リカルドの手紙
戸惑いの森ダンジョンをアル兄と一緒に攻略した。
スペシャルステージの解放条件を達成し、攻略と同時に検証も行った。
残念だったのは、アーティファクトと魔力結晶はそのダンジョンの最初のクリア者しか貰えなかった事だ。
なので、アル兄の初回クリア報酬は称号だけだった。メッセージもアーティファクトと魔力結晶の右横に、クリア済みとなっていたとアル兄に聞いた。
何とも残念な結果だが、確かにクリアする人が多かったらそれだけアーティファクトが増える事になるからな。
スペステクリア後も、一緒にダンジョンへ行ったが俺は付いて行くだけにした。
主にダンジョンではアル兄の特訓として、スキルレベル上げメインで周回していった。
周回途中では、色々と話をした。俺の検証した内容やアル兄が学校で聞いた事など色々だ。
アル兄の特訓もとい、ダンジョン周回は、俺達が学校へ行く前の日、12月24日まで続いたのだ。
そして、現在12月25日、俺達が王都の学校へ旅立つ日が来た。
俺達はテルーゼの町の東門の前、2年前にアル兄を見送った場所にいた。
「アルス、2年後は領主の仕事も手伝って貰うから、それまで学校で励むんだぞ。リオンは……無茶はするんじゃないぞ」
「お父様、残りの2年間も良い学校生活が送れるように頑張ります。その後の領主の仕事も精一杯努力します」
この間、コウガとアル兄が2人で話し合っていたから、恐らくスペンダー領を継承して領主になるって話し合いをしていたのだろう。
アル兄はコウガと一言話したら、次はマリーの方へ向かった。
「お父様、無茶はしないので大丈夫です。精一杯頑張ってきます」
「頑張っているのは昔から知っているが、無茶というかやり過ぎるような気がするんだが……まあ、今更か。それでもスペシャルステージのような事があるかもしれないから、十分気を付けるんだぞ」
「わかりました。気を付けます」
「リオンちゃん、体には気を付けるのよ」
どうやらアル兄はマリーとの話し合いは終わってミランダとリカルドの方へ向かったようだ。まあ、すぐ近くなんだけどね。
「はい。お母様も体には気をつけて下さい」
「それから無茶な事は絶対しない事!分かっていると思うけど、やり過ぎもダメよ」
「うっ、分かりました。気を付けます」
マリーにまで釘を刺されてしまった。
それから、マリーに抱きしめられてからミランダとリカルドのところへと行く。替わりにアル兄が戻ってきてコウガとマリーと話始めた。
「リオン君、頑張って来てね。でも、やり過ぎて人に迷惑を掛けたらダメだよ。大丈夫だとは思うけどね」
「ミラさん、頑張ってくるね。迷惑は掛けないように気を付けるよ。家の事は任せたよ」
ここ1年間、俺がほとんどダンジョンに行ってたから、生活はそこまで変わらないと思うけどね。
ミランダと俺が気安い感じで話すのをリカルドに知られているので、この状況でも砕けた感じで話してくれた。
「リオン様、あなたがいなくなってしまうのは非常に苦しい状態になりますが、学校でもどうかお体には気を付けて、楽しんで来て下さい」
最近、俺が領主の書類仕事を手伝ってたから、そこがなくなってしまうのが、ちょっと苦しくなるって感じだな。コウガも書類仕事苦手って聞いたしな。
その手伝いの時ぐらいから、とうとう俺も坊ちゃま呼びは卒業だ。
「リカルドさんも体には気を付けて下さいね。書類仕事はお父様にどんどん回して慣れて貰いましょう」
書類仕事でもして、寂しさを紛れさせて欲しいかな。
まあ、リカルドにかなりの量の書類仕事を回されてるって話だったからな。少しは改善して欲しいところだ。その辺りは俺が口出しすべきではないのかもしれないが。
「それから」
リカルドはすぐ近くまで来て、何やら手紙をこっそりと渡してきた。
「こちらは王都に着く前までに読んで頂きたいです。旦那様にも伝えてない事なので出来れば内密に」
コウガにも内緒って何だろうか。
ここで予想外の手紙を貰ったが、王都までは5日程かかるので読む時間はいくらでもあるだろう。
「わかりました。1人になった時に読みたいと思います」
それから、コウガとマリーのところに全員集まって、最後に俺とアル兄に激励の言葉と心配する言葉、「いってらっしゃい」の言葉を贈って貰った。
その言葉をしっかりと受け止めて、俺達は「いってきます」と力強く言い、馬車へと乗り込んだのだった。
王都までの道程で、1日目に寝泊りする村にて、寝る前にリカルドから貰った手紙を読み始めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
リオン様へ
私が旦那様の執事になったのは、コウガ様がスペンダー領を治めるのが決まってすぐの事でした。
それまで私はオルトカディア王国の国王陛下に近しいグラスタール公爵の下で執事をしておりました。
それがなぜスペンダー領に来る事になったかというと、当時この領地を管理していた領主様がイレギュラーなAランクの魔物に町を襲われた際に亡くなったからです。
Aランクの魔物は迷いの森を対応していた冒険者の方々が討伐されたのですが、その事があったのと迷いの森の事がある為、新しい領主がなかなか見つかりませんでした。
そんな中、当時オルトカディア王国の騎士団副団長のコウガ様が名乗りを上げて、領主になったのです。
ですが、コウガ様はその頃騎士団の副団長だったのですが、貴族ではなかったので特別に叙爵されて領主となりました。
ですので、その補佐として私に白羽の矢が立ち、この領地に来る事になりました。
リオン様にこういうのは変な感じがしますが、これでも私はグラスタール公爵様から信頼されており、とても優秀で頼られていたと思います。
なので、書類仕事は私がある程度教える方向だったのですが、いつの間にか私がほとんどやっている状況です。この話はまた後日という事で。
ここからが本題なのですが、私には旦那様の補佐の他に重要な勤めがあります。
それはスペンダー領で起こった重要な案件をグラスタール公爵様に報告する事です。
実は5年前に王都の鑑定の儀で、聖女様が見つかったと公爵様から連絡がありました。
昔の言い伝えでは、聖女様が現れたと同時期に勇者様も現れたとあり、魔王の討伐を果たしたとされているのです。
ですので、5年前から教会のダリス様にお願いして勇者が現れたかどうか確認していました。それと同時にステータスが高い人物を教えて貰っていました。
私としては、昔から知っているアルス様とリオン様のどちらかが、もしかしたら勇者ではないかと睨んでおりました。
そして、アルス様の鑑定の儀までに、該当する人物は1人も現れませんでした。
アルス様の鑑定の儀の結果を見せて貰った時は、優秀ではあるけれど、勇者でもなければ特別ステータスが高い訳ではなかった為、報告などもしませんでした。
ですが、去年リオン様の鑑定の儀の結果を見せて頂いた時に、勇者ではなかったですが、あまりのステータスの高さに申し訳ないとは思いましたが、公爵様に報告を致しました。
それから、旦那様も国王様に色々報告していたので、公爵様からリオン様が王都の学校へ行った際に、詳しい話を聞く為に使いを出すというのをおっしゃっておりました。
しかし、2ケ月程前に、聖女様に神託があったそうで、『勇者はいないが、その変わりにリオン・スペンダーを頼りなさい』という事を神様が告げたらしく、公爵様自らがリオン様に会いに行くとおっしゃっておりました。
聖女様は去年学校を卒業されたので、入れ違いで学校に入る事になりますが、恐らく聖女様ともお会いする機会があるかと思います。
リオン様なら、突然公爵様とお会いしても対応は出来るかと思いましたが、知っていた方が対応しやすいだろうと思い、連絡いたしました。詳しい話は公爵様にお伺いして下さい。
この事は旦那様も知らない事なので、どうかご容赦下さい。
リカルドより
※追伸 現在魔王の出現は確認されておりません。それから、4大魔境の話を学んでから、公爵様が来られると思いますので、それまでは楽しい学校生活を過ごして下さい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
リカルドからの手紙は壮大なものだった。
寝る前に読んだというのに全く眠くならない内容だ。
聖女に勇者、勇者はいないって話だったか。もしかして魔王がいるのに勇者なしって事か?
ワード的にはすごくテンションが上がる内容なのだが、現実なら魔王と戦いたくないぞ。
コウガとリカルドの事が結構書いてあるから、知れたのはうれしいんだけど、公爵様が直接会いに来るっていうのも緊張しちゃうよ。
それに最後の4大魔境って何だよ。魔境って聞くと魔界と繋がってるとかじゃないのか?魔界に魔王がいるのか?魔王は見つかってないみたいだけど、嫌な予感がするな。
「これは、学校へ行ってもダンジョン周回するしかないな」
魔王対策の為に、王都へ行ってもダンジョンを鬼周回する事が確定した瞬間だった。
第三章 ー 完 ー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これにて第3章ー完ーです。
この後、幕間にてアルスとリオンのダンジョン攻略などをやってから4章へ行きます。
よければ今後も読んで頂けるとありがたいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます