第22話 風月|ロウフルとカオスに敗北するニュートラル
いや仕方ない。
あの二人が強敵なのは分かっていたことじゃないか。
対して次の相手は女子中学生
彼女は俺をバスケット選手として慕ってくれているところがあるけれど、恋をするには年の差が離れすぎている。
彼女がお酒を飲めるようになるころには俺はアラサーだ。
……あれ?
思ったより年の差離れてない……?
いや待て待て待て。
中学生に手を出すのは倫理的にアウト。
時折俺に欲情してる節はあるが、それも男子中学生が胸元強調したお姉さん見たら興奮するのと同じ原理だろ。
俺に非があったのは遺憾ながら認めるしかないが、彼女が抱いているのは恋愛感情ではないはず。
だから大丈夫!
「
「や、やだっ! 待って!」
待っては俺のセリフなんだが?
そんな泣くような声で叫ばれたらどう考えても俺が女子中学生に発情して襲い掛かったサルなんだが?
勝てない、年を取った男は女子中学生に。
相手の機嫌をうかがうしかない。
「どうして今なんですか? 約束してくれましたよね? ウチが全国に行くまで練習に付き合ってくれるって」
期間伸びてないか?
全国に行ったときは応援するって言ったけど、俺いつまで練習に付き合うかまでは明言してないよね?
院進でもしない限り俺が社会人になる方が早いんだが。
社会人になったらさすがに無理だよ?
「実は、お兄さんには秘密にしてたんですが、今バストアップマッサージとかちゃんとしてるんです」
「なんてことぶっちゃけ始めるんだ」
「数年後にはすごいことになってるはずです。ボインボインになってます。切り捨てるのは早計だと忠言させていただきます。だから、だから……」
俺のそばに寄った
「待ってくれませんか……ウチが全国の舞台で活躍するまで、結論を出すのは」
……ま、まあ、仕方ない、よな?
中学生って多感な時期だし、下手に精神を傷つけてプレーに支障をきたしたら問題だもんな。
将来有望な選手にトラウマを植え付けて未来の芽を摘むのは俺の望むところじゃない。
6年だぞ?
脳科学でも言ってたじゃないか。
恋は3年で冷めるって。
6年。
その倍だ。
95パーセント信頼区間だ。
そうさ。
俺から切り出さなくたって、そのころには
「そう、だな。結論を出すには早かったよ」
「……ん」
「じゃあやるか。まずはいっつもみたいに1
「ん。ちゃんと成長してる。見てて、絶対に、全国で優勝する。だから、その時は――」
……大丈夫だよな?
*
3戦全敗。
それが俺の戦績だった。
そしてこれから挑もうとしている相手は、中でも群を抜いて勝てるビジョンが浮かばない。
なんだろう。
こよみ先輩は人生一回分くらいの実力差を感じる。
翻弄されて、いいようにおもちゃにされる。
そんなイメージしか湧いてこない。
(まあ、4人の中だと1番まともそうだけど)
だからこそ。
これ以上こんな不祥事に巻き込むわけにはいかないな。
(先輩にはもっといい人がいる。俺みたいなクズやろうじゃなく)
正直に打ち明けよう。
誰一人にも別れ話を切り出せず、どころか関係をこじらせるだけだったこと。
さようなら、唯一の良心。
「素っ晴らしいです! さすがは
「……は?」
「姑息な手段で2股を成立させたうえで将来有望な中学生をキープ……! しかもそれを私に報告するだなんて……なんという鬼畜の所業……っ!」
「あの、こよみ先輩?」
「はぁ……はぁ……それでこそ私が見込んだ殿方です。やはり私の伴侶は
「さてはテメーが一番やばい奴だな?」
「あぁんっ!」
悟った。
この人だけは関わっちゃダメな人だ。
おいおい、どこのどいつだ!
この思考回路破綻した残念美人をいい人だとか思い込んだ奴は。
節穴の目にもほどがあるぞ。
「と、とにかく! そういうことなんで先輩と付き合うことはできません!」
「くすくす……無理じゃないかしら。私と縁を切るなんて」
「は? 何を言って……」
ファサと音を立てて、現像された写真がばらまかれた。
机に散らばった写真に目を見張る。
「これって……」
「はい。
「人聞きが悪いな⁉ っていうか、これ盗撮じゃ……!」
「ふふっ、でも、大変ですよね。これがネットの世界にバラまかれるかもしれないんですもの」
……おいおい、マジかよ。
この手の脅迫を女性から受けるのは想定外だぞ。
「どうすればいいかは、わかりますよね?」
「……わかった。わかったから、それだけは」
「ふふっ。
勝てなかったよ、この先輩にはやっぱり。
*
「やべぇ、どうすんよ」
全戦全敗。
空前絶後のクソ雑魚ナメクジとは俺のこと。
今回の別れ話切り出し作戦において俺は、マイナスの成果しか得られなかった……!
無理だ。
こんなへんてこな世界で生きていくなんて、
俺にはできっこない。
くそ、どうしてこんなことに。
答えは出ない。
時間だけがいたずらに通り過ぎていく。
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