幕間 兄弟でダンジョン探索(リオンは何でも知っている)

アルス視点


 昼食を食べ終わり、2年ぶりに戸惑いの森ダンジョンへ向かう。


 昨日、テルーゼの町に戻ってからは、リオンが作った戸惑いの森ダンジョン攻略ノートと新しいスキル一覧表を見せて貰った。


 強くなる為のマニュアルが無かったと聞いた時は残念な気持ちになったのだが、それ以上にとんでもないダンジョンの攻略ノートというものが出てきた。


 2年前は2階層までの探索しかしなかったので、ゴブリンキングには会った事はない。

 道中のイモムーとゴブリンはかなりの数を倒した。

 だけど、その魔物の出現場所や宝箱の位置が決まっているとは知らなかった。


 それから、ボスを倒した時の宝箱についてだ。

 学校では初級ダンジョンをクリアするのは、基本的に1回だけだ。

 これは学校の試験の時に初級ダンジョンをクリアする必要があるので、当日に1回クリアするのみ。

 多くても2回だろう。それぐらい初級ダンジョンのボスは弱いのだ。人数も3人か4人いるからね。


 それに初級ダンジョンでは、レベルが上がるまでにすごく大変だと聞いた。

 初級ダンジョンだと何日もかけて、レベル1からレベル2にするけど、中級ダンジョンだと4人で行ってもその日にはレベル2に出来るぐらい差があるそうだ。


 この話をリオンに話したら、最初驚いていたけど、魔物のランクによって経験値にかなり差があるんじゃないかと言っていた。

 少し話を聞いただけで、予測が立てられるのがリオンの凄いところだ。マニュアルやダンジョン攻略に関しても予想して結果その通りだったとかありそうだ。


 色々話していたら、あっという間に戸惑いの森ダンジョンの入口に到着した。


「そうだ。アル兄、これを受け取って下さい」


 リオンは指輪と袋を渡してきた。

 この袋……ひょっとして。


「神秘の指輪と魔法袋(中)です」


「やっぱり魔法袋(中)なんだね」


 そっか。魔法袋(小)の時も驚いたけど、今度は魔法袋(中)まで作っちゃたんだね。


「知り合いの商人さんに、素材を王都で買ってきて貰って作りましたので、学校でも使って下さい。神秘の指輪は攻略ノートにも書いたのですが、装備すれば魔力回復系に5%多く回復ボーナスが付きます。指輪は学校へ行く日まで貸すので、その間にスキルと魔法のレベル上げを頑張りましょう」


 神秘の指輪は確かにこれからスキルと魔法のレベル上げする為に来たから、すごくありがたい。


 リオンにお礼を言ってから、どのスキル上げをするか目標を決めた。

 まずは魔法を思念発動出来るようにする為に火魔法レベル10を目指す事にした。火魔法にしたのは覚えている魔法の中で一番レベルが上がっているからだ。

 それと一緒に杖術を覚える為にリオンから怒りの杖を借りた。レベル9のアブソープを覚える為だ。

 それから、魔法を発動するタイミングで身体強化も同時にレベル上げしていく事になった。


 早速ダンジョンに入る為にパーティーを組む。

 パーティーを組む為には、お互いのステータスプレートを接触させリーダーになる人が魔力を送るとパーティーが組める。この時に自分のステータスプレートに魔力は流れているがステータスは表示されず、自分と相手のステータスプレートが1秒程光るので、光が収まるまで流し続ける。

 最大5人までなので、同時にパーティーを組む事も出来る。パーティーを解散、または抜ける場合は、ステータスプレートに魔力を2回連続で流すとできる。リーダーがやるとパーティーが解散で、メンバーがやるとその人が抜ける事になる。


 今回は僕がパーティーリーダーとして、攻略していく形だ。


 まず、ダンジョンに入ったら、スペシャルステージの解放条件の全てのマップの探索から行う。これが一番時間がかかるとリオンが言っていたからね。

 杖を装備し、火魔法と身体強化を使いながら、道中を探索していく。


「そういえば、魔法はどういう順番で覚えた方がいいかな?」


 僕の質問にリオンは少し考えてから答えてくれた。


「闇魔法の中級以上が全然わかっていないですが、光魔法と闇魔法は優先した方がいいかもしれないですね。光はバフがあり、攻撃魔法も威力、範囲共に優れています。後は風魔法のレベル8で覚えるエアリアルドライブも使い勝手がいいです。全力で走る時に、風が顔に当たって周りが見えにくくなる事があると思うんですけど、エアリアルドライブを使うと、身体全体を風が覆う感じで守ってくれるんですよね。なので、高速で動いても違和感なく周りが見えて動きやすいです」


 闇魔法はもしかしたら強いかもしれないのか。

 リオンにも闇魔法のオーブがないか聞かれたけど、あれはパーティーの持ち物だから、持って帰ってこなかったんだよね。


 今火属性上げてるけど、もしかして他の魔法を上げた方がいいのかな。


「リオン的には火魔法は優先度高くない感じかな?」


「火魔法は火力は高そうですが、ダンジョン以外で使うとなると、使い方が限られそうですよね。特に迷いの森に行くことになったら、森に火がつかないように気を付けながら使わないといけないですからね」


 言われて納得した。

 2年後学校から戻ってきたら、僕も迷いの森の魔物討伐の対応をする事になるだろう。

 その時に火魔法を勢いよく使っていたら、森が燃えてしまう。

 魔物の死体を燃やすにはいいかもしれないが、それはファイアボールで十分な気がする。


「あと水魔法と土魔法ではこんな使い方も出来ますよ」


 そういうと、リオンは氷の足場を5つ程作り、見事に階段を作ってしまった。

 1つ1つ高さに差があり、5つ目の氷の足場は地面から2メートル以上はありそうだ。


「こんな感じで高いところから見下ろせます。もっと高くすれば、広いダンジョンだと遠くまで見渡せるんじゃないですか?」


 昨日少し話をした中級ダンジョンの1つ、優雅な草原ダンジョンで使えるんじゃないかという事だろう。

 それにしても相変わらず、すごい発想だ。

 魔法をこんな感じで使うなんて、学校の先生でも教えてくれないよ。


「リオンは相変わらず、すごい事をするね。そうなると火魔法じゃなくて、違う魔法をレベル上げた方がいい気がしてきたよ」


 今ならまだ始めたばかりだから、変えてもいいかもしれないな。

 そう思っていたが、


「最初に1つは思念発動出来るようになった方がいいので、そのまま行きましょう。それにさっきの氷魔法のはレベル6のアイスランスをアレンジしてるだけなので、覚えるのは2日程頑張れば覚えれますよ。他の魔法もレベル8までならそこまでかからないです。」


 本当にそうなのだろうか。リオンの魔力は1000を超えているから、そう言っているように思えるんだけど。

 そう思っていたら、マジックバッグからノートを取り出して見せてくれた。


「これは一応検証はしたのですが、称号の効果で正しい数値が分からなかったのと、大まかにカウントしてたので、大体このぐらいという目安だと思って下さい」


 そう言って見せてくれたのは、魔法のレベルが上がるまでの回数が書かれているページだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 魔法熟練度(大まかな回数)


 現在覚えている魔法(最新)の使用回数

 レベル1→2  100回

 レベル2→3  200回

 レベル3→4  300回

 レベル4→5  450回

 レベル5→6  600回

 レベル6→7  750回

 レベル7→8  1000回

 レベル8→9  1500回

 レベル9→10  3000回


 ※魔法の達人とカリスマは、5%分回数が減ると思われる

 1つだけの場合

  レベル1→2  100回 → 95回

 2つの場合

  レベル1→2  100回 → 90回

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 うわー。またすごいの出てきたよ。

 この回数使えばレベル上がるって事だよね?

 レベル9から10までに3000回って、リオンはそんなに魔法使ってるんだ。しかも3つも魔法レベル10があったんだけど。


「リオンは相変わらず、すごいね。よくここまで数えられたね」


 相変わらず、弟がすごすぎる。

 でも、これは予定が立てやすくて助かるな。次の学校へ行くまでには2週間以上あるから、それまでに覚えたい魔法とスキルを計算できるぞ。

 いや、スキルもあるのかな?


「これってスキルのレベル上げ回数のもあるのかな?」


 確か昨日、魔法上げる方が難しいって言ってたし、スキルも杖と盾以外は大体同じぐらいって言ってたからね。エクストラスキルは全く検証できなかったと聞いたがどうだろうか。


「それなら前のページにありますよ」


 そう言って、1ページ前を見せて貰うとスキルレベル上げの回数も載っていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 スキル熟練度(大まかな回数)


 現在覚えているスキル(最新)の使用回数

 レベル1→2  100回

 レベル3→4  200回

 レベル5→6  350回

 レベル7→8  500回

 レベル9→10  750回


 ※スキルの達人とカリスマは、5%分回数が減ると思われる

 1つだけの場合

  レベル1→2  100回 → 95回

 2つの場合

  レベル1→2  100回 → 90回

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 スキルの方がかなり回数が少ないんだな。

 それにしても、やはりスキルの方も検証していたんだな。

 お父様達はこれ知ってるのかな。

 一応、誰にも言ってないけど、パーティーメンバーは僕とよく行動を共にしてるから、何となく知られちゃってると思うんだよね。


「これ、実は正しくないんですよね。レベル1から2まではスキル使わなくてもそのスキルの練習してれば、上げられるので。回数が関係してるのは、その次にアーツを覚えるレベルのところで必要になる感じです」


 少しややこしいねと話したら、新しいアーツを覚える前に、必要回数使ってれば大丈夫との事だ。そこまで考える必要はないみたいだね。


 リオンにお礼を言ってから、探索の続きを行った。


 全ての探索が終わり、ボス部屋に着いて、初めてゴブリンキングを見たが、他の初級ダンジョンとは強さが違うのだ。そして体格もかなり大きい。

 リオンの攻略ノートに載っていた強さと比べると装備分ぐらいは他の初級ダンジョンのボスより強いと思う。


 それから、フレアバーストを遠くから、数発食らわせてあっという間に倒した。

 僕も学校の休みの日は一人で初級ダンジョンをクリアしてるからね。このくらいのボスは簡単に倒せるよ。


 あとの解放条件は簡単なものだけとなったのだが、リオンが次からの周回は道中の魔石は回収しなくていいというのだ。

 何でも、魔石はボスを倒しても残っているので、その日の最後に回収すればいいそうだ。

 魔石が急ぎで必要じゃなければ、次の日でもいいとの事。


 何でそんな事も知っているんだと思ったが、相変わらずすごいとしか言いようがなかった。


 そんなこんなで、午後からダンジョンに来たにも関わらず、その日の内にスペシャルステージに挑戦する為のトマドイの指輪を手に入れたのだった。

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