アルスの成長

 12月3日、15時頃にアル兄を乗せた馬車がテルーゼの町に到着した。

 俺達家族は、テルーゼの町の東門で馬車が来るのを、首を長くして待っていたところだ。


 次々と学生達が降りてきているが、アル兄は見当たらない。

 馬車から降りた子達は、迎えに来ている家族の元に向かい、再会を喜び合い、話を弾ませている。


「あっ、アルス様、見えましたよ。こちらに気付いたみたいですね。手を振っています」


 素早くアル兄を見つけたのはミランダだ。

 ようやく馬車から降りられたようだな。


 少し離れた場所から手を振っている青年がいる。


「アルスちゃん、ちょっと大きくなってない?」


「確かに、ちょっとというか結構身長が伸びているように見えるな」


 おお。2年間会わなかったら、アル兄の身長がぐーんと伸びているぞ。

 確か2年前の出発の時は、当時の俺より少しだけ高かったから、多分140センチぐらいだったはずだ。

 だけど、今は10センチ近くは伸びていると思う。

 ちなみにミランダが150センチぐらいなので、アル兄は少しだけミランダより高い感じだ。


「みんなー、ただいま帰りました」


 アル兄が元気よく挨拶をすると、


「アルスちゃん、おかえり~」


「アルス、おかえり」


「「アルス様、おかえりなさいませ」」


 家族みんなも元気よく挨拶を返していた。

 

「アル兄、おかえりなさい。背伸びましたね」


「リオン、ただいま。家を出てから、背もかなり伸びたよ」


 ほうほう、背もという事は他にも伸びたという事だな。


「なるほど、ステータスもかなり伸びたという事ですか?」


「そうだね。少しだけど自信が付くぐらいには強くなったかな」


 おおっ、家にいた頃はたまに自信なさげな時があったのに、今はその面影が全然見えない。

 この2年で身長やステータス以外にも、随分と成長したみたいだな。

 俺とアル兄が話しているとマリーが横から入ってきて、アル兄を抱きしめだした。


「リオンちゃんばっかりずるいわ。アルスちゃん、元気そうね。学校はどうだった?」


「お母様もお元気そうで何よりです。学校では、少しやり過ぎてしまったところがありますが、仲間にも恵まれてとても成長できたと思います」


 おっと、アル兄もやり過ぎたところがあるようだ。やはり似た者兄弟といったところか。


「そろそろ、家に向かおうか。アルスも馬車にずっと乗っていて疲れただろうし、家の方が落ち着くだろう」


「そうですね。久しぶりの我が家で、ゆっくりしたいです」


 コウガの一声にアル兄が答えると、マリーがアル兄の腕を引っ張りながら、家に向かって歩き出した。

 俺もその後を付いて行き、家までの道程はマリーがアル兄の学校での様子を色々と聞いていた。

 この2年間、アル兄がいない間で、マリーの不安そうな感じは全然しなかったが、この様子ではやはり心配だったのだろうな。


 家に着き、リビングに家族全員が久々に揃った。もちろん、リカルドとミランダも一緒だ。

 ミランダが紅茶の用意をしてくれていたのだが、マリーも張り切って一緒に準備していた。こういう所は俺の知ってる貴族っぽくないんだよな。普通の貴族は自分でしないと思うが、俺は断然こっちの方が好きだからいいんだけどね。


 紅茶が全員に用意されたてから、アル兄が俺に話始めた。


「リオン、マニュアルありがとう。すごく分かりやすかったよ。でも、流石に2年間だけではエクストラスキルまではレベル上げ切れなかったけどね」


 俺はアル兄の言葉に驚いた。

 エクストラスキルのレベルが上げ切れなかったという事は覚えたのか?うちの家族は全員覚えれなかったのだ。それは今日まで同じ事だった。


「アルスはエクストラスキルを覚えれたのか?」


 コウガも同じ事を思ったようだな。


「最初覚えるのは大変でしたが、学校が始まってから1ケ月ぐらい経った時に、中級ダンジョンのボスを倒した宝箱から火魔法を覚えるアイテムが出て、ファイアボールを覚えたのですが、その感覚を切っ掛けにエクストラスキルを覚える事が出来ました」


 あれあれ?何かおかしくないか?

 学校始まって1ケ月ぐらいで中級ダンジョンクリアしたの?

 それもそうだが、魔法覚えた事でエクストラスキル覚える切っ掛けになったの?

 アル兄って、もしかして想像以上に強くなってるのか?


「リオン、僕の事を鑑定で見て欲しいんだ。この2年間で出来るだけ頑張ってきたつもりなんだけど」


 いろいろ考えていたら、アル兄が鑑定で2年間の努力の成果を見て欲しいみたいなので、頷いてから<鑑定>してみた。


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名前:アルス・スペンダー

年齢:12歳

種族:人族

性別:男

状態:普通

職業:剣士

ステータス

 レベル:28

 体 力:364/364

 魔 力:283/706

 攻撃力:182

 耐久力:139

 敏捷力:188

 精神力:156

 抵抗力:147

スキル

 剣術LV10、短剣術LV4、細剣術LV4、体術LV10、槍術LV4

魔法

 魔力操作LV10、生活魔法LV8、火魔法LV7、水魔法LV4、風魔法LV4、土魔法LV4、光魔法LV4、闇魔法LV4

エクストラスキル

 鑑定LV6、身体強化LV8、魔力回復LV6

特殊スキル

 魔力超回復、超剣術、超体術、スキルの達人、魔法の達人

称号

 【伯爵家長男】【魔力ハングリー】【剣術の極み】【体術の極み】【スキルマスター】【魔法マスター】

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 はぁぁぁっ!?

 レベルたっか!?

 正直、俺の方がレベルは余裕で上だと思ってたのに……

 そして、思っていた以上に強くなってるんだが。しかもしっかりとエクストラスキル3つとも覚えているし、俺の持ってないスキルと闇魔法もあるし……

 というか、魔法、全属性持ちじゃないか……そんなにオーブ出たのか。でも、回復のオーブは出てないみたいだな。


 まさかここまで強くなっているとは……

 俺がアル兄のステータスを見て、驚いていると、


「やっぱり鑑定も思念発動が出来るんだね」


 さらに、アル兄から聞きなれない言葉が発せられたのだった。


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