家族への報告
俺はセーフティーゾーンに戻って来て納得した。
道理で通常のボス部屋と違った演出で出てきた訳だ。
無駄にカッコいい演出と思ったけど全然違った。
セーフティーゾーンに戻る度に完全復活して出てくるらしい。
これは仕方ないな。実力でちゃんと倒せという事だろう。
逆に普通のボス、ゴブリンキングとかはハメ技が出来るのではないだろうか?
これは今度検証する必要がありそうだな。
出来る場合は、どうしてもの場合のみハメ技を使う事にしよう。
「はぁ、とりあえず帰るか」
セーフティーゾーンの転移陣を発動したら、ダンジョンの建物内に戻ってきた。
1階層に戻ってから、さらにそこから戻るのかと思ったが一気に帰れるみたいだ。
スペステから出てしまったが、また行けるか確認しておこう。出てしまったら1ケ月は待たないとまた入れないとかだったら、次の挑戦まで待たないといけなくなりそうだしな。おそらく1ケ月のインターバルはクリアした時だけだと思うけど、念の為の確認は大事だ。
指輪は外していないので、ダンジョンへ向かう転移陣に乗り、魔力を流して転移する。
転移先はセーフティーゾーンだった。ボス部屋を覗いてみると、黒い霧からデビルゴブリンが現れた。
どうやら、2階層へ直接行けるようにセーブされているようだ。
今戦っても、勝ち目は薄いと思うので、予定通り戻ることにした。
転移陣からダンジョン内の建物に戻ると、俺と同じぐらいの年齢の男の子とその両親と思われる大人が2人、丁度ダンジョンへ向かう転移陣を発動するところだった。
ここに来るようになってから、初めて俺以外にダンジョンに挑んでる人を見たな。
冒険者がここに入るのも見たことがなかったので、ここは人気がないダンジョンなのかなと思っていた。
それかチュートリアルダンジョンみたいに、最初の頃しかこないようなダンジョンかだな。初級ダンジョンだし、ベテランはよほどの事がないと来ないとかね。
今の男の子はスキルを覚えて初めてダンジョンに来たんだろうな。
「おお!消えた!他の人が転移陣を発動すると、こんな感じなのか」
転移陣が光ったと思ったら、一瞬で3人は消えていった。
何とも不思議な光景だ。
他人の転移を見れるとは、いいものが見れたな。
俺は町に帰ろうと思ったが、よく見るとダークネスローブが汚れていた。
あれだけ、地面を転がれば汚れるよな。ウォッシュとドライを使い、汚れを落とし綺麗にする。
時刻を確認して見ると12時を少し過ぎたところだった。
朝から全マップ探索をして、スペステに挑戦しただけだが、それなりに時間は経っていたようだ。
マップ探索が意外と時間がかかったみたいだな。行き止まりとか結構あったからね。
俺はゆっくり歩きながら、携帯食料を食べつつ帰った。
今後の予定を考えないといけないが、頭が働かない。
今は本当にぼぉーっと町に向かって歩いているだけだ。
1時間近くかけて、テルーゼの町に着いた。今日はもう冒険者ギルドへも行かずに、家に帰ろう。
「そういえば、家族になんて話そう。スペステの事を知っているか聞きたいけど、負けた話をすると心配させるよなぁ」
それはしょうがないか。もしかしたら、ダンジョンへ行くの制限させられるかもしれないけど、仕方ないよな。
ありのままの出来事を話そう。
家に帰ったら、コウガとマリーは共に出かけていた。
リカルドに聞いたら、夕方には戻ると言われたので、それまで待つことにした。
リカルドとミランダには、俺が早く帰ってきたので、何かあったのか聞かれたが2人が帰ってから詳しい事を話すと言って、一先ず自室で休ませて貰った。
それから夕方までベッドで横になり、話す内容を色々と考えていた。
「それで、何があったか教えてくれるか?」
コウガに聞かれ、俺は先程考えていた事を、ゆっくり話し出す。
「昨日冒険者ギルドの資料室で戸惑いの森ダンジョンの地図を見たのですが、それを写して全ての地図を探索しました。それが条件の1つでスペシャルステージが解放されて、そこの2階層のボス、デビルゴブリンに負けました。それでスペシャルステージって知ってますか?」
「えっ」
「ちょっと待て。分からない事がいくつかあった。まずスペシャルステージとは何だ?」
あれ?俺がスペステ知ってるか聞いたよね?コウガはいつかの時みたいに混乱しているようだな。
俺はスペステの条件を達成した時に出てきた内容を写したノートを見せた。
「ここに書いてある条件を達成したので、スペシャルステージが解放されたのだと思います。そのまま攻略しようと思いすぐに突入しました。1階層はポイズンパピヨンが出てきて倒せたのですが、2階層のデビルゴブリンに鉄の剣が折られてしまい、そこから一方的に防戦になり、勝てそうになかったので逃げ帰ってきました」
「リオンちゃん、逃げ帰ってきたって言ったけど、怪我は負わなかったの?」
「怪我は少し負いましたが、ハイポーションで回復したので、今は何ともありません」
実際にハイポーションで一番酷かった頬の傷は治っているからな。
マリーはじーっと俺を見てくる。
疑われているみたいだな。
「お母様、大丈夫ですよ。危なくなる前に逃げてきたのですから」
「そう……無事でよかったわ」
納得してくれたみたいだな。そして、やはり心配させてしまったようだ。
「ダンジョンに隠し要素がある事は知らなかった。おそらく王国にも知っている人はいないだろう。リオン、この事を国王様に報告してもいいか?」
おっと、思ったより重要事項みたいだな。いきなり国王様に報告と言われても、俺は別にいいけど隠した方がいいとかあるのかな。いや、そこは俺が考えても仕方ないからコウガに全て任せよう。
「僕は国王様に報告しても大丈夫です」
「ありがとう、あとでこれを写させて貰ってもいいか?」
「はい。ノートはお貸ししますので、写し終わったら返して貰えれば大丈夫です」
ここからだな。下手な会話をすれば、ダンジョン攻略の日数が減らされるかも。それどころかスペステに行くの禁止にされるかもしれない。
「それにしても、リオンちゃんはとんでもない事を発見しちゃったわね。相変わらず、すごいわ」
「本当にな。今後、王国で事実確認をしてから、全世界へ知らせるのか。それとも秘匿するのか俺達には分からないが気にはなるな。おそらく秘匿するとは思うが」
これは、コウガも挑戦したいのだろうか?それなら一緒に行けば、デビルゴブリンには勝てるぞ。パーティーで参加出来るのかの検証とか色々検証したい事はある。リベンジは1ケ月後でも全然いいだろう。
「お父様、一緒にダンジョンへ行きますか?」
「時間があれば行きたいのだが、国王様の返答次第だな。リオンはまた挑戦しに行くのか?」
これはスペステにまた挑戦してもいいみたいな感じじゃないか?
「お父様やお母様が反対しないのであれば、強くなってからまた挑戦したいと思っています。あと、鉄より強い武器を手に入れる必要が出てきました」
「そうか、俺はそれで構わないぞ。十分気を付けるように」
「ママもそれでいいわよ。危なくなったら、今回みたいに逃げるようにね」
良かった。どうやら、スペステは挑戦してもいいみたいだ。
「そういえば、ポイズンパピヨンは分かるのだが、デビルゴブリンだったか?聞いた事ない魔物だな。その辺りを詳しく聞かせて貰えるか?」
「デビルゴブリンはクリムゾンダガー、ナイトメアメイル、白銀の円盾を装備していて、魔物とは思えない程、良い動きでした。ステータスはこれらの装備を含めれば僕のステータスに迫る感じです」
そういえば、デビルゴブリンの情報をノートにまとめてなかったな。あとでまとめておこう。
「クリムゾンダガーはかなり強い武器ね」
「防具も相当強いな。それにしても初級ダンジョンにこんな強い魔物がいるなんてな」
それは俺も思った。条件があるからとはいえ、これはやり過ぎな気がする。
これは中級ダンジョンや上級ダンジョンにも条件があって、これ以上の魔物がいるって事だよな。
それからデビルゴブリンの剣士みたいな剣と盾の使い方や、俺が追い詰められた剣撃からの蹴りなど、戦闘について詳しく話した。
ポイズンパピヨンについても毒鱗粉という毒を使うようなスキルがある事や風魔法を巧みに使っていた事を話した。
まさか俺が負けるとは、思ってもみなかったようで、相当驚いたらしい。剣が折れなければ、勝てたかもとは言われたが、結果が全てだからいい訳はしない。
俺は会話の最中、家族みんなに心配させたくない思いで、上手く話せているのか気が気でなかった。
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