白銀の剣の製作依頼

 周回が終わったので、テルーゼの町までダッシュで帰って、武器屋に直行した。

 挨拶をしながら、お店に入り鉄の剣を取り出す。

 ホストンさんに折れた鉄の剣を見せながら、修理できるか聞いてみた。


「何したら鉄の剣が真っ二つになるんだ。修理は出来るが先端はどうした?無ければ鉄のインゴットが2つあれば直せるぞ」


「先端はなくしたので、鉄のインゴットで修理をお願いします」


 剣の先端はデビルゴブリンのいる部屋に置いてきてる。取りに行く気力もなかったから仕方ない。


 俺は鉄の剣がどうして折れたか説明しなかったが、ホストンさんがぼそっと、「とんでもねぇ武器とやりあったみたいだな」と言ったのを聞き逃さなかった。

 折れた剣を見ただけで分かったのだろうか?普通ならメンテナンス不足とか思ってもおかしくないのに。流石職人さんだな。というか、強敵と戦ったのバレたかな!?なんとなくだが、気を使って聞かないでいてくれそうだけども……


 ホストンさんは店の奥に行ってしまったので、俺は鉄の鎌がある方に向かった。

 置いてある鎌は全部で2本、奥に在庫があるか店員さんに聞いてみると店に出ているのしか鎌はないとの事だ。すごく少ない。人気がないって言ってたしな。とりあえず鑑定してみる。


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武器名称:鉄の鎌

状態:良品質

価値:Eランク

特殊効果:なし

詳細:鉄で作られた鎌。攻撃力+15

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 どちらも同じ結果だったので、持ちやすい方を選んだ。

 この鉄の鎌は、漫画などでよく見る死神の鎌とは違い、農具で使う鎌に似ている。いや、農具の鎌だろうな。使い方は違うのかもしれないけど。

 草刈りに凄く役立ちそうな形状だ。ただ、戦闘で使うには癖があるな。その辺りもゴブリンキングを相手にしながら、覚えていこう。


「リオン、鉄の剣を直してやったぞ」


「えっ、早くないですか?」


 店の奥から戻ってきたホストンさんはいきなり鉄の剣を直し終えていた。10分も経っていないぞ。どういうことだ?


「スキルを使うとそんなもんだぞ。スキル使っても時間かかるものもあるが、慣れたものは早く終わる。今回は柄の部分は何もいじっていないしな」


「な、なるほど」


 スキル使えばすぐなのか。あれ?という事は鉄のインゴットから作るのは3日もかからないんじゃないのか?


「ホストンさん、鉄のインゴットから武器を作るのって3日もかからないんじゃないですか?」


「一応言っておくが、客はお前だけじゃないからな。それに魔力が無限でもないから、1日に出来る事なんて限られてるんだよ。スキルだけで鍛治の全てが出来る訳でもないから、それなりに時間はかかるけどな」


 あー、そうですよね。納得だ。

 ゲームだったら、武器の修理に出せば待ち時間なしとかもあるが、リアルだと優先順位が発生しているんだ。それは依頼人の順番だったり、魔力の回復待ちだったりと色々な理由があるんだろうな。

 それなら、すぐに武器が必要だったりした場合は、マジックポーションを一緒に渡せばすぐに修理や製作してくれるかもしれないな。スキル以外の作業がどれくらいあるか分からないが、時短にはなりそうだ。一応覚えておこう。


「それより、鎌なんて持ってどうした?まさか買うのか?」


「鎌も使ってみようと思って。この鉄の鎌と鉄の剣の修理代でいくらになりますか?」


「合わせて3万Lでいいぞ。前話したが鎌は使っている人が極わずかだから、上達するには手探りでやるしかないと思った方がいいからな」


「わかりました。ありがとうございます」


 俺は3万L、銀貨30枚をホストンさんに渡した。細かかったから何か言われるかと思ったが、特に何もなかった。ギルドの報酬で貰えるのが銀貨がほとんどだから、銀貨が多いんだよな。

 あっ、白銀の剣について聞くの忘れてた。危うくこのまま帰るところだったよ。


「あそこの白銀の剣っていくらですか?それと作って貰う場合は、銀のインゴット以外に何がいりますか?」


「白銀の剣は20万Lだ。作るなら銀のインゴット以外に魔玉という素材が必要で店にあるのを使えばいいぞ。リオンは銀のインゴットを持ってるから魔玉と加工費を合わせた7万Lでいいが、お金はあるのか?」


 魔玉というのが必要なのか。店にあるみたいだから良かった。

 ただ、お金が足りないな。俺の主な稼ぎはギルドのGランク魔石の納品だけなので、他に宝箱から出たものを売れば余裕だと思う。

 だが、何を売るかが問題だな。ここで売れそうなのはインゴットかな。一応聞いてみるか。


「手持ちのお金が足りないですね。インゴットってここで買い取って貰えますか?ダメなら他のものを売るしかないですが」


「インゴットなら銅が1000L、鉄が2000L、銀が5000Lで買い取っている。あまり高く買い取れないし、大量には無理だぞ」


 高く買い取れないというが、結構いい値段だと思うけどな。とりあえず、手持ちの銀貨を数えてみよう。

 うん、50枚はある。なら鉄のインゴットを10個売ればいいな。


「鉄のインゴットを10個買い取って欲しいですが、大丈夫ですか?」


「10個なら大丈夫だ」


 ホストンさんに了解を貰ったので、鉄のインゴットを10個と銀貨50枚を机の上に出した。

 白銀の剣は3日後の夕方には出来ているとの事なので、それ以降に来るように言われた。

 一通り用事が済んだので、改めてホストンさんにお礼を言ってから店を出た。



「いやー、高い買い物をしてしまった。おかげで手持ちのお金がすごく少なくなったな」


 手持ち2000Lぐらいしか残っていない。まあ、また稼げばいいし、手持ちのアイテムを売ればお金はどうにかなるだろう。

 どこに売るかは考える必要はありそうだけどね。


 この後はギルドへ行って、採取の報告と魔石の納品をして少しでも手持ちのお金を増やしておこうかな。

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