕を閉じたことに対して一同で安堵していたが、いきなり杜和が両耳を塞ぎ黙って、しゃがみ込んでしまった……どうしたの!?

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