採取依頼を受ける

 スペステへ挑戦した次の日、俺はずっと家にいた。

 ダンジョン攻略しようかと思ったが、気持ちがまだ追いついていないので、とりあえずスキル上げをして過ごしていた。

 魔力がなくなった後は、久しぶりに木剣で素振りをして気持ちを整えていく。

 前世でも、そんな風に過ごした事ないのだが、この世界では習慣になっているからか、木剣を無心で振ると精神統一された感じになる。

 それを見ていた家族は少し心配していたが、おそらく昨日負けたことを気にしてダンジョンに行ってないと思われたのだろう。明日はダンジョンに行くと言っておいた。

 まさかダンジョンに行かなかった事で心配されるとは思ってもみなかったな。普通は逆だと思うけど、俺はほぼ毎日ダンジョンに通ってたから仕方ない。


 ある程度素振りをしたら、早めにお風呂に入った。

 ゆっくりと入り、身体と心を休め、リラックスした事により大分気持ちが落ち着いてきた。

 お風呂から出るとリビングでミランダが紅茶を入れてくれるとの事なので、席に着いた。

 マリーは先に座っていて、ミランダも紅茶をいれてからマリーの隣に座った。コウガとリカルドは現在お出かけ中だ。

 紅茶を一口飲むと、良い香りが広がり身体が芯から温かくなった。お風呂との相乗効果で身体が和らいでいく。

 俺がリラックスしているとマリーが話しかけてきた。


「リオンちゃんに質問があります」


 改まって何だろうか?


「質問とは何でしょうか?」


 マリーはいつもと違い真剣な表情だ。まさか昨日の事についてか。


「実はね、エクストラスキルの鑑定と身体強化が覚えられないの」


「えっ」


 全然違った。


 鑑定と身体強化が、覚えられないとは、どういう事だ?

 俺は結構簡単に覚えられたのだが、何か条件があるのか?さっぱり分からないな。

 前にスキルのメモノートを見せた事があったが、そこにやり方を載せていたので、それを実践したと思うのだが……今やって貰うか。


「あの、どのように鑑定してるか今試して貰えますか?」


「やってみるわね。まず魔力を目に集中させて、それからこの机を鑑定するから、まず机をしっかりと見ながら机の情報を詳しく知りたい、詳細を見たいと思いながら〈鑑定〉……やっぱりダメだわ」


 うーん。何で出来ないんだ?

 俺も似たような感じで鑑定出来たんだけどな。魔力操作は十分なレベルだし。

 覚える為の条件があるとしても俺は小さい時に覚えてるからマリーが条件を満たしてないなんて思えないのだが……

 エクストラスキルって本当はもっと覚えるのが難しいものなのか?


「お父様も鑑定と身体強化が出来ないのでしょうか?お父様なら身体強化出来そうな気がするのですが」


 コウガなら身体強化を覚えているかもしれないと思い聞いてみたが、結果は…


「パパも鑑定と身体強化両方覚えれないって言ってたわ。ちなみにリカルドもミラもダメだったのよ」


 ミランダの方を見ると頷いていた。

 何という事だ。エクストラスキルが覚えられないって事は、アル兄に渡した強くなるマニュアルも上手く活かせないかもしれないじゃないか。

 全部が全部ダメって訳ではないが、強くなる為に身体強化は覚えようとしていると思うのだが、アル兄は覚えられたのだろうか!?

 こればっかりは次に会った時に聞くしかないな。


 一応、身体強化もどのようにやっているか確認したが、俺がやっているような感じだったので、覚えれない理由は分からないままになった。

 まさかエクストラスキルは覚えるのが、難しいとは思いもしなかった。

 なぜ俺が覚えられたのかは謎だが、今考えられる色んな方法を試して貰ったが、覚える事はできなかった。

 今後はどうしたらエクストラスキルが覚えられるか考える必要が出てきた。



 次の日、予定通りダンジョンに行くと家を出たが、ダンジョンの前にギルドで採取の依頼を受ける事にした。


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依頼内容:癒し草を5個納品せよ!

 依頼ランク:G

 期限:なし

 成功:500L

 失敗:違約金なし

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 ギルドランクを上げる為に、魔石の納品以外の依頼をこなす為だ。

 以前、エミリーさんに資料室でダンジョン付近にある癒し草の場所を確認したので、まずはダンジョンまで走って行く。

 ダンジョンまで来たら、さらに奥の方へ歩きながら癒し草があるか確認しながら奥へ向かって歩いていく。

 ダンジョンよりさらに奥へ行くのは始めてだが、どうやらダンジョンまでの道のように歩きやすくはないようだ。

 ダンジョンより先は木がそこそこ生えており、いくつかそれなりの空間が出来ている事から森というよりは林に分類する場所であると思う。


「大体この辺りに癒し草があるって話だったけど、とりあえず道に迷わないように目印を付けながら探してみるか」


 帰り道が分からなくて、迷子になったら大変だからね。

 途中の木にどの方向から来たかを鉄の短剣で目印を付けながら、辺りを見渡す。

 少し歩いた先に、ようやく目当ての癒し草がいくつか生えていた。


「おっ、いきなり5個以上あるぞ。群生地とまではいかないけど10個ぐらいはあるな」


 エミリーさんに聞いた話では、癒し草は割と色んな場所に生えている事が多く、群生地を見つけたら全部取ってもいいと言っていた。


 資料室で見た癒し草の場所は、よく見かける場所が書いてあり、取りつくしてもまた同じ場所か近くで生えてくる事が多いらしいので、その辺りを調べれば簡単に依頼はクリア出来るとエミリーさんは言っていた。簡単な為、報酬も安いようだ。


 それでも外は危険が付きまとう為、最低限の準備はした方がいいとも助言を貰っている。

 この辺りはたまにホーンラビットが出るらしい。Fランクの角があるウサギだな。


 武器がなくても、体術で何とかなるとは思うが、今は鉄の剣が折れている為、替わりに鉄の短剣を装備している。


「たまには、こういう日があってもいいなぁ」


 癒し草があれば、調合のレベル上げも出来るので、たまに採取するのはいいかなと思った。


 それから調合用にも癒し草を手に入れる為に2時間程、採取に時間を費やし、大量の癒し草を魔法袋にしまい、ダンジョン周回に向かうのだった。

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