王都の冒険者ギルド

 冒険者ギルドには、俺のランクアップの為に行くらしい。

 そういえばEランクに上げて貰えるように、テルーゼのギルマスにランクアップ用の手紙を書いて貰ったんだった。

 でも、学校で新しい情報を聞いてからって言ってたような気がするけど、いいのだろうか?

 4大魔境もその内の1つっぽいのは、分かるんだけど、それ以外にもあるよな。


「冒険者のランクアップはいいのですが、僕がテルーゼのギルマスに聞いた話では、学校で色々教わってからじゃないといけないらしいのですが、聞かずにそのままでもいいのですか?」


「あー、あれか。昔、中級ダンジョンに何も知らずに入って、そのまま帰ってこなくなった奴が大勢いたって話だな。今でこそ、中級ダンジョンは魔道具使えば楽勝だけど、昔はそんなの知らないから、対策もせずそのまま乗り込んであの世行きが多かったらしいぞ」


 何か予想してない話だった。しかもかなり怖い話だ。

 中級ダンジョンって、対策しないとそんなに難しいの。でも、アル兄は学校に来て1ケ月ぐらいでクリアしたって話だったけど、魔道具使えば簡単って事なのかな?


「魔道具を使うというのは、やっぱり罠が凶悪って事ですか?」


「罠もそうだな。もっと恐ろしいのは環境っていう目に見えない要素だな。ダンジョンの少数だけなんだが、特にやばいのが毒ガスと魔力障害だな」


 毒ガスは何となく分かるけど、魔力障害って何だろう。

 魔法が使えなくなるとかかな。


「魔力障害って何ですか?」


「魔力障害っていうのは、簡単にいうと魔力を上手く操れなくなる事だな。ダンジョンに入ったはいいが、帰る転移陣に上手く魔力が流せず、帰る事が出来なくなるんだ。その場合はボスを倒せばいいらしいんだが、ボスを倒せずに、そのままってのが多いんだとか。しかも、魔法とかスキルのアーツさえも使えなくなるらしいぞ。対策すれば、中級の中ではかなり楽なダンジョンになるな」


 魔力障害こえぇーー。

 確かに気軽に入ったダンジョンが、そんなにやばかったらどうしようもないな。


「確かテルーゼの近くにあるダンジョンにあったな。あそこのダンジョンは敵は強くないけど、環境というか地形も最悪って話だからな」


 あー。コウガが結構強くダメって言ったダンジョンかもしれないな。理由ぐらい教えてくれてもよかったのに。

 気を取り直して、ユウジン副団長と冒険者ギルドへ向かう。


 特A校舎は王都の北側地区にあり、この辺りは貴族街となっていて、他にも魔C校舎も近くにあるし、どちらかというと貴族御用達の高級なお店が多い。

 冒険者ギルドは王都の中央に近い位置にあるが、ぎりぎり北側地区に入るらしい。


 現在の場所からは馬車を使うまでもないので、歩いて行くことになった。


 冒険者ギルドに着くと、高さは一緒ぐらいなのだが、テルーゼの町のギルドよりもかなり大きい事が分かった。

 中に入ると、テルーゼの町のギルド内の倍はあるように感じる。

 受付のカウンターも酒場のテーブルも、依頼掲示板も全部が倍ぐらいあるように見える。

 2階への階段は同じぐらいかな。


 ユウジン副団長に付いて行き、受付カウンターでギルマスへの取り次ぎをして貰っている。

 どうやら、アポイントは事前に取っていたみたいだ。


 ギルマスに取り次ぎして貰った受付嬢に付いて行く為、カウンターの横を通り、ギルマスの部屋まで案内される。

 またしてもギルマスに会う事になってしまった。


 受付嬢が扉を開けて、ユウジン副団長と俺を招いてくれたので、部屋に入る。


「失礼しま」

「ユウジン、待っとったぞ。はよ、座らんかい。そいつがウォーレンの言っとったコウガの息子か。あのバカ強い兄貴よりも強いんだって?」


 ユウジン副団長の言葉を遮り、ギルマスっぽい人が喋りだした。

 どうやら、俺の事も知っているみたいだ。テルーゼのギルマスのウォーレンさんの事も知っているから、王都のギルマスで合ってるだろう。

 見た目と話した感じは豪快の一言。

 ガタイが良く、アル兄よりも濃い赤色の髪の毛が、さらに凄みを増している。

 あのバカ強い兄貴って、アル兄の事だよね?アル兄はギルドで、何をしたんだろうか。


「ギルマス、落ち着いて下さい。リオン、こちらの方が王都デオールのギルドマスター、トノバさんだ。それで、こっちがコウガ副団長の息子のリオンです」


「トノバさん、はじめまして。コウガ・スペンダーの次男のリオンです。父と兄の事をよくご存じなのですか?」


「アルスの時も思ったが、コウガの息子とは思えない礼儀正しさだな」


 相変わらず、ユウジン副団長はコウガ副団長と呼んでいるな。昔の呼び方から変わってないのだろう。


 そして、やはりコウガとアル兄の両方を知っているようだ。

 アル兄は、学校の合間でギルドの依頼をしていた事があり、その中で緊急依頼が発生し、迅速に解決した事があったらしく、それで覚えていたようだ。

 そして、コウガの方は騎士団に入る直前まで、ここデオールの冒険者ギルドを拠点にしていたとの事だ。


 トノバさんが受付嬢に飲み物を頼んで、持ってきて貰うまでに、二人の事を教えて貰った。


「それで何しにきたんだ?」


「リオンの冒険者ランクを上げに来ました」


 ユウジン副団長が答え、俺はウォーレンさんに書いてもらった手紙をトノバさんに渡した。


「知っとったけどな」


 トノバさんは、かなりノリがいい感じの人だ。


 トノバさんはウォーレンさんからの手紙を読んでから、俺にギルドカードを出すように言われたので、ギルドカードも渡した。

 受付嬢を呼んで、俺のランクをEランクにするよう頼んでいた。

 話が終わっている頃には、更新されているであろうとの事だ。


「トノバさんにお聞きしたいことがあるのですが、いいですか?」


「おお、何でも聞いていいぞ」


 よし、家であまり教えて貰えなかった制限された情報を聞き出そう。


「テルーゼの町のギルドでEランクに上げられない理由って何ですか?何か情報を制限してるとかって聞きました」


「何十年も前の話だが、どこのギルドでも歳が関係なくEランクに上げる事は出来たんだ。だが、Eランクに上がったばかりのガキが調子に乗って、黙って中級ダンジョンに挑んで帰ってこないという事が何度も起きたらしい。注意喚起してもダメで、結局学校で勉強してからじゃないと、Eランクには上げないような制度になった訳だ。だが、ランクアップに関して情報を制限している事はないけどな」


 さっき、ユウジン副団長から教えて貰った毒ガスとかの話を学校で聞いてから、ランクを上げてもいいように変わった。

 それからは、学校へ行く前にEランクに上がれそうな人物がいれば、その支部のギルマスが判断してランクアップを王都のギルドですぐできるように手配するらしい。

 だが、制度が変わってからは、学校へ行く前で条件を満たす者が1度も現れていないので、その時にEランクへの条件が厳しくなったのかもしれないとの事だ。その辺りは知らないらしい。王都のギルマスが知らなかったら、知ってる人はほとんどいないかもしれないな。


「情報規制っていうと、あれだな。ユウジン、リオンは知ってるんだよな?」


「4大魔境の事だけ話してます。リオンは特A校舎が決まってますからね。あとは先程グラスタール公爵と話した事がどれくらいかだと思いますが、かなり早く話が終わってたので、何も聞いてないかもしれないですね」


 ユウジン副団長の言う通り、ほとんど聞いてないということを伝えると、


「じゃあ、魔道具の話もしないといけないな。他にはダンジョンの事もか」


 そう言って、ざっくりと話の内容を教えて貰った。


 内容としては、ものすごくお金が関係していた。


 まず、魔道具の開発に、とんでもなくお金が必要との事だ。魔道具は生活やダンジョン攻略に欠かせない物らしい。

 他にも学校は全員分の学費は国が払っていて、その分を回収する為に、ウォーレンさんに聞いたダンジョン内資源回収禁止リストが作られたそうだ。


 俺が知っているお金の流れだと、領主が領民からお金やそれに変わる物を納める事で、領地経営していくと思うのだが、この世界では領地毎だとあまりに不平等になるとの事だ。

 それはダンジョンのある場所が均等ではないからだ。

 ダンジョンが多い所に王都のような大きな街、都市が出来たそうだ。ダンジョンが多くあったから、街が大きくなったのかもしれない。


 そして、スペンダー領のような4大魔境という危険な地域に住む人は少なく、何とかする為の措置でダンジョン内の禁止リストが作られたとされている。


 そのお金は国で全部管理され、領地毎に必要な配分がされる。その中には学費も含まれるし、魔道具の開発や研究も含まれる。この辺りは、国が力を入れているところへ配分が多くなるのだが、そのときどきで変わるそうだ。一時は、魔法部隊の強化の為に、マジックポーション系を大量購入して、魔法師団に使ってた事もあったそうだ。

 魔法のレベル自体は認識されていないが、やはり何回も魔法を使って新しい魔法を覚えるという事は認知されているようだ。

 あとは各々の領地で、領民から少し税を取って領地経営をするそうだ。国からのお金で全て賄える訳ではないとの事。


 他には、ダンジョン内資源回収禁止リストの内容自体は、そのダンジョンが近くにあれば子供の頃に教えられるそうだ。仮に禁止リストの物を持ち出したとしても、加工しないと使い道がない。それこそ組織的に持ち出したとしても、加工技術は国が管理している為、何かあったら騎士団が動く事になるだろうとの事だ。今までそんな事は一度も起こってはいないがと教えられた。


 ざっくりとは教えて貰った。あとは学校で詳しく聞くようにとの事だ。

 特Aクラスに入るなら、嫌でも聞くことになるからな。

 そして、中級ダンジョンに行くか聞かれたが、学校で詳しい話を聞いてからでいいと返事をした。まずは初級ダンジョンのスペステを調べるところからやりたいからな。


 ある程度、話が終わった頃に、受付嬢がステータスプレートを持ってきてくれた。


「ステータスプレートってランクが変わっても変化ないのですね」


「ステータスプレートが変わるのはBランク以上からだな。透明な感じから色が薄く付くんだ。Bランクは青、Aランクは赤、Sランクは黒のステータスプレートになる」


 ユウジン副団長が教えてくれた。

 Bランクからか。それならまずはBランクを目指そうかな。時間があればだけど。


「さあ、もう昼飯時だぞ。解散だ、解散」


 トノバさんはどうやらお腹が空いたみたいだな。俺も午前中に王都に着いてから、ここまで時間的にはそこまでかかってないけど、色々あり、かなり疲れたよ。


「そうですね。それではトノバさん、失礼します。リオン、飯食いに行くか」


「分かりました。トノバさん、色々と教えて頂きありがとうございました。失礼します」


 トノバさんは豪快に笑っていた。

 受付嬢が扉を開けてくれて、俺達は部屋を出るのだった。

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