第17話 月【サークルのストーカー】
発情と表現しても差し支えないほどに。
(大スクープ、大スクープですわ‼)
理由は簡単。
後輩の
いや実際に目撃したのは
断じて3股などかけていないし、そもそも表面上恋人を装っている
付き合っていないのである、誰とも……っ!
だが、通りがかっただけの
否、性的に興奮していた……っ!
(あはぁんっ! そんな……背徳的な……っ! さすが
黙っていれば
常軌を逸したプレイに快感を覚えるド変態。
女性3人を侍らせる
だから盗撮した。
肌身離さず持ち歩いている一眼レフのシャッターを切り、状況証拠を写真に収めた。
(性欲発散アイテムゲットですわ!)
今日はなんて素敵な日なんだろう。
なんてことを思いながら
4人が解散するころにはパンパンになったカメラのデータに彼女はホクホク顔である。
(理想を言えばホテルにでも向かってもらえればベストでしたが……仕方ありませんね)
女性3人に男ひとり。
いかがわしいホテル。
そんなシチュエーションが現実に起ころうものなら
死因は鼻血だ。
危ないところだった。
彼女の威厳は(かろうじて)保たれた。
さて、彼女は確信した。
たとえ
完全無欠の優等生を演じきれる、と。
その翌週の日曜日が来るまでは。
(キャー⁉ 4人目! 4人目の彼女さんですわー!)
この日も街を歩いていた
もはや運命の神のイタズラどころではない。
神の思し召しといわんばかりのめぐりあわせ。
(神様! ありがとうございます!)
(しかもしかも、今度は1対1……本命ですわ! 3人の女性をたぶらかせておきながら全員お遊びですの⁉ はぁ……はぁ……そんなっ、冒涜的な……っ)
さすがのド変態もびっくりだ。
なお、実際のところはこのカップルも偽装なのだが、やはり
どころか、
はっきり言おう。
始まりの――貞操観念逆転が起こったその日から。
そしてその思いは、日ごとに強くなっていく。
理由は簡単。
彼が、理想的な悪い男だからである。
(
優等生を強制され続けた彼女は常日頃から火遊びに興味があった。
抑圧から解放されたいという願いと欲求の境界があいまいになってしまっていたのだ。
そんなところに現れた、悪人。
ドストライクだった。
ハートを射抜かれてしまっていた。
好感度メーターはとっくに限界まで振り切れていた。
これ以上溺れようがないくらい、
だがそこに追い打ちを掛けるのがこの男!
3度目の偶然もやはり日曜日。
市民体育館でバスケット大会が開かれる日のことだった。
彼女の妹が一般の部に出場するからと、親からお金をもらってカメラマンとして現地に赴いていた。
そこで、出会ったのだ。
明らかに発育途中の女児をたぶらかしている、後輩に‼
(ちゅ、中学生すらカバー範囲ですの――ッ⁉)
広い、範囲が広すぎる……!
この世界、男は性欲が刺激されにくい。
だから女性は史実と比べて、より魅力的な遺伝子が後世に多く伝わるようになっていた。
適者生存の理である。
つまり、
男のロリコンとは空想上の生き物のことなのである‼
(私は今――伝説のロリコンを目撃しておりますわ⁉)
3倍役満だ。
妹のカメラマンに来ていたはずだが、そっちは三脚に固定して定点で放置した。
代わりに隣のコートでJCとスキンシップを取っている後輩の姿を激写‼
(学科の後輩が変態ですわ――!)
認めたのだ、真性ド変態が、敗北を。
この日
実に不名誉極まりない。
(はぁ……はぁ……最低で最高ですわ、
人差し指で下唇を端から端まで撫ぜ、
(例えば、そう――私たち全員から同時に迫られる修羅場に陥ったら?)
ああ、愉しいな。
楽しみで愉しくて、仕方がない。
くすくすと笑みがこぼれる。
抑えるつもりなど毛頭ない。
暗い市民体育館の2階観客席。
照明されるバスケットコートに立つ人影に熱視線を送る。
「ふふっ、
なお、ここまで全員の思惑がすれ違っているのだが……彼女が知る由などどこにもないのだ。
合掌。
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